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祈り

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僕が初めて福山さんの投稿を目にしたのは、まだこのSNSを始めて間もない頃だった。
当時はまだ、始めたばかりで右も左もわからず、ただ流れてくる他の利用者の投稿を見てはいいねをしたり、簡単な10数文字程度の簡単な投稿を繰り返していた頃だった。
フォロワーの数も少なく、10人程度しかいない時だったと記憶している。
福山さんが僕のことをフォローしてくれたのは。
僕は福山さんのフォローリクエストを、あまり深く考えずにフォロバした。
その後、相手のプロフを吟味してからフォロバするようになるが、まだこの頃はフォローリクエストされるがままに返していた。
まぁ、そんな大した理由も無く、僕と福山さんは緩く繋がった。
僕の知っている福山さんの投稿は、大きく分けて3つの時期に大別される。
まず初めに後に相方さんとなる職場の後輩君との馴れ初めから親しくなるまで。
この頃の投稿の福山さんは、恋する高校生みたいに後輩君の一挙手一投足に一喜一憂していた。
自分の気持ちが恋なのかわからず迷い、後輩君の日々の言動に一喜一憂し、自分の気持ちを伝えるべきかどうか悩み、感情が行ったり来たり波のように揺れ動き、浮き沈むさまの心の機微なヒダを書くような投稿の数々に、初めはちょっとバカにしてながめていた僕だったけど、いつからか自然と成り行きを傍観し、福山さんと後輩君の想いが同じならいいのになぁ、と思うようになっていた。
少しずつ、ゆっくりと、亀の歩みのように、手探りしながら、それでも確実に、距離を縮めていく2人の姿。
たぶん、多くのフォロワーさん達が僕と同じ気持ちで、2人の行く末を見守っていたのではないかと思う。
そして、遂に福山さんが後輩君に想いを伝えると決心する。
どうなるのか?僕は幸せな結末を期待しながらも、やめておいた方がいいと考えていた。たぶん、自分に置き換えていたのだろう。
きっと僕が福山さんの立場なら、怖くて勇気が無くて言えないと思う。何かしら理由をつけて色々と諦めてきた僕らしいけど、まだ後輩君の気持ちも確実でない状況での告白は、僕には無謀としか思えなかった。
でも、福山さんは賭けたのだ。例えダメだったとしても、打ちのめされたとしても、嫌われてしまうかもしれないとしても、せっかく築いた関係が壊れてしまうかもしれないとしても、福山さんは決めたのだ。
男が男に愛を告白する。多様性が謳われるようになったとは言え、やっぱりそれはまだハードルが高すぎる、リスキーな賭けだ。
告白に至るまでの決意を投稿で見守っていた僕だったけど、実際に福山さんがどれほどの覚悟を持って決めたのかは、恐らく10分の1も理解できていないのかもしれない。
もう僕には福山さんを応援することしか出来なかった。
どうか、福山さんの想いが後輩君に届きますように。
どこの誰ともしれない福山さんに、自分の気持ちを投影させていた。
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