やることの無い異世界で。

椚田雷兵衛

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序章 目覚めと始まり

説明、後、転生。

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 少々喉が痛い。本気で声を出し過ぎたようだ……。
 喉をうんうん鳴らしながら俺は我に返って疑問をぶつけた。
「新しい世界って……つまり異世界とかいうやつ!?」

 「うん。そうよ」

 落ち着いた彼女が怖い。
 このご時世、何故か異世界転生だとかはよく聞く話になってしまった。まさかこの俺が巻き込まれるとは思わなかった……。

 「大丈夫よ。その世界は超がつくほど平和。よく聞く魔物とかはいないはずだし、平和な暮らしが出来るはずよ!」

 「ほ……本当かよアルテミア……」
 アルテミアの必死さから察するに、本当の様だった。
 が、次の言葉で――
「え、ええホントよ……?」
 ちょっと怖い。
アルテミアは必死に訴える顔で話し続けた。

 「言わば、やることの無い異世界!平和に、のんびり!暮らせるのよ!それにーー」

 いきなり甘い顔になって顔を寄せてきた。

 先程までのアルテミアとは様子が違った。ギャップ萌えとかいう奴だろうが、すごいかわいい。
 い、息がかかる。何だか緊張するけど嫌ではなかった。むしろ心地いいような……

 「ハルトと私は主従の関係。もし何かあれば私が絶対に守るわ。でも……もし私が成功したら……ちゃんと褒めてね……」

 ドキドキする。
 かつて俺は女の子にこんなに迫られたことはあっただろうか。思い出した。俺は童貞だった。

 「わ、分かったよアルテミア。異世界に行く」
 俺は説教に折れた子供のように異世界転生の覚悟を決めた。
 「うん!頑張ろうね。ハルト」
 アルテミアは説教が成功した親のように俺を宥めた。

 「じゃあ……動かないでね」

 混乱していて周りを見られていなかったので、アルテミアの言葉をきっかけに今頃辺りを見渡した。
 空は暗く、紺というよりは黒に近い。
 アルテミアの後ろには木が何本か見える。
 辺りには水のにおいが漂う。俺たちは湖の畔にいた。

 場所的には十分異世界だったが、俺は新たな旅立ちに向け、心の準備をした。

 「いくよ……」
 俺とアルテミアに眩い光が纏い、辺りがぱあっと明るくなった。
 体が浮いてふわふわする……。

 俺は目を閉じると同時に意識を失ってしまった。

□□□□□□□□□□□□□□□

 目を開けると、異世界だった。

 「……やっぱり、この中世感はお約束なのか?」

 隣にはアルテミアが羽をパタパタさせていた。
 あれ?この人羽あったっけ、と思ったがそう言えばアルテミアはエルフだった。
「わ!着いたよハルト」

 羽と口調でわくわくしているアルテミアの目は、わくわくだけでは無いような感じがした。

 すると、誰かが俺たちに話しかけた。

 「ようこそ!光り輝く町、ルミナヘルムへ!……また会えたね……ハルト」

 また会えたねとは……?
一瞬そう思ったが、この子が誰かはすぐに分かった。
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