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49話 激動の三か月(4)
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貴族社会から、ダリアさんたちが消え、騎士オレガノ様も消えました。
しかしその他にも、王宮から消えた者たちがいます。
文官です。
王宮から文官たちが何人も解雇されました。
「王宮の派閥争いってやつですか?」
私が情勢を説明すると、デイジーはしかつめらしい顔で質問をしてきました。
「そうね。派閥争いという解釈で間違っていないわ。利権争いでもあるけれど」
解雇された文官たちは、ダリアさんの実家ウィード公爵家や、ルピナス様の実家オークリー公爵家の派閥の文官たちです。
「アイリスさんのお父様、ドラセナ侯爵が中心になって行っているのでしょう」
「ドラセナ侯爵ってそんなに凄い人だったのですか?」
「財務大臣だもの。権力を持っているの。それにね、奥様のお兄様が凄いのよ」
「誰ですか?」
「宰相ディセンドラ伯爵よ。宰相ディセンドラ伯爵は、財務大臣ドラセナ侯爵の義兄なの」
「うわ、がっちり政治権力ぅ!」
デイジーが蓮っ葉な言葉を漏らしました。
「デイジー、お言葉が乱れていてよ」
「あ……」
デイジーははっと気付いたように口に手を当てました。
そして言い直しをしました。
「アイリスさんは、とっても政治力があるお家のご令嬢だったのですね」
「そうよ。だからこそ第二王子シスル殿下との縁談があったの」
アイリスさんには、財務大臣ドラセナ侯爵の娘で、宰相ディセンドラ伯爵の姪という政治的背景がありました。
それゆえ第二王子シスル殿下と婚約していたのですが。
婚約破棄により、その政治勢力が手のひらを返し、潜在的な反王家となりました。
「お姉様、シスル王子殿下はお馬鹿さんだったのですか? その程度なら私にだって解ります。婚約破棄して敵に回したら、とっても大変なことになるって……」
「心強い味方が最初から与えられていたから、価値を解っていなかったのかもしれないわね」
宰相には、王宮の官吏の任命権があります。
宰相の助力があれば、財務大臣ドラセナ侯爵は、すべての官吏の進退に関われます。
ドラセナ侯爵には、当然ピオニーさんの父カポック伯爵とエリカさんの父クテナンテ伯爵も加担しています。
ウィードとオークリーの派閥の文官が消えた後に、ドラセナ、カポック、クテナンテの派閥の者が文官として優先採用されていました。
ドラセナ、カポック、クテナンテの三家は、がっちりと同盟して共闘していました。
「おそらくドラセナ侯爵が指揮を執っているのでしょう」
エンフィールド公爵家はドラセナ侯爵たち三家とは和解しておりましたので、つかず離れずの関係で、場合によっては影ながら支援をいたしました。
些細なことですが、支援の見返りとして私の従兄が一人、財務大臣の補佐官として採用されました。
補佐官となった従兄が言うには。
財務大臣ドラセナ侯爵は、ウィード公爵家とオークリー公爵家に対して、民草の生活を破壊しない程度を見極めて、地味な嫌がらせもしているようです。
ウィード公爵領とオークリー公爵領の灌漑や道路整備などの土木工事に対する王家の支援金の支払いをギリギリまで遅らせたり、支援の申請をなかなか認可しなかったり、厳しく会計の監査を行ったりしているのだとか。
特定の品の流通を操作して、ウィード公爵領とオークリー公爵領には供給を少なくして値を吊り上げるということもしているそうです。
またドラセナ侯爵たち三家は、娘たちがダリアさんと結託して過去に虐げた令嬢たちの家々を回って謝罪し、慰謝料を支払って和解もしました。
そして和解の場でさりげなく「ウィードの娘にそそのかされていなければ」「婚約者がきちんとエスコートしてくれていれば」と零して来ることも忘れなかったようです。
社交界の噂によれば。
切れ者のドラセナ侯爵の娘であるアイリスさんは、元々は真面目で控えめな令嬢で、下位の令嬢を虐げるような性質ではなかったそうです。
ところが第二王子シスル殿下と婚約して、シスル殿下にないがしろにされるようになると、アイリスさんは様子がおかしくなったのだとか。
そしてダリアさんと親しくなり、彼女らと一緒に下位の令嬢たちを虐げるようになったそうです。
アイリスさんはダリアさんと、同じく王子の婚約者という立場で、しかもないがしろにされているという似たような境遇です。
傷の舐め合いでもしたのでしょうか。
ダリアさんなんかに相談なさるより、切れ者のお父君に相談なさればよろしかったのに。
やり手の財務大臣であるドラセナ侯爵が、娘のアイリスさんをないがしろにしていた第二王子シスル殿下に対して、今まで何もしていなかったことが不思議なのですが。
アイリスさんはお父君ドラセナ侯爵には何の相談もせず、下手をすると何も問題ないだの、大丈夫だのと報告していたのかもしれませんね。
その一方でダリアさんには包み隠さず相談するなど、愚の骨頂です。
ピオニーさんとエリカさんにも言えることですが。
どうしてお父君に相談なさらなかったのでしょうね。
家長に相談すれば何らかの手を打ってくれたでしょうに。
彼女たちはそもそも問題を解決する気がなかったのかしら。
婚約者にないがしろにされた女性の全てが、必ずゴブリンに変貌するわけではありませんから、彼女たちはもともと何か風変りな性質を持っていらしたのかもしれません。
しかしその他にも、王宮から消えた者たちがいます。
文官です。
王宮から文官たちが何人も解雇されました。
「王宮の派閥争いってやつですか?」
私が情勢を説明すると、デイジーはしかつめらしい顔で質問をしてきました。
「そうね。派閥争いという解釈で間違っていないわ。利権争いでもあるけれど」
解雇された文官たちは、ダリアさんの実家ウィード公爵家や、ルピナス様の実家オークリー公爵家の派閥の文官たちです。
「アイリスさんのお父様、ドラセナ侯爵が中心になって行っているのでしょう」
「ドラセナ侯爵ってそんなに凄い人だったのですか?」
「財務大臣だもの。権力を持っているの。それにね、奥様のお兄様が凄いのよ」
「誰ですか?」
「宰相ディセンドラ伯爵よ。宰相ディセンドラ伯爵は、財務大臣ドラセナ侯爵の義兄なの」
「うわ、がっちり政治権力ぅ!」
デイジーが蓮っ葉な言葉を漏らしました。
「デイジー、お言葉が乱れていてよ」
「あ……」
デイジーははっと気付いたように口に手を当てました。
そして言い直しをしました。
「アイリスさんは、とっても政治力があるお家のご令嬢だったのですね」
「そうよ。だからこそ第二王子シスル殿下との縁談があったの」
アイリスさんには、財務大臣ドラセナ侯爵の娘で、宰相ディセンドラ伯爵の姪という政治的背景がありました。
それゆえ第二王子シスル殿下と婚約していたのですが。
婚約破棄により、その政治勢力が手のひらを返し、潜在的な反王家となりました。
「お姉様、シスル王子殿下はお馬鹿さんだったのですか? その程度なら私にだって解ります。婚約破棄して敵に回したら、とっても大変なことになるって……」
「心強い味方が最初から与えられていたから、価値を解っていなかったのかもしれないわね」
宰相には、王宮の官吏の任命権があります。
宰相の助力があれば、財務大臣ドラセナ侯爵は、すべての官吏の進退に関われます。
ドラセナ侯爵には、当然ピオニーさんの父カポック伯爵とエリカさんの父クテナンテ伯爵も加担しています。
ウィードとオークリーの派閥の文官が消えた後に、ドラセナ、カポック、クテナンテの派閥の者が文官として優先採用されていました。
ドラセナ、カポック、クテナンテの三家は、がっちりと同盟して共闘していました。
「おそらくドラセナ侯爵が指揮を執っているのでしょう」
エンフィールド公爵家はドラセナ侯爵たち三家とは和解しておりましたので、つかず離れずの関係で、場合によっては影ながら支援をいたしました。
些細なことですが、支援の見返りとして私の従兄が一人、財務大臣の補佐官として採用されました。
補佐官となった従兄が言うには。
財務大臣ドラセナ侯爵は、ウィード公爵家とオークリー公爵家に対して、民草の生活を破壊しない程度を見極めて、地味な嫌がらせもしているようです。
ウィード公爵領とオークリー公爵領の灌漑や道路整備などの土木工事に対する王家の支援金の支払いをギリギリまで遅らせたり、支援の申請をなかなか認可しなかったり、厳しく会計の監査を行ったりしているのだとか。
特定の品の流通を操作して、ウィード公爵領とオークリー公爵領には供給を少なくして値を吊り上げるということもしているそうです。
またドラセナ侯爵たち三家は、娘たちがダリアさんと結託して過去に虐げた令嬢たちの家々を回って謝罪し、慰謝料を支払って和解もしました。
そして和解の場でさりげなく「ウィードの娘にそそのかされていなければ」「婚約者がきちんとエスコートしてくれていれば」と零して来ることも忘れなかったようです。
社交界の噂によれば。
切れ者のドラセナ侯爵の娘であるアイリスさんは、元々は真面目で控えめな令嬢で、下位の令嬢を虐げるような性質ではなかったそうです。
ところが第二王子シスル殿下と婚約して、シスル殿下にないがしろにされるようになると、アイリスさんは様子がおかしくなったのだとか。
そしてダリアさんと親しくなり、彼女らと一緒に下位の令嬢たちを虐げるようになったそうです。
アイリスさんはダリアさんと、同じく王子の婚約者という立場で、しかもないがしろにされているという似たような境遇です。
傷の舐め合いでもしたのでしょうか。
ダリアさんなんかに相談なさるより、切れ者のお父君に相談なさればよろしかったのに。
やり手の財務大臣であるドラセナ侯爵が、娘のアイリスさんをないがしろにしていた第二王子シスル殿下に対して、今まで何もしていなかったことが不思議なのですが。
アイリスさんはお父君ドラセナ侯爵には何の相談もせず、下手をすると何も問題ないだの、大丈夫だのと報告していたのかもしれませんね。
その一方でダリアさんには包み隠さず相談するなど、愚の骨頂です。
ピオニーさんとエリカさんにも言えることですが。
どうしてお父君に相談なさらなかったのでしょうね。
家長に相談すれば何らかの手を打ってくれたでしょうに。
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婚約者にないがしろにされた女性の全てが、必ずゴブリンに変貌するわけではありませんから、彼女たちはもともと何か風変りな性質を持っていらしたのかもしれません。
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