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第二章 一週間で光を探せ

人探しは基本から。

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 俺たちはノルンを失ってしまったときと同じように、ディーネとエレノアの2人を加えた4人でルミナスをくまなく聞き込み回った。
 が、前回同様、そうすぐに手がかりがすぐに手に入るわけでもなく、気づけば少し暗くなってきてしまった。
 
 「ウルーナ……? 聞いたことない名前だな……。妖精のことなら教会に行った方がいいんじゃないかな?」
万事屋の店主のおじちゃんがそう教えてくれた。
 ルミナスは『光り輝く町』だけあって、人々の人情も光り輝いてるな……。と我ながら綺麗なことを心の中で呟いてみた。そんな素敵なおじちゃんには名前を聞かなくては……!
 「ありがとう! おじちゃん。その……名前、教えてくれないか?」
 おじちゃんはにっと笑ってから、
「俺か? 俺はローレンス・バーカーって言うんだ。兄ちゃんは?」
 俺はにっと笑い返してから、
「俺はハルト。風見ハルトだ。みんなに合わせるならハルト・カザミだな! よろしく!ローレンス!」
と、元気に言った。

 俺以外の3人もみんな自己紹介して、万事屋のローレンスとは割と仲良くなった。ローレンスは、
「これから教会に行くんだったら危険だからやめといたほうがいいと俺は思うがな、お前さんたちは時間がないんだろう?」
 アルテミアは頷いた。そんなに急がなくても良いのに、と俺は思った。実際のところアルテミアは焦っているだけのような気もしてきた。自分と同じ、柱妖精に再開を果たすため……。
 「じゃあ仕方ねぇな。ここで武器を買ってけ。1人1本だ。ここら辺の敵には一級魔法までは通じない。上級魔法が使えるプリーストは見た所居なそうだしな。」
 アルテミアは柱妖精ということを隠していたので、ここはローレンスに従い、武器を買った。
 「ん? なんだ。2人は武器持ってるのか。じゃあお前さんたち2人はお買い上げだな。」
 見ると、ディーネはなんか強そうな弓、エレノアはなんか強そうな杖を持っていた。
 俺たちは武器を買った。
 アルテミアは血が騒いで弓を買い、俺は主人公属性を存分に発揮して剣を買った。
「さあ、お前ら。くれぐれも気をつけてな。死ぬなよ!」
 ローレンスの熱い見送りの言葉で俺たちは万事屋を後にした。

         〇       
 
 「うぅ! 何なんだこいつら!」
 俺は足元に大量にしがみついた赤目のネズミを足をぶんぶん振り回して追い払おうとした。すると
「《ピュリフィケーション》!」
大きなエレノアの声が聞こえてきた。
 みるみる足元のネズミが溶けていき、俺の足元とフットワークは軽くなった。
 「ありがとう、エレノア」
俺はエレノアに感謝をした。
 「うむ! 感謝してしかるべきだぞーハルトー!」
相変わらずの大きな態度だ。まあ、そこがまた……。

 教会への道のりin夜は壮絶な戦いだった。 
 先程、文字通り俺が足元をすくわれていた赤目のネズミは、レッドアラッドという魔物だったのだが、そんなのはまだかわいいペットで、強烈な蹴りをかます鹿のような魔物、ククチェルスや、上から爪で、辛辣かつ殺意のある引っ掻きを披露してくる、ファルコという鷹のような魔物など、強い魔物に溢れていて、夜道での戦いは熾烈を極めた。
 
 すると……
 道の奥から何か大きな物体がのっしのっしとこちらに歩いてきた。
 やばい、やばいぞ。
 俺はみんなと顔を合わせつつ、少しずつ後ずさりをした。
 「……っ! な、なんだよ……あれ?」
俺は恐怖の感情を隠しきれなかった。
 ディーネが震える声を抑えた声で、
「あ、あれはルミナスの端にいると言われる、バンシーという魔物……というかアンデッドです。今の私たちには絶対に敵わないので、逃げたほうが……いいです!」
 ディーネがそう言い終わったころ、バンシーはもうすぐそこまで来ていた。
 アンデッドといえばラノベとかゲームだと、通常攻撃はあまり通用せず、特攻性のある魔法とかの方が効く魔物だったような……。
 おい、マジか。
 俺はウィンドしか使えんぞ。
 俺がばたばた慌てていると、アルテミアがエレノアの杖を持って前に出てきた。
 「私に任せて」
と頼りになるセリフを吐いた後、バンシーに向かって、
「はぁぁああ!《セイクリッド……》」
まで言ったところで、バンシーの咆哮が俺たち目掛けて飛んできた。
 その途端、アルテミアは後ろにくるっと向き返し、俺の方へ向かって
「《……アルター》!!!!」
と放った。
 「えっ……ちょ」
俺がそう言うと同時に俺の体と剣が光りだし、俺は金色を纏った。
 俺にはアルテミアがどういう意図を持っていたのかわからないが、俺は一か八か俺の考えに掛けてみた。
 「はあああ!行くぞ!《ウィンド》!!!!!!」
 俺の剣はみるみる宙へ浮き、ある程度上がったところで、バンシーめがけて猛烈なスピードで飛んでいった。
 セイクリッド状態になっている俺の剣は、アンデッドのバンシーには一撃級の攻撃だったようだ。
 バンシーは大きな咆哮をあげ、浄化されていった。ひとまず、平和が訪れた。
 
 「凄いね! ハルト。よく思いついたね」
アルテミアが俺を褒めた。
 少々舐められているような気もしたが、バンシーがいなくなったので良かった。
 実際のところ、俺が生身で近づいたら絶対に危ないと思い、ウィンドを使って遠距離から攻撃したという訳なのだが、この考えのもとは俺のチキンが発動されてしまったからであり、俺としては少し心残りがある。
 そういえば、アルテミアもバンシーの叫びの後に後ろを向いたが……
「なんで、あの時急に俺に魔法をかけたんだ?」
アルテミアは、
「いや……ちょっとビビっちゃった」
 アルテミアは俗に言うテヘペロ顔をして見せた。
 アルテミアも俺も、大事なところで怯んでしまう弱点は直していかないと、と心に喝を入れた。
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