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捜査開始
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探偵に依頼を受けてもらえて、小川は探偵に熱いハグをした。
探偵は、相変わらず調子のいい奴だな、と思った。
「ところで、亡くなった5人は互いに面識はあったのか?」
「いえ、それが不思議なのですが、全く面識が無いんです。」
田中は、少し心当たりを思い出すようにしながら答えた。
「それは、捜査本部でも調べた。しかし、どこかで誰かがつながっているということは、どうしても見つけられなかった。」
小川もお手上げ、という大袈裟なジェスチャーをしてみせた。
「さてどうする?何から手をつけたらいいか?」
「まずは時系列順に調べてみようと思う。最初は和田隆夫の身辺を調べてみたい。政臣君、誰か2人の共通の知り合いはいないかな?できるだけ親しい人がいい。」
探偵は田中に尋ねる。
「そうですね・・・互いの共通の知人で、特に親しかったといえば、カズさんでしょうか。」
田中は、少し思案した末に答えた。
「その人は、2人とはどういった関係なのかな?」
「僕が大学生の時に、和田さんとバイトしていたレインボーゲートの店長です。今や注目の実業家で、僕はとても尊敬してます。」
田中は即答した。その目はとても澄んだ瞳をしているようで、田中が心から慕っているのがわかった。
「カズさんか。その人について、もう少し詳しく聞かせてもらえるかな?」
「えぇ、もちろんです。カズさんと僕が知り合ったのは、僕が大学に入学した18才の春の時でした。」
僕は秋田から上京してきたばかりで、慣れない東京で右も左も分からず、ただ戸惑うばかりでした。
親は学費と僅かばかりの仕送りをしてくれましたが、それだけでは生活をするのには足りません。
だから僕は、早急に収入を確保する必要性がありました。
しかし、面接をいくつも受けてはみるものの、ことごとく不採用になりました。
そんな時、渋谷を彷徨いていた時に、たまたま小さな雑貨屋の前を通りかかりました。
その店の壁に、小さなバイト募集のチラシが貼ってありました。
僕は、藁にもすがる思いで、思い切って店に飛び込みました。
そこにいたのが、店長である松尾和利さんと和田さんでした。
レインボーゲートも、今みたいにあちこちに店を構えているわけでなく、当時はこじんまりとした個人商店でした。
そこで僕は表の張り紙を見て応募したいと告げると、あっさりと採用されました。
そんな経緯もあって、何とか僕は東京でバイトにありつくことができました。
楽しい職場でした。カズさんは僕のことをとても気遣ってくれたし、和田さんにもとても可愛がってもらいました。
3人揃うと、まるでコントでもしているかのように和気藹々と会話が盛り上がったり、仕事終わりに食事に行ったりしました。
本当にあの頃は楽しかったです。
仕事が楽しいなんて感じて、バイトに行くのが楽しみなんていうのは、後にも先にもあの頃だけですね。
カズさんとは、20才くらい歳が離れていますけど、いつも若々しくて、僕も将来はこんな風に年を取りたいなぁ、と思っていました。
お洒落だし、博識だし、話しも面白いし、同年代の人と比べたらずっとカッコいいんです。
今は50才くらいだと思いますけど、どう見ても30代半ばにしか見えないですね。
今でも時々会っては、いろいろ悩み事を聞いてもらったり、相談をしてみたりさせてもらっています。
誰よりも親身に向き合ってくれて、的確なアドバイスをしてくれたり、一緒に悩んだり笑ったり怒ったりしてくれます。
年は離れていますが、僕にとっては頼れる兄貴のような存在です。
今、僕がこうしていられるのも、カズさんのおかげかもしれません。
「政臣君は、ずいぶんとカズさんに心酔しているんだね。」
「心酔というと何となく違和感がありますけど、これまでにいちばんお世話になっている人なので、かなり慕ってはいますね。とにかく、カズさんは素晴らしい人格者なんです。僕の人生の指針と言ってもいいくらいで、僕に常に影響を与えてくれるんです。」
田中は、カズさんのことについて話すことを嬉々として力説した。
まるで、ある種の信仰みたいだな、と探偵は思うくらいだった。
「カズさんは、亡くなった5人とは面識は無かったのか?」
「ありませんよ。カズさんが知っている人は、和田さんだけだと思いますよ。あとの4人については存在すら知らないはず、カズさんと面識があったとは思えませんね。」
田中は、和田以外の自分とトラブルがあって亡くなった連中と、尊敬するカズさんが関係あるわけないじゃないか、と言いたげだった。
「何だか、そのカズさんという人に会ってみたくなったな。政臣君、カズさんに会わせてもらえないかな?」
探偵が、田中にそう頼むと、田中は心良く快諾して松尾和利に会うアポを取ってくれた。
「政臣は、これから仕事に戻らないといけないから、松尾に会いに行くのは我々だけにしよう。」
小川は探偵に提案した。
「わかった、それでは早速松尾和利に話しを聞きに行ってみよう。いろいろ話しを聞かせてくれてありがとう。また別のことで協力してもらうかもしれないが、よろしく頼むよ。」
「いえ、こちらこそ僕の依頼を引き受けていただいてありがとうございます。僕にできることは何でもするので、いつでも声を掛けてください。どうか、僕への疑いを晴らしてください、よろしくお願いします。」
田中はそう言うと、再び探偵に向かって深々と頭を下げた。
探偵は、相変わらず調子のいい奴だな、と思った。
「ところで、亡くなった5人は互いに面識はあったのか?」
「いえ、それが不思議なのですが、全く面識が無いんです。」
田中は、少し心当たりを思い出すようにしながら答えた。
「それは、捜査本部でも調べた。しかし、どこかで誰かがつながっているということは、どうしても見つけられなかった。」
小川もお手上げ、という大袈裟なジェスチャーをしてみせた。
「さてどうする?何から手をつけたらいいか?」
「まずは時系列順に調べてみようと思う。最初は和田隆夫の身辺を調べてみたい。政臣君、誰か2人の共通の知り合いはいないかな?できるだけ親しい人がいい。」
探偵は田中に尋ねる。
「そうですね・・・互いの共通の知人で、特に親しかったといえば、カズさんでしょうか。」
田中は、少し思案した末に答えた。
「その人は、2人とはどういった関係なのかな?」
「僕が大学生の時に、和田さんとバイトしていたレインボーゲートの店長です。今や注目の実業家で、僕はとても尊敬してます。」
田中は即答した。その目はとても澄んだ瞳をしているようで、田中が心から慕っているのがわかった。
「カズさんか。その人について、もう少し詳しく聞かせてもらえるかな?」
「えぇ、もちろんです。カズさんと僕が知り合ったのは、僕が大学に入学した18才の春の時でした。」
僕は秋田から上京してきたばかりで、慣れない東京で右も左も分からず、ただ戸惑うばかりでした。
親は学費と僅かばかりの仕送りをしてくれましたが、それだけでは生活をするのには足りません。
だから僕は、早急に収入を確保する必要性がありました。
しかし、面接をいくつも受けてはみるものの、ことごとく不採用になりました。
そんな時、渋谷を彷徨いていた時に、たまたま小さな雑貨屋の前を通りかかりました。
その店の壁に、小さなバイト募集のチラシが貼ってありました。
僕は、藁にもすがる思いで、思い切って店に飛び込みました。
そこにいたのが、店長である松尾和利さんと和田さんでした。
レインボーゲートも、今みたいにあちこちに店を構えているわけでなく、当時はこじんまりとした個人商店でした。
そこで僕は表の張り紙を見て応募したいと告げると、あっさりと採用されました。
そんな経緯もあって、何とか僕は東京でバイトにありつくことができました。
楽しい職場でした。カズさんは僕のことをとても気遣ってくれたし、和田さんにもとても可愛がってもらいました。
3人揃うと、まるでコントでもしているかのように和気藹々と会話が盛り上がったり、仕事終わりに食事に行ったりしました。
本当にあの頃は楽しかったです。
仕事が楽しいなんて感じて、バイトに行くのが楽しみなんていうのは、後にも先にもあの頃だけですね。
カズさんとは、20才くらい歳が離れていますけど、いつも若々しくて、僕も将来はこんな風に年を取りたいなぁ、と思っていました。
お洒落だし、博識だし、話しも面白いし、同年代の人と比べたらずっとカッコいいんです。
今は50才くらいだと思いますけど、どう見ても30代半ばにしか見えないですね。
今でも時々会っては、いろいろ悩み事を聞いてもらったり、相談をしてみたりさせてもらっています。
誰よりも親身に向き合ってくれて、的確なアドバイスをしてくれたり、一緒に悩んだり笑ったり怒ったりしてくれます。
年は離れていますが、僕にとっては頼れる兄貴のような存在です。
今、僕がこうしていられるのも、カズさんのおかげかもしれません。
「政臣君は、ずいぶんとカズさんに心酔しているんだね。」
「心酔というと何となく違和感がありますけど、これまでにいちばんお世話になっている人なので、かなり慕ってはいますね。とにかく、カズさんは素晴らしい人格者なんです。僕の人生の指針と言ってもいいくらいで、僕に常に影響を与えてくれるんです。」
田中は、カズさんのことについて話すことを嬉々として力説した。
まるで、ある種の信仰みたいだな、と探偵は思うくらいだった。
「カズさんは、亡くなった5人とは面識は無かったのか?」
「ありませんよ。カズさんが知っている人は、和田さんだけだと思いますよ。あとの4人については存在すら知らないはず、カズさんと面識があったとは思えませんね。」
田中は、和田以外の自分とトラブルがあって亡くなった連中と、尊敬するカズさんが関係あるわけないじゃないか、と言いたげだった。
「何だか、そのカズさんという人に会ってみたくなったな。政臣君、カズさんに会わせてもらえないかな?」
探偵が、田中にそう頼むと、田中は心良く快諾して松尾和利に会うアポを取ってくれた。
「政臣は、これから仕事に戻らないといけないから、松尾に会いに行くのは我々だけにしよう。」
小川は探偵に提案した。
「わかった、それでは早速松尾和利に話しを聞きに行ってみよう。いろいろ話しを聞かせてくれてありがとう。また別のことで協力してもらうかもしれないが、よろしく頼むよ。」
「いえ、こちらこそ僕の依頼を引き受けていただいてありがとうございます。僕にできることは何でもするので、いつでも声を掛けてください。どうか、僕への疑いを晴らしてください、よろしくお願いします。」
田中はそう言うと、再び探偵に向かって深々と頭を下げた。
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