不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし

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ケース3

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次は、僕が社会人一年目の時のことです。
念願かなって志望していた企業に就職できた僕でしたが、その勤務先は対外的なイメージとは違って、かなりのブラック企業でした。
新人と言えども激務は容赦なく、入社1ヶ月も過ぎるとかなり高いノルマを与えられ、月に100時間近い残業も珍しくありませんでした。
知り合いや友人にも相談しましたが、皆んなが驚くくらいの激務でした。
特に僕の配属された部署は厳しく、新人なのに、設定されたノルマを達成できなければ皆んなの前で罵倒されるのは当たり前。酷ければ髪の毛掴まれて突き倒される、なんてこともありました。
そんな厳しい部署に配属された僕を、特に厳しく指導したのが長田課長でした。
長田課長は高卒からの叩き上げで、学歴で劣等感を感じていた分、誰よりも努力して成り上がってきたとのことで、酒の席でもよく武勇伝としてその事を何度も聞かされました。
周りにとっては、自分がそうしてきたから他の人もできるだろう、やって当たり前、と押し付けられるのは傍迷惑な話しで、毎年長田課長のもとに就いた新人が、いつまでに何人辞めるだろう?何人残るだろう?という賭けが、毎年の恒例となっていたそうです。
5月を過ぎる頃には、1人、また1人と退職する新人も出てきました。
特に目をつけられていた僕も例外では無く、なんとか耐えていましたが、遂には体調を崩して休職するまでに至りました。
しかし、僕が部屋で静養している時です。信じられないことが起きたのは。
ある日、長田課長がやって来たのです。
お見舞いと称してのことでしたが、そんなのは対外的な言い訳にすぎませんでした。
長田課長は、持ってきたお見舞いの品をいきなり僕に投げつけてきました。
それから怒りに任せて罵声を浴びせ続けます。
お前のせいで俺の評価が下がった!どうしてくれる!?とか、お前みたいな軟弱野郎は死んでしまえ!、とか、言われたい放題でした。
挙句の果てには僕の胸ぐらを掴んで、今にも殴りかかりそうな勢いで僕を脅してきました。
これ以上俺の脚を引っ張るなら、本当にぶっ殺すと言われました。
あまりの理不尽さに、さすがの僕も耐えきれず、翌日には退職願いを提出しました。
そして僕はその後半年間、心療内科に通院するはめになりました。
そんな時でした、長田課長が亡くなったと聞いたのは。
同期で入社した親しくしていた奴から、長田課長が突然死したと聞かされました。
死因を聞くと、急性アルコール中毒だと言うことでした。
普段から長田課長は酒癖が悪くて有名で、酒の席では何人もの人が無理やり飲ませられて潰れたりしていましたが、酒呑みが酒のせいで亡くなるなんて、なんか因果なものだな、と思いました。
そして、これはあまり言っていいものではないのですが、内心ざまあみろ、とも思ってしまいました。
長田課長は、その日も仕事終わりにいつもの飲み屋に立ち寄って、周りの客を巻き込んで盛り上がっていたそうです。
そして、そこで意気投合した人と一緒に次の店へ行ったそうです。
まぁ、取り立てて普段と変わった様子は無かったそうです。
そして、その日の夜は、まだ飲み足りなかったのか、家に帰ってからも酒を呑んでいたそうです。
家族でもいたら死ぬようなことにはならなかったのかもしれないですけど、仕事一筋でしたから家族がいないのも仕方ないですね。
え?長田課長が亡くなった時の僕のアリバイですか?
もう6年も前のことですけど、僕は祖母の法要があって秋田にいました。家族や親戚に確認してもらってもかまいませんよ。たしか叔父さんもいたし。ねぇ、叔父さん?
でも、これはさすがに事件性は無いと思いますけど。
ただの不幸な事故だと思いますけどね。








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