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17話 忍び寄る影
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「デイジー、今日も可愛いね」
「デイジー、社交には慣れたかい?」
「デイジー、意地悪をされていないか? 何かあったらすぐに言うんだよ」
ウィード公爵の夜会でも、デイジーの周りにはいつもどおり煌びやかな男性たちが集まっていました。
デイジーが可愛いという意見にだけは同意せざるを得ません。
今日のデイジーはすっきりしたデザインの淡い空色のドレスで、水の精霊のように清らかな佇まい。
触れたら泡となって消えてしまいそうな儚い美しさがあります。
「デイジー、今度うちで園遊会をやるんだ。ぜひ来てほしい」
デイジーとダンスを一曲踊ったアイヴィー王子殿下が、デイジーの手を握ったままで言いました。
王子の『うち』でやる園遊会とは、王宮で行われる園遊会のことですね。
「父に相談しませんと。私ではお答えいたしかねます」
「エンフィールド公には私から言っておこう」
アイヴィー王子殿下はデイジーの手を放さないままそう言いました。
デイジーは笑顔をひくりと引きつらせました。
デイジーはアイヴィー王子殿下が嫌いですものね。
そろそろ助け舟を出そうかと私が思ったとき。
私より一足早く、バジル様がデイジーとアイヴィー王子殿下に近付きました。
「殿下、デイジーの手を放してください。淑女に対して失礼ではありませんか」
表情の無い顔でバジル様はアイヴィー王子殿下の行動を真っ直ぐに非難しました。
なんの捻りもなく。
当然、非難されたアイヴィー殿下はバジル様を睨みつけました。
「バジル、誰に向かって言っている?」
「アイヴィー王子殿下に言っています」
「従弟だからといって無礼が許されると思うなよ?」
デイジーが私を振り向き、『助けて』と無言で目で合図しました。
「おそれいります、殿下……」
私は笑顔でアイヴィー王子殿下に言いました。
「妹は髪が乱れてしまっているようです。化粧直しをしてあげたく思います。しばし御前を失礼するご無礼をお許しくださいませ」
私がそう言うとデイジーもすかさず言いました。
「殿下、私、お姉様と一緒に休憩室へ行って髪を直してまいります」
「あ、ああ……。行って来るといい」
アイヴィー王子殿下はようやくデイジーの手を放しました。
◆
「もう……何なのよあの王子。……気持ち悪い」
私とデイジーは夜会の会場である広間から出て、付き添い女中たちを引き連れて休憩用に用意されている部屋へ向かいました。
廊下を歩きながら、デイジーは小声で呪詛を吐きました。
「婚約者の家の夜会なのに、婚約者を放置して、他の女を口説いてデートに誘おうなんて……。頭おかしいんじゃないの? 爛れてるわ」
デイジーの言うことは尤もなことです。
今日の夜会の主催者ウィード公爵の娘ダリアさんは、アイヴィー王子殿下の婚約者です。
婚約者の家で、婚約者やその両親の目の前で、他の女性を口説ける神経は普通ではありません。
そのときの私たちはまだ知りませんでした。
アイヴィー王子の堂々とした不誠実な行動に、その婚約者であるウィード公爵令嬢ダリアさんはすでに怒り心頭で、彼女は怒りの矛先をアイヴィー王子ではなくデイジーに向けているということを。
嫉妬の炎をメラメラと燃やしているダリアさんが、この先でデイジーを待ち構えていることを。
「デイジー、社交には慣れたかい?」
「デイジー、意地悪をされていないか? 何かあったらすぐに言うんだよ」
ウィード公爵の夜会でも、デイジーの周りにはいつもどおり煌びやかな男性たちが集まっていました。
デイジーが可愛いという意見にだけは同意せざるを得ません。
今日のデイジーはすっきりしたデザインの淡い空色のドレスで、水の精霊のように清らかな佇まい。
触れたら泡となって消えてしまいそうな儚い美しさがあります。
「デイジー、今度うちで園遊会をやるんだ。ぜひ来てほしい」
デイジーとダンスを一曲踊ったアイヴィー王子殿下が、デイジーの手を握ったままで言いました。
王子の『うち』でやる園遊会とは、王宮で行われる園遊会のことですね。
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デイジーは笑顔をひくりと引きつらせました。
デイジーはアイヴィー王子殿下が嫌いですものね。
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「殿下、デイジーの手を放してください。淑女に対して失礼ではありませんか」
表情の無い顔でバジル様はアイヴィー王子殿下の行動を真っ直ぐに非難しました。
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「バジル、誰に向かって言っている?」
「アイヴィー王子殿下に言っています」
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「おそれいります、殿下……」
私は笑顔でアイヴィー王子殿下に言いました。
「妹は髪が乱れてしまっているようです。化粧直しをしてあげたく思います。しばし御前を失礼するご無礼をお許しくださいませ」
私がそう言うとデイジーもすかさず言いました。
「殿下、私、お姉様と一緒に休憩室へ行って髪を直してまいります」
「あ、ああ……。行って来るといい」
アイヴィー王子殿下はようやくデイジーの手を放しました。
◆
「もう……何なのよあの王子。……気持ち悪い」
私とデイジーは夜会の会場である広間から出て、付き添い女中たちを引き連れて休憩用に用意されている部屋へ向かいました。
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