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42話 信者
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「まあ、私に?」
デイジーは気さくな調子で小娘ミモザに答えました。
「何かしら?」
デイジーが問いかけると、小娘は意を決したように顔を上げ、瞳をキラキラと輝かせながら言いました。
「デイジー様! 私、ずっと、デイジー様を尊敬しておりました! デイジー様は平民のご出身なのに、いつも毅然としていて、堂々とお振舞いで、本当に格好良いです! 私、尊敬しています!」
おや、この小娘、なかなか解っているではありませんか。
もっとデイジーを褒めて良いのよ?
小娘はさらにまくしたてました。
「わ、私も、養女なのです。母は平民です。だから他のご令嬢たちに軽んじられていて、ずっと引け目を感じていました。でもデイジー様は、お母上が平民でいらっしゃって、しかも庶子でいらっしゃるのに、いつも女王のように堂々としていらして、お美しくて聡明で気品があって、ダンスもとてもお上手で、難しいステップでも軽々と優雅に踊っていらして、本当に凄いです! お生まれも境遇もものともせず、すべてにおいて優れ、堂々としていらっしゃるデイジー様は私の憧れです!」
神を崇めるような眼差しで小娘がデイジーに賛美の言葉を捧げると、今までしおれていたバジル様が急に水を得たかのように元気を取り戻しました。
「そう! そうなのです! よく解ります。デイジー嬢は凄い人です!」
今度はバジル様が熱く語り始めました。
「デイジー嬢は血筋も生まれも境遇も、すべてを超越している! 嵐にも負けず、凛として咲く野の花のように、その気高さは天然です! 平民出身でありながら王族を前にしても怯まず、堂々と振舞う姿は正に天然の王者!」
王族であるバジル様が、平民の母を持つ下位貴族の小娘と同じ目線で、デイジーを褒めるなんて。
バジル様は王子の称号を得られなかったことに、やはり引け目を感じていらっしゃったのかしら。
王子王女の称号は国王の直系の子孫に与えられる称号です。
しかしバジル様がお生まれになる数か月前に先代の国王陛下が崩御なさり、バジル様の伯父にあたる現在の国王陛下が若くして即位なさいました。
それゆえ、国王の甥としてお生まれになったバジル様は、先代国王の直系の孫たちの中で一人だけ王子の称号をお持ちではないのです。
バジル様は生き生きと目を輝かせ、普段の大人しく寡黙な姿がまるで嘘であったかのように、勢いのある早口でデイジーの賞賛を並べ立てました。
「デビュタント舞踏会でのデイジー嬢の威風堂々としたお姿を拝見して、私は感動しました! 皆の白い目も陰口もものともせず、凛として顔を上げ、堂々と歩む誇り高き『真珠姫』に圧倒されました!」
「あああ……!」
小娘が変な声を出しました。
なるほど、母親が平民なだけあって作法が未熟なようですね。
「デイジー様の伝説のデビュタント舞踏会! 地上に降臨した真珠姫! 黄金の髪の美の化身! 紫水晶の瞳の精霊姫! お噂だけ伺っております! この目で拝見したかった! 私は身分が足りなくて出席できなかったのです。くやしいです!」
真珠姫だの美の化身だの精霊姫だの、大げさね。
デイジーが一番美しかったことは事実ですけれどね。
この小娘、審美眼は確かなようです。
作法の未熟さは大目にみてあげましょう。
なかなか可愛い娘ではありませんか。
「……」
バジル様と小娘の、入り込む隙がない賛美の応酬の勢いに気圧されて、私もデイジーも微笑んだまま黙って聞かざるを得ませんでした。
ウィロウも黙っていますが、彼は微笑ましいものを見るかのようにしてバジル様と小娘を見守っています。
デイジーは気さくな調子で小娘ミモザに答えました。
「何かしら?」
デイジーが問いかけると、小娘は意を決したように顔を上げ、瞳をキラキラと輝かせながら言いました。
「デイジー様! 私、ずっと、デイジー様を尊敬しておりました! デイジー様は平民のご出身なのに、いつも毅然としていて、堂々とお振舞いで、本当に格好良いです! 私、尊敬しています!」
おや、この小娘、なかなか解っているではありませんか。
もっとデイジーを褒めて良いのよ?
小娘はさらにまくしたてました。
「わ、私も、養女なのです。母は平民です。だから他のご令嬢たちに軽んじられていて、ずっと引け目を感じていました。でもデイジー様は、お母上が平民でいらっしゃって、しかも庶子でいらっしゃるのに、いつも女王のように堂々としていらして、お美しくて聡明で気品があって、ダンスもとてもお上手で、難しいステップでも軽々と優雅に踊っていらして、本当に凄いです! お生まれも境遇もものともせず、すべてにおいて優れ、堂々としていらっしゃるデイジー様は私の憧れです!」
神を崇めるような眼差しで小娘がデイジーに賛美の言葉を捧げると、今までしおれていたバジル様が急に水を得たかのように元気を取り戻しました。
「そう! そうなのです! よく解ります。デイジー嬢は凄い人です!」
今度はバジル様が熱く語り始めました。
「デイジー嬢は血筋も生まれも境遇も、すべてを超越している! 嵐にも負けず、凛として咲く野の花のように、その気高さは天然です! 平民出身でありながら王族を前にしても怯まず、堂々と振舞う姿は正に天然の王者!」
王族であるバジル様が、平民の母を持つ下位貴族の小娘と同じ目線で、デイジーを褒めるなんて。
バジル様は王子の称号を得られなかったことに、やはり引け目を感じていらっしゃったのかしら。
王子王女の称号は国王の直系の子孫に与えられる称号です。
しかしバジル様がお生まれになる数か月前に先代の国王陛下が崩御なさり、バジル様の伯父にあたる現在の国王陛下が若くして即位なさいました。
それゆえ、国王の甥としてお生まれになったバジル様は、先代国王の直系の孫たちの中で一人だけ王子の称号をお持ちではないのです。
バジル様は生き生きと目を輝かせ、普段の大人しく寡黙な姿がまるで嘘であったかのように、勢いのある早口でデイジーの賞賛を並べ立てました。
「デビュタント舞踏会でのデイジー嬢の威風堂々としたお姿を拝見して、私は感動しました! 皆の白い目も陰口もものともせず、凛として顔を上げ、堂々と歩む誇り高き『真珠姫』に圧倒されました!」
「あああ……!」
小娘が変な声を出しました。
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真珠姫だの美の化身だの精霊姫だの、大げさね。
デイジーが一番美しかったことは事実ですけれどね。
この小娘、審美眼は確かなようです。
作法の未熟さは大目にみてあげましょう。
なかなか可愛い娘ではありませんか。
「……」
バジル様と小娘の、入り込む隙がない賛美の応酬の勢いに気圧されて、私もデイジーも微笑んだまま黙って聞かざるを得ませんでした。
ウィロウも黙っていますが、彼は微笑ましいものを見るかのようにしてバジル様と小娘を見守っています。
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