かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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07話 楽しみな仕事

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「リナリア、何とかならんかね」

 出ました。
 父の得意技の一つ「何とかならんかね」。
 ちなみにもう一つの父の得意技は「後は任せる」です。

 父はしょんぼりとした顔で、訴えかけるような目で私を見ています。
 私が父の代わりに動いて、使用人たちに指示を出して事後処理をすることを期待している目です。

 我が家は公爵家で、金に糸目をつけずに人材を集めておりますので、優秀な使用人たちや専属の弁護士がいます。
 だから父が何かやらかしても、「何とかならんかね」「後は任せる」と言えば、大抵のことは周囲が動いて何とかしますので、何とかなるのです。

 周囲の者が何とかする状態に、父は慣れ切っています。
 ですから「何とかならんかね」「後は任せる」は、すでに父の口癖のようなものでもあります。

「お父様の目的は、デイジーに良い嫁ぎ先を見つける、ということでよろしいかしら?」

 私が確認をすると、父は頷きました。

「ああ、そうだ」
「解りました。デイジーが良い家に嫁げるよう、私が善処いたします」

 私がデイジーの世話を承諾すると、父はぱっと、能天気な笑顔を浮かべました。

「リナリア、頼んだよ」


 ◆


「ふふふ……」

 デイジーの教育を任されて、私は楽しくなってきました。

 デイジーは素晴らしく容姿が整った美しい少女です。
 デイジーの器量なら、貴族の娘として調教すれば、社交界の華となることも夢ではないでしょう。

 今のデイジーは言葉遣いも振る舞いも最悪ですが、それをどこまで矯正できるかで結果は変わります。

 作法の平均点をクリアできれば、庶子といえどエンフィールド公爵家の血をひいていますので、下位の貴族か裕福な商人に手堅く嫁げるでしょう。

 更に上を目指して、完璧な淑女に育てあげることができれば、デイジーのあの器量なら、強く望まれて上位貴族の家に嫁げる芽もあります。

 どこまでデイジーを育て上げることができるか。
 どこまで家格の高い家に嫁がせることができるか。
 それはデイジーの世話を任された私の腕次第なのです。

「この私が、デイジーをビシビシ鍛えて、必ず良い家に嫁がせてあげるわ」

 私はデイジーの育成に闘志を燃やしました。

 しかしこのときの私は、後の結果を見るに、自分の手腕をかなり過小評価していたと言えます。
 デイジーを伯爵家あたりに嫁がせることができれば上々、くらいに思っておりましたので。

 しかし私は自分が思っていた以上に優秀な導き手でした。
 デイジーもまたとても優秀で、そして私が思っていた以上に、異性にとっては強烈な魅力を備えた少女でした。

 このときの私は、まだ、夢にも想像していませんでした。
 まさかデイジーが、すでに婚約者がいる王太子を始めとする、多くの令息たちの心を撃ち抜いてしまう破壊力を持った傾国の令嬢に進化してしまうことを。
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