妹に婚約者を寝取られましたが、未練とか全くないので出奔します

ひじり

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【幕間】

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 帰宅後、エレンにクリアとのやり取りを伝える。
 すると、エレンも同じく苦笑いした。

「それはさすがに恥ずかしいな」

 自分たちを題材にした本が世に出ると考えたら恥ずかしすぎる。
 とはいえ、ナーナルとエレンの二人は、内心ではちょっと読んでみたいとも感じていた。

「ナーナルは書いたりしないのか」
「わたしは読み専よ」

 読むのが好きだが、自分で書こうとは思わない。

「だってほら、書く暇があるのなら、まだ見ぬ物語に出会いたいもの」

 そう言って笑うと、つられてエレンも口元を緩める。

「はあ~、今日は疲れたわ。喉も乾いたし、何か飲みましょう、エレン」
「丁度いい。果実水を作ったから味見してくれるか」
「えっ、する! もちろんするわ」

 エレンが台所から自作の果実水を持ってくる。
 今日は喫茶で提供するための果実水を試作していたらしい。

「……うん、すごく美味しいわ」

 数種の柑橘の香りや甘さが上手く合わさっている。
 だが、ため息を一つ。

「エレンって、なんでもできて、時々ズルいと思ってしまうのよね」
「何でも? 俺にもできないことは山ほどあるぞ」
「泳ぐこと以外に?」
「……それもあったな。早いうちに克服しておくか」
「ちょっと、今以上に完璧人間になるつもり?」
「俺も男だからな、ナーナルの前ではカッコつけておきたいんだ」
「ふ、ふふっ、それなら応援しないとね」
「ああ、そうしてもらえると助かる」

 何気ない日常の一コマが、二人にとって幸せでたまらない。
 その幸せを噛み締めながら、また一日が過ぎていく。

     ※

 筆が進む。
 どんどん文字が繋がっていく。
 止まらない止まらない。
 ああ、そっか。そういうことか。
 なるほど、ようやく理解できた。
 あたしは今まで、ずっと勘違いしてた。
 間違った道を進もうとしていたんだ。
 でも、もう大丈夫。
 もう迷うことはない。
 書きたいものが分かった。
 これからは恋愛ものを書こう。

「えっと、二人は手を繋いで互いに目を見つめ合い、そして……そして……」

 ところで、あの二人ってどこまでいってるのかな?
 キスは当然として、その先も……。
 ちょ、ちょっと待って、二人の物語を書くには、それも必要になってくるよね……。

「……う、うう」

 あたし、どこまで書こう……!?
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