公爵家令嬢と婚約者の憂鬱なる往復書簡

西藤島 みや

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3通目 パルマローザより

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親愛なるグリード殿下


先日は素晴らしいものを頂き、ありがとうございます。母に代わりまして、お礼を申し上げます。昨日、宮殿へ参りましたおり、直接お礼をと思いましたが会えないとのことで、残念でございました。
ご挨拶に、我が家で作りましたジェリークッキーを置いて行きましたので、みなさまで召し上がってくださいませ。

靴を贈りました伯爵家は代々王家の近衛騎士を勤める伯爵家です。当代の当主はジェンキンス卿で、近々華燭の典をあげられます由、お祝いをさせていただいた次第ですわ。私はあくまでも第二皇子のおつかいとして注文したにすぎません。焼きもちはやかないでくださいませね。

国務大臣が、前向きに検討する、とおっしゃったのですね。わかりました、このままお待ちになるのが宜しいかと存じます。因みに閣僚や官僚の隠語として、「検討する」とは「却下」だと聞いたことがございますが、まさか一国の大臣がそのような遠回しな物言いはなさらないでしょう。
たとえ現在国務大臣を勤めていらっしゃるジェファーソン・ロデン準男爵が、もともとは外務財政局の官僚出身であらせられたとしても。

それから、私の知る限り私の家に象は飼っておりませんので、象の生態については全く無知でございますが、グリード様は詳しいのでしょうか?四阿は特別に誂えた白い軽い金属でできております。
王宮殿では南国の珍しい動物をたくさん飼っていらっしゃるそうですので、象や麒麟、ユニコーンなどももいるやもしれませんね。

わたくしいちどで良いので、獅子の鬣にりぼんをつけてみたいのです。どうかしら、いま手元にあるのは、我が家のトマスと同じピンクのビロードなのですが。いかがでしょうか?獅子が難しければ、麒麟かガーゴイルでもかまいません。

ところで、せんだってフィーメール伯爵家で行われた春の宴のおり、今年の流行についての話題がでておりました。今年は中央パンゼア公国より、大公のご息女であらせられるシミューラ公姫の60歳の記念の年だそうで、公姫のデザインなさったパンゼアの珍しい陶器や、筆記具、御菓子などが流行っているそうなのです。

フィーメール伯爵家の双子の子息様たちが言うには、令嬢はすべての御菓子を婚約者様から贈られて、いっしょにご試食なさったそうです。えもいわれぬ美味であったとのこと、お友達はみなうっとりとそのお話しを聞きました。

さらに、交流の多い姉妹都市では夏にパンゼアのマーケットを模したお祭りもあるそうですわ。わたくし、フィーメール令嬢と、その婚約者のマイケル様と、ご友人のグレーディア将軍の子息さまと一緒にお祭りにゆく約束をしました。独身最後の旅行ですので、楽しんでまいりますわ!


お父様から、婚姻の儀の日取りが決まったと連絡がございました。城での私の住む宮殿や会場の準備の関係で、今までの春のはじめから、夏がくる前に変更だそうでございますので、悪しからずとのことです。

    追伸  ③は友達にも不評でございました。 残念でなりません。最高級のシルクは芽キャベツが着るには高級すぎますので、②になりそうです。
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