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和田隆夫について
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お待ちしてました。話しは政臣君から聞いています。
彼への疑いが晴れるのならば、私は協力を惜しみません。
でも、まず何から話せばいいのでしょうか?
あぁ、そうでしたね、和田君のことを聞きにきたのでしたね。
和田君とは、私が脱サラをして店を開業した時からの付き合いになります。
和田君は本当に気の利く子で、店を始めた当初から彼には何度も助けてもらいました。
和田君のサポートがあったからこそ、私はなんとか店を切り盛りしていくことができたとも言えるくらいです。
当時の私は、和田君に足を向けて眠れないくらいの信頼を感じていました。
私達はよく、政臣君を含めて3人で飲みに行ってました。
3人が揃うと、私は2人とはだいぶ歳が離れていますが、年齢差を感じさせないくらい和気藹々と楽しく過ごせました。
それもこれも、和田君が私と政臣君の仲の橋渡しをしてくれたり尽力してくれたからです。
和田君がいなかったら、私と政臣君は今のように親しくなることが出来なかったかもしれませんね。
こうして今も親しくさせてもらっていることができているのは、全て和田君のおかげだと言っても過言では無いかもしれません。本当に、彼には感謝しています。
ただ、和田君の唯一の欠点は、お喋りだというところでしょうか。
つい口が滑って他人の秘密をポロリと口にしてしまったり、言ってはダメだと言われたことを言ってしまう、そんな悪い癖もありました。
そう言えば、こんなことがありましたね。
いつものように3人で飲みに行った時でした。
一回だけ、政臣君が和田君に対して怒ったことがありました。
理由は、和田君が政臣君がまだ童貞だということを口にしてしまったからです。
政臣君は、自分の恋愛の悩みについて和田君に相談していたらしいのですが、絶対に誰にも言わないと約束したうえで、自分が童貞だと告白したらしいんですね。
でも、酒のせいもあったとはいえ、それを私の前で暴露してしまったことを、政臣君はえらい剣幕で怒ってしまいました。
その場は私が双方をたしなめてその場をおさめましたが、一週間くらい政臣君は和田君を無視していましたね。
2人が喧嘩をしたのは、おそらくその時が最初で最後でしょうね。
よく、口は災いの元とは言いますが、和田君がああなったのも自身の身から出た錆とも言えなくはないかも知れないでしょう。
和田君が亡くなった時の政臣君の哀しみようは、それはもう辛そうなんてものではありませんでした。
見ていて居た堪れなくなるほど憔悴しきっていました。
私に何か出来ることがあればよかったのですが、私はただ、政臣君の隣にいることしか出来ませんでした。
そんな和田君が大好きだった政臣君が、まさか和田君を殺すなんてことがあるでしょうか?
第一、政臣君には和田君を殺す動機が無い。
それに私は常々思うのですが、人はそんなに簡単に人を殺すことはできないと思うのですよ。
どれだけ追い詰められて、自分の命が脅かされても、人を殺せない人は、絶対に人は殺すことはできないと思うのです。
それこそ政臣君は、虫も殺せないほど優しい子です。
政臣君は、誰よりも心根が優しく、人の痛みがわかる子だと私は思います。
誓って言いますが、彼が和田君を殺したなんてことは無いです。
あぁ、すっかり話が和田君のことから政臣君のことに脱線してしまいましたね。和田君のことに話しを戻しましょう。
和田君が、誰かから恨みを買っているようなことも考えずらいですし、何かに悩んでいたようでもありませんでした。
やはり和田君の死は、単なる不幸な事故だったのではないでしょうか?
私から和田君についてお話しできるのは、このくらいでしょうか?
今日お話ししたことが、少しでも参考になってもらえて、政臣君の疑いが晴れてくれればいいのですが。
次は政臣君のことですか?
先程、けっこう熱っぽく喋ってしまいましたが、政臣君とのこれまでの付き合いの中で、私ほど彼を理解している者はいないのでは無いかと自負しています。
政臣君も、私のことを信頼してくれていると思います。
いつも、何かあると真っ先に私に知らせてくれたりするのが、その証明だと思います。
仮に、私よりも付き合いの長い友だちがいたとしても、政臣君と私の間の信頼関係は揺るぎないものでしょう。
少々大袈裟と思われるでしょうが、彼を脅かす存在から、私は全力で彼を守る覚悟です。
え?この写真の8人の中で面識があった人がいるかですか?
刑事さん達がお尋ねの4人も、他の写真の方達も私には面識が無いですね。
以上で、おそらくあなた方が聞きたい話しは全てかと思いますが、どうか政臣君にかけられている疑いを晴らしてくれますよう、よろしくお願いします。
五木君、お二人を玄関までご案内してあげてください。
松尾の秘書の五木に見送られ、地下駐車場に向かった。地下駐車場には、車と並んで多くの電動アシスト自転車が並んでいた。
「この自転車は、全て御社の物なんですか?」
探偵が五木に尋ねる。
「えぇ、弊社の松尾は環境問題にシビアで、行ける範囲なら車は使わず自転車を使用するようにしているのです」
五木は誇らしげに応えた。
面会を終えた探偵と小川は、互いの松尾に対する印象について意見を交換した。
「和田のことを聞きに来たのに、何だか政臣のことを聞きに来たみたいになってしまったな。あの松尾という男。やたらと政臣に肩入れしているな。」
小川は、レインボーゲート本社のあるビルのフロアを見上げて、探偵に語りかけた。
「松尾の政臣君に対する想いは、並々ならぬものがあるようだ。」
「肝心の和田についてはとうだ?彼の話しで参考になったか?」
小川が訝しげに探偵の反応を窺う。
「和田については、松尾からは政臣君から聞いたこととそう大差はない。2人の証言からわかるのは、和田という青年が誰からも慕われ信頼される好青年だということだ。和田が誰かの恨みを買うとは到底思えない。」
「同感だな。やはり和田の死はただの不幸な事故だったのだろうか?」
「それはこれから行く他の人物の話しを聞いてからだな。5人の死が繋がっているのなら、どこかに共通項があるはずだ。」
彼への疑いが晴れるのならば、私は協力を惜しみません。
でも、まず何から話せばいいのでしょうか?
あぁ、そうでしたね、和田君のことを聞きにきたのでしたね。
和田君とは、私が脱サラをして店を開業した時からの付き合いになります。
和田君は本当に気の利く子で、店を始めた当初から彼には何度も助けてもらいました。
和田君のサポートがあったからこそ、私はなんとか店を切り盛りしていくことができたとも言えるくらいです。
当時の私は、和田君に足を向けて眠れないくらいの信頼を感じていました。
私達はよく、政臣君を含めて3人で飲みに行ってました。
3人が揃うと、私は2人とはだいぶ歳が離れていますが、年齢差を感じさせないくらい和気藹々と楽しく過ごせました。
それもこれも、和田君が私と政臣君の仲の橋渡しをしてくれたり尽力してくれたからです。
和田君がいなかったら、私と政臣君は今のように親しくなることが出来なかったかもしれませんね。
こうして今も親しくさせてもらっていることができているのは、全て和田君のおかげだと言っても過言では無いかもしれません。本当に、彼には感謝しています。
ただ、和田君の唯一の欠点は、お喋りだというところでしょうか。
つい口が滑って他人の秘密をポロリと口にしてしまったり、言ってはダメだと言われたことを言ってしまう、そんな悪い癖もありました。
そう言えば、こんなことがありましたね。
いつものように3人で飲みに行った時でした。
一回だけ、政臣君が和田君に対して怒ったことがありました。
理由は、和田君が政臣君がまだ童貞だということを口にしてしまったからです。
政臣君は、自分の恋愛の悩みについて和田君に相談していたらしいのですが、絶対に誰にも言わないと約束したうえで、自分が童貞だと告白したらしいんですね。
でも、酒のせいもあったとはいえ、それを私の前で暴露してしまったことを、政臣君はえらい剣幕で怒ってしまいました。
その場は私が双方をたしなめてその場をおさめましたが、一週間くらい政臣君は和田君を無視していましたね。
2人が喧嘩をしたのは、おそらくその時が最初で最後でしょうね。
よく、口は災いの元とは言いますが、和田君がああなったのも自身の身から出た錆とも言えなくはないかも知れないでしょう。
和田君が亡くなった時の政臣君の哀しみようは、それはもう辛そうなんてものではありませんでした。
見ていて居た堪れなくなるほど憔悴しきっていました。
私に何か出来ることがあればよかったのですが、私はただ、政臣君の隣にいることしか出来ませんでした。
そんな和田君が大好きだった政臣君が、まさか和田君を殺すなんてことがあるでしょうか?
第一、政臣君には和田君を殺す動機が無い。
それに私は常々思うのですが、人はそんなに簡単に人を殺すことはできないと思うのですよ。
どれだけ追い詰められて、自分の命が脅かされても、人を殺せない人は、絶対に人は殺すことはできないと思うのです。
それこそ政臣君は、虫も殺せないほど優しい子です。
政臣君は、誰よりも心根が優しく、人の痛みがわかる子だと私は思います。
誓って言いますが、彼が和田君を殺したなんてことは無いです。
あぁ、すっかり話が和田君のことから政臣君のことに脱線してしまいましたね。和田君のことに話しを戻しましょう。
和田君が、誰かから恨みを買っているようなことも考えずらいですし、何かに悩んでいたようでもありませんでした。
やはり和田君の死は、単なる不幸な事故だったのではないでしょうか?
私から和田君についてお話しできるのは、このくらいでしょうか?
今日お話ししたことが、少しでも参考になってもらえて、政臣君の疑いが晴れてくれればいいのですが。
次は政臣君のことですか?
先程、けっこう熱っぽく喋ってしまいましたが、政臣君とのこれまでの付き合いの中で、私ほど彼を理解している者はいないのでは無いかと自負しています。
政臣君も、私のことを信頼してくれていると思います。
いつも、何かあると真っ先に私に知らせてくれたりするのが、その証明だと思います。
仮に、私よりも付き合いの長い友だちがいたとしても、政臣君と私の間の信頼関係は揺るぎないものでしょう。
少々大袈裟と思われるでしょうが、彼を脅かす存在から、私は全力で彼を守る覚悟です。
え?この写真の8人の中で面識があった人がいるかですか?
刑事さん達がお尋ねの4人も、他の写真の方達も私には面識が無いですね。
以上で、おそらくあなた方が聞きたい話しは全てかと思いますが、どうか政臣君にかけられている疑いを晴らしてくれますよう、よろしくお願いします。
五木君、お二人を玄関までご案内してあげてください。
松尾の秘書の五木に見送られ、地下駐車場に向かった。地下駐車場には、車と並んで多くの電動アシスト自転車が並んでいた。
「この自転車は、全て御社の物なんですか?」
探偵が五木に尋ねる。
「えぇ、弊社の松尾は環境問題にシビアで、行ける範囲なら車は使わず自転車を使用するようにしているのです」
五木は誇らしげに応えた。
面会を終えた探偵と小川は、互いの松尾に対する印象について意見を交換した。
「和田のことを聞きに来たのに、何だか政臣のことを聞きに来たみたいになってしまったな。あの松尾という男。やたらと政臣に肩入れしているな。」
小川は、レインボーゲート本社のあるビルのフロアを見上げて、探偵に語りかけた。
「松尾の政臣君に対する想いは、並々ならぬものがあるようだ。」
「肝心の和田についてはとうだ?彼の話しで参考になったか?」
小川が訝しげに探偵の反応を窺う。
「和田については、松尾からは政臣君から聞いたこととそう大差はない。2人の証言からわかるのは、和田という青年が誰からも慕われ信頼される好青年だということだ。和田が誰かの恨みを買うとは到底思えない。」
「同感だな。やはり和田の死はただの不幸な事故だったのだろうか?」
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