不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし

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ケース4

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次は、少し時間が空きます。
僕が26才の時なので、今から約2年ちょっと前になります。
その頃、僕はたまたま飲みに行った馴染みのバーで、ある人と親しくなります。
彼の名前は大月浩二と言いました。
大月・・・いえ、浩二は役者を目指している奴で、僕より2才年下の何事にも前向きでアクティブで、そんな浩二を僕は羨ましいと思いました。
保守的な僕には、浩二のような生き方はできないと思っていたからです。
しかし、そんな浩二をある日、不幸が襲います。
浩二が大腸癌になったのです。
浩二は、役者を目指しながらの生活だったので、安定した職には就いていませんでした。
普段はコールセンターで働きながら、芸能の仕事がある時は休んで役者の仕事に行ったりしている、と話していました。
そのせいで、浩二の収入は不安定で、治療費を工面するのは大変そうでした。
尚且つ、浩二は両親も既に亡くなっていて家族は無く、親戚とは疎遠で天涯孤独の身だと言っていました。
僕は、そんな浩二に同情して感情移入してしまいました。
何とか浩二を助けたい、そう思って僕は毎月治療のたびにその治療費を貸していました。
正しく言うなら、そのお金は返ってこないことを前提で貸してました。
借用書も貰っていないので、浩二にいくら渡したのか、今となっては正確な金額はわかりませんが、少なくとも100万円は貸していると思います。
でも、そんなことはかまわないと思ってました。
とにかく、彼が元気になって、また夢を追いかけられるようになってくれたら、それだけでいい、と思っていました。
だけど、そのうち彼との距離は離れて行くことになります。
初めのうちは僕には感謝してくれて、病状の経過とか、仕事のこととか報告があったんですけど、次第にそれも減っていって、最後の方は金だけ払っていました。
さすがの僕も、これはおかしいのではないか、と思い始めて周りに相談しました。
今でもまだ、どこかで浩二のことを信じたい気持ちも残っています。
でも、普通、困っていてお金借りていたら、せめて病気の経過報告とかしますよね?
どれくらい払ったあとでしょうか?
僕の方から縁を切ったのは。
まだ浩二が生きているのなら、身元だけはハッキリしていたので、今なら本気でお金を返してほしいですね。
でも、これもいい社会勉強になったと、高い授業料を払って学べたと思って、お金のことは諦めました。
それからどれくらい経ってからでしょうか、浩二が死んだという知らせを聞いたのは。
自殺だと聞きました。多量の睡眠導入剤を飲んで、練炭自殺したと聞いています。
僕が聞いた話しでは、やばい所から金を借りていて、かなり追い詰められていたらしい、ということでした。
これって、間接的に僕が死に追い込んだとも言えるのでしょうか?
僕がお金を渡し続けていたら、彼は死ななかったのでしょうか?
僕はバカですね。
自分を裏切っていた友だちを、今だにどこかで信じているなんて。
彼の話しがどこまで本当のことだったのか、今となっては確かめようも無いことですけど。
彼は、周囲といろいろ揉めていたそうです。主に金絡みでトラブルを抱えていたようで、当時は彼の自殺を事件性も視野に入れて捜査していたみたいで、僕も任意の聴取を受けました。
まぁ、僕の場合は確固としたアリバイがあったので、彼と金銭のトラブルがあってもすぐに容疑は晴れましたけど。
その当時のアリバイですか?
僕は友だちと食事に行っていて、アリバイを証明されたので大丈夫でした。
不思議なことに、僕が何かしら用がある時に限って、僕と関わりのある人が亡くなっていくんですよね。
たまたまなのか、何か見えない力でも働いているのか。
不思議なことです。

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