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12話 契約違反
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「コランダム子爵、契約を反故にするつもりかね?」
応接室で、話し合いが始まりました。
私とアルマンディン様との婚約を解消して、ルビーがアルマンディン様と婚約するための話し合い。
……と、私は父から聞かされていたのですが。
ガーネット伯爵は納得していないようでした。
「婚約者の交代は契約違反だ。了承できない」
ガーネット伯爵のその言葉を聞いて、私は内心でほっとしました。
ガーネット伯爵が拒否したら、アルマンディン様とルビーが結婚することはありません。
不謹慎ながら、私は内心で密かに喜んでしまいました。
私の状況が良くなったわけではありませんけれど。
父はルビーを嫡子にすると決めたのです。
アルマンディン様がルビーとの縁談を拒否しても、別の誰かがルビーと結婚するでしょう。
爵位を継ぐルビーとの結婚には、貴族の身分が付いてきます。
至らないルビーですが、爵位を継げない次男や三男の令息の中には、ルビーの手綱を握って貴族の地位を得たいと望む者はいるでしょう。
「契約の変更は認めない。コランダム子爵家の跡継ぎの変更も認めない」
ガーネット伯爵は淡々と言いました。
「コランダム子爵家の跡継ぎはサフィール嬢だ。アルマンディンはコランダム子爵家の嫡子サフィール嬢と結婚する。そういう契約だ。変更は一切認めない」
「な……っ!」
父は顔を歪めて反論しました。
「我が家の跡継ぎを決めるのは私だ。跡継ぎに関しては、そちらに口出しされる問題ではない」
「君は何か勘違いをしている」
ガーネット伯爵は泰然として言いました。
「爵位の継承を認めるのは、国王陛下だ」
それはそうです。
そもそも爵位は、国王陛下から与えられるものですから。
ですが、例えば犯罪者であるなどのよほどの瑕疵がないかぎり、現当主の意向通りに爵位は継承されます。
「コランダム子爵家が跡継ぎをルビー嬢に変更するというなら、こちらはルビー嬢が子爵にふさわしくない旨を国王陛下に奏上する」
ガーネット伯爵がそう言うと、父は少し頭が冷えたのか、余裕がありそうな態度で答えました。
「何の根拠もない異論が認められるものか。勝手になされよ」
「考えを改める気はないと?」
「いかに伯爵家といえど、他家の後継者問題に口出しするのは越権行為でしょう」
あちらは伯爵家、こちらは伯爵より格下の子爵家です。
しかし我が家があちらの家から援助を受けているわけではありませんから、不当な要求はお断りすることができます。
「念のために言っておくが、この件に関してはタイタナイト公爵家からも賛同を得ている」
「なんだと?!」
父が顔色を変えました。
タイタナイト公爵家というのは、ルビーの縁談の相手だったスフェーン様のご実家です。
当然タイタナイト公爵夫妻は、ご子息のスフェーン様とお見合いをしたルビーを知っています。
「ルビー嬢を後継者に指名するなら、我がガーネット伯爵家とともにタイタナイト公爵家も、ルビー嬢が爵位を継ぐにふさわしくない人物であることを国王陛下に奏上する。心に留めておきたまえ」
ガーネット伯爵がそう言うと、父は苦虫を嚙み潰したような顔になりました。
――そのとき。
「スフェーン様がまたルビーに意地悪しているんですかぁ?!」
ルビーが叫びました。
ガーネット伯爵と、コランダム子爵である父との会話に、娘でしかないルビーが割り込みました。
無作法で無礼です。
「伯爵様、意地悪なスフェーン様となんか付き合わないでください。あの人とーっても意地悪なんですぅ!」
ルビーは傍若無人にまくしたてました。
私は、少し、意識が遠くなりました……。
応接室で、話し合いが始まりました。
私とアルマンディン様との婚約を解消して、ルビーがアルマンディン様と婚約するための話し合い。
……と、私は父から聞かされていたのですが。
ガーネット伯爵は納得していないようでした。
「婚約者の交代は契約違反だ。了承できない」
ガーネット伯爵のその言葉を聞いて、私は内心でほっとしました。
ガーネット伯爵が拒否したら、アルマンディン様とルビーが結婚することはありません。
不謹慎ながら、私は内心で密かに喜んでしまいました。
私の状況が良くなったわけではありませんけれど。
父はルビーを嫡子にすると決めたのです。
アルマンディン様がルビーとの縁談を拒否しても、別の誰かがルビーと結婚するでしょう。
爵位を継ぐルビーとの結婚には、貴族の身分が付いてきます。
至らないルビーですが、爵位を継げない次男や三男の令息の中には、ルビーの手綱を握って貴族の地位を得たいと望む者はいるでしょう。
「契約の変更は認めない。コランダム子爵家の跡継ぎの変更も認めない」
ガーネット伯爵は淡々と言いました。
「コランダム子爵家の跡継ぎはサフィール嬢だ。アルマンディンはコランダム子爵家の嫡子サフィール嬢と結婚する。そういう契約だ。変更は一切認めない」
「な……っ!」
父は顔を歪めて反論しました。
「我が家の跡継ぎを決めるのは私だ。跡継ぎに関しては、そちらに口出しされる問題ではない」
「君は何か勘違いをしている」
ガーネット伯爵は泰然として言いました。
「爵位の継承を認めるのは、国王陛下だ」
それはそうです。
そもそも爵位は、国王陛下から与えられるものですから。
ですが、例えば犯罪者であるなどのよほどの瑕疵がないかぎり、現当主の意向通りに爵位は継承されます。
「コランダム子爵家が跡継ぎをルビー嬢に変更するというなら、こちらはルビー嬢が子爵にふさわしくない旨を国王陛下に奏上する」
ガーネット伯爵がそう言うと、父は少し頭が冷えたのか、余裕がありそうな態度で答えました。
「何の根拠もない異論が認められるものか。勝手になされよ」
「考えを改める気はないと?」
「いかに伯爵家といえど、他家の後継者問題に口出しするのは越権行為でしょう」
あちらは伯爵家、こちらは伯爵より格下の子爵家です。
しかし我が家があちらの家から援助を受けているわけではありませんから、不当な要求はお断りすることができます。
「念のために言っておくが、この件に関してはタイタナイト公爵家からも賛同を得ている」
「なんだと?!」
父が顔色を変えました。
タイタナイト公爵家というのは、ルビーの縁談の相手だったスフェーン様のご実家です。
当然タイタナイト公爵夫妻は、ご子息のスフェーン様とお見合いをしたルビーを知っています。
「ルビー嬢を後継者に指名するなら、我がガーネット伯爵家とともにタイタナイト公爵家も、ルビー嬢が爵位を継ぐにふさわしくない人物であることを国王陛下に奏上する。心に留めておきたまえ」
ガーネット伯爵がそう言うと、父は苦虫を嚙み潰したような顔になりました。
――そのとき。
「スフェーン様がまたルビーに意地悪しているんですかぁ?!」
ルビーが叫びました。
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無作法で無礼です。
「伯爵様、意地悪なスフェーン様となんか付き合わないでください。あの人とーっても意地悪なんですぅ!」
ルビーは傍若無人にまくしたてました。
私は、少し、意識が遠くなりました……。
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