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探求者と失われた禁書

本の行方

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「アリーナ・フェニックスが王宮に出入りしています。ウィリアムの気に入りのひとりとしてですが、目的が他にあるのは明白でしょう」

わたしはそれをきいて、扇を開いて顔を扇いだ。
いつのまにあのふたりそんなに仲良くなっていたの?
というのと、このユリウスのアリーナへの不信感てなんなの?というのが頭をよぎったからだ。

「ジークフリードはアリーナを余り王宮へ出入り
させないよう言いましたが、ウィリアムは聞き入れません」

ん?これ、どっかできいたような、としばらく考えてから、ああ、これ、ウィリアムルートにこんな話がでてきていたはずだ。

たしか、マクシミリアンが騎士団の鍛錬場にアリーナを出入りさせていて…?あとで部屋へ帰ってから、ゆっくり思いだそう。とにかく、いまは『天球の翼』がどうなったかだわ。

「…あなたが本を持ち出していたことを、アリーナに話しましたか?あるいはウィリアムかジークフリードには?」
ユリウスは首をかしげる。

「いえ、誰にも話していません。ああ、母には話しましたが」
「王妃さまですか。あとはハイランド卿だ
けでしょうか?」
すると、少しかんがえたあと、いいえ、とユリウスはくちごもった。

「アリッサ夫人に、どういう理由で持ち出すのかと聞かれました」
アリッサ夫人、とわたし繰り返してから、ハイランド卿は奥さまを亡くしていたのでは?と首をかしげた。

「アリッサ夫人はハイランド卿の妹で、未亡人だそうですよ。今は兄のハイランド卿と暮らしているそうです」
私はこの間の園遊会の様子を、思い出そうとしてみた。父やジークフリードについて、様々な方とご挨拶したが、アリッサ夫人については記憶にない。

「先日の園遊会もアリッサ夫人の采配らしいですよ。でも、一度は商家へ嫁いだ女性ですからね。おもて向きは使用人頭として暮らしているそうです」
そうですか、とうなづくと、わたしは席をたった。

「ユリウスさま、取り急ぎ、王都へまいります。侍従のかたたちに支度をさせてくださりませ」
驚き、立ち上がったユリウスは、傷は?と訊ねてくる。

「おそらくですが、これは単なる盗難事件ではありません。王国の危機に、四の五のと言っていられませんわ」
えええ、とユリウスは目を見開き、机の上に両手をついて立ち上がった。
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