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第二章 一週間で光を探せ

再び出会い、そしてスタート。

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 ディーネは俺やアルテミアより、ずっと大人びた人だった。立ち振る舞いは淑女という言葉がそのまま具現化されたように美しく、大人の女性そのものだった。そんな彼女を前に俺は我を失いかけた口調で、
「だ、大妖精?」
とすっとぼけたような声で思ったことをそのまま口から出した。
 これは俺の悪い癖だ。いや、俺は純粋なのだ。と自分の駄目なところに目を瞑りたくなった。ディーネはそんな俺にも丁寧に説明をしてくれた。

 「大妖精というのは、簡単に言うと4人の柱妖精の下にある4人の事です。柱妖精は光、言葉、土、そして風の4つですが、大妖精は水、そして火、木、闇の4つです。この8つの関係が、妖精系と呼ばれています」
 ディーネの説明はすんなりと頭に入った。かと言って、アルテミアやノルンの説明が分かりづらかった訳ではないが……。
 妖精系の存在を知ってから、他の妖精やその契約者たちに会いたい気持ちが益々大きくなってきた。そこで、
「ディーネの契約者は誰なんだ?」
と訪ねた。その途端…………

 「はっはっはー! 我がディーネの契約者とは私の事よぉ! 水属性にして唯一無二の妖精使い、私の名はエレノア・リリル! よろしくなのだー!」
と、ディーネの背後から、女の子が現れた。
 背は俺の胸くらい、髪は青に白のアッシュがあり、人の耳がある所は隠れている。目は落ち着いた赤色だった。そして何より、頭に2つのフサフサ、もふもふ、ふにふにとした耳がちょこんと生えていた。これが獣耳というやつか……全く……異世界様様である。
 「ハルト……と呼んでいいんだな? 全くー……そんなに私の耳が気になるかー? 触ってもいいんだぞ……? ハルト?」
 随分と大きな態度の少女だったがそこがまた可愛らしさを引き出していた。
「じゃあー! お言葉に甘えて触らせて貰うぞ! エレノア!」
俺は半ば強引にエレノアの耳を触らせて頂いた。
「あぁん! ちょっとぉー!」
 小さな「んっ」だの「あっ」だのという声を聞きながら、俺はエレノアの獣耳を堪能した。
 言葉に出来ないほどのふわふわ、極上のもふもふを手でめいっぱい触った。嗚呼、幸せ。人差し指で細く撫でる。中指も加えてやや強く撫でる。薬指も加えた3本で、小指、親指、と全指で愉しんだ。
「ちょ、ちょっとぉ! やめ、やめて…… はぅゎぅぅぅ」
これ以上は流石にまずい気がしたのでエレノアの声を合図に中断した。
 「……っ、もう! からかうのもこれくらいにするのだっ!」
その叫びに近い大きな声で我に返った。
 俺とエレノアだけだった空間はみんなのいる場所に変わった。俺は急に気まずくなり、アルテミアとディーネの方に目をやると、あの2人も獣耳っ娘に目を光らせ涎を垂らしていた。
 
 獣耳っ娘は可愛い。それが結論。

 「……っと、そろそろ目的の方に移らなきゃだね」
とアルテミアが切り出した。
「目的?」
と俺が聞き返す。もう何度もやったやり取りのように感じてきた。
 「光の妖精、ウルーナを探しに行くこと」
アルテミアも慣れた答えだった。
遂にアルテミアがここに来た意味が動き出すんだ、という俺の心の中の声が聞こえた。
 パーティは4人、俺とアルテミア、エレノアとディーネだ。
 アルテミアがこの世界でしたいことは、俺がこの世界に来た意味にもなる、と、俺は契約者として、アルテミアに献身していこうと心に決めた。

 「まずは、情報集めからね」
アルテミアがたくましい目で言った。
「そうね、まずは聞いて回ることが大事かもしれないわね」
ディーネは納得の表情で頷いた。
「私もウルーナ探しに協力してやろう! そう、聞き込みは大事なのだ!」
エレノアはハキハキと元気に言った。
 俺はみんなの顔を見て、一息ついてから、

 「さあ! 頑張ろうぜ!」

と言い放った。周りから

 「おー!!!」

という張り切った声が俺の頭と体にこだました。
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