かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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55話 親馬鹿

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「何が王命だ。格好つけおって。ただのモテない男のひがみではないか。見苦しいぞ!」

 父は国王陛下に対等な口調で言い返しました。

「な……。無礼だぞ……!」

 いきなり無礼な口調で、しかも訳の解らないことを言われて、国王陛下が戸惑っていらっしゃいます。
 私も意味が解らず少し戸惑っています。

「何が無礼だ。汚い手を使う奴など敬えるものか。フラれたからといって、王命まで使って無理やりデイジーを嫁にしようとは。モテない男はとんでもなく汚い手を考えるものだな。そんな卑怯な手を使うから女性にモテないのだ!」

 ああ、そういう意味ですか。
 デイジーに嫌われているアイヴィー王子殿下を、モテないと結論付けたのですね。
 解りました。

 父に「モテない」と断じられたアイヴィー王子殿下が悲愴な表情をなさっておられます。

「モテない息子のために、国王の権威まで使って強引に嫁取りをしようとはな。呆れて物が言えんわ。この親馬鹿め!」

 父の口から「親馬鹿」という言葉が飛び出しました。
 よく言えますね。

「お前の息子は、前の婚約者にも嫌われていただろう」

 アイヴィー王子殿下の前の婚約者は、私たちに葡萄酒を浴びせたウィード公爵令嬢ダリアさんです。

 父はアイヴィー王子殿下をビシッと指差して言いました。

「ウィードの娘とお前が一緒にいるところを見たことがないぞ。ウィードの娘も、国王の権力で強引に婚約者にされただけで、お前のことを嫌っていたんだろう」

「違う! ダリアは私を愛していた」
「嘘を吐くな。お前いつもウィードの娘に放置されていただろう。お前がそれで他の女に必死に粉をかけてるの何回か見たことあるぞ」
「逆だ! 私がダリアを放置していたのだ」
「そうか? お前、女に言い寄ってはフラれていると評判だったそうじゃないか」
「……っ!」

 アイヴィー王子殿下が言い寄った女性たちを、ダリアさんたちが影で虐めて、追い払っていたと聞いていますが。
 言い寄った女性がことごとく消えていたら、たしかに、女性たちがアイヴィー王子殿下から逃げたようにも見えるでしょうね。

「モテない男がついに王権を使って、嫌がる娘を強引に嫁取りしようというのか。見下げたものだな」

 父が小馬鹿にするようにそう言うと、愕然として言葉を無くしているアイヴィー王子殿下に代わって国王陛下が口を開きました。

「エンフィールド公爵、私はアイヴィーのためにデイジー嬢を差し出せと言っているのではない。これは国内を安定させるための政略だ。なればこそ、この政略結婚を王命とするのだ。公も貴族なら大義のための政略結婚は理解できよう」

 国王陛下は威厳をもってそう言いましたが、父は不遜な態度で答えました。

「王命と、娘の気持ち。どちらが重いかは言わなくても解るな?」

 お父様……?

 おそらく娘の気持ちのほうが重いとおっしゃりたいのでしょうが。
 貴族の価値観では、答えは逆ですわよ?

 相手を「親馬鹿」と罵倒した舌の根も乾かぬうちに、よく親馬鹿を晒せますね。
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