不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし

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ケース1

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まず、僕の近くで最初に人が亡くなったのは、10年前の18才の頃のことです。
まだ大学に入学したての僕は、カズさんのお店・・・あぁ、セレクトショップなんですけど、まだその頃は開店したばかりで1店舗しか無い、こじんまりとしたお店だったんですけど、今や都内に30店舗以上あるレインボーゲートという店でバイトを始めました。
そこのバイトで、僕はバイト仲間となる和田隆夫さんと出会います。
和田さんは、僕の一つ年上でバイトの先輩でもありました。
和田さんは気さくな人で、右も左も分からない僕に、親切にバイトの仕事のいろはを教えてくれました。
和田さんの誰とでも分け隔てなく接する性格のおかげで、僕たちが仲良くなるのにはそんなに時間はかかりませんでした。
一緒に夢の国に遊びに行ったり、未成年がいけないことなんですけど、和田さんの部屋で朝まで宅飲みをしたり、女の子をナンパしに行ったりしてました。
まるで、本当の兄のように、僕は和田さんを慕っていました。
僕は、冗談半分、半分本気で和田さんのことを師匠、なんて呼んでいました。
あんまりにも仲が良すぎて、いつも一緒にいたせいか、周りから「付き合ってるの?」なんて囃し立てられることがあったくらいです。
だけど、別れは突然やって来ました。
その日も僕は先輩と遊びに行く約束をしていました。
僕は待ち合わせ場所である駅前のカフェで、少し時間があったので1人でお茶をしていました。
しかし、待ち合わせの時間を過ぎても先輩は現れず、僕からメールをしても返信はありませんでした。
3時間くらい待っていたのですが、僕は仕方ないので帰ることにしました。
その時でした。先輩から電話がかかって来たのは。
しかし、僕が電話に出ると、電話口に出たのは僕の知らない声でした。
電話をかけてきたのは、警察の方でした。
何が起きたのか分からない僕に、警察の方は言いました。
「和田隆夫さんが、電車に撥ねられ死亡しました」と。
僕は、その言葉の意味を受け入れるのにどれだけの時間を要したのか、今でも思い出すことができません。
僕は、急いで教えてもらった病院へと向かいました。
先輩の遺体は、かなり損傷が激しかったらしく、先に到着していた先輩のご家族でさえも、遺体に対面させられてもらえなかったとのことでした。
不思議ですね。僕は、先輩の死を現実として受け入れることができず、涙が出ることがありませんでした。
人間、悲しすぎると案外泣かないものなんだな、なんて思ったりしました。
その後、警察の事情聴取を受けました。
警察の方の説明では、事故として捜査が進められているとのことでしたが、防犯カメラの映像から誰かとすれ違いざまに接触して線路に落ちた、とのことで事件性も視野に捜査しているとのことでした。
ということなので、僕もその時の映像を観させてもらいました。
その映像には、ホームの縁を歩いている先輩が映っていました。
そして、電車が近づいて来たところ、正面からやって来た人が先輩に接触して、先輩が線路に転落したところで映像は終わっていました。
映像を観た限り、すれ違った人がわざと先輩とぶつかったり、突き落としたようには見えなかったけど、実際にはどうだったのか、僕には見当がつきませんでした。
ただ、警察の方から聞かれたのは、先輩と接触した人物に心当たりがあるかどうか、ということを聞かれました。
正直、カメラの映像は画質が粗かったので、それが僕の知っている誰かどうかなのかまでは判別できませんでした。
背格好も普通だし、帽子を目深に被っていたし、特にこれと言って特徴があるわけでもなかったので、何もわからないという感想しかありません。
また、警察の方には、先輩の交友関係を聞かれました。だけど、僕が知る限りでは先輩が誰かの恨みを買っているとか、トラブルがあったとかいう話しは聞いたことがありませんでした。
あと、僕のアリバイも聞かれました。
先ほどもお話ししましたが、僕は事故があった時間にカフェで先輩を待っていました。店の人の証言が或るので、僕は早々に捜査対象から外されました。
結局、先輩のことは有力な証言も無かったことから、事件性は無いということで不幸な事故として解決したと聞きました。




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