無字の後宮 ―復讐の美姫は紅蓮の苑に嗤う―

葦原とよ

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第1章 獣の檻

第22話 初夜 6

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「……っ! ああぁっ!」

 思わず口を離してしまって声がこぼれたが、そんなことを気にする余裕は翠蓮すいれんにはなかった。今しがた体を襲った感覚を受けいれることに精一杯だというのに、渓青けいせいは手を休めることなく攻めたててきたからだ。

「あっ! あ、あっ……ん、んぅ……っ!」

 ぐちゃぐちゃと卑猥な音が寝台に立ちこめる。翠蓮の息は荒く、体は大きく上下した。大海の中で波に翻弄される小舟のように、翠蓮は渓青の指に翻弄される。必死になって渓青の腕に縋りつき止めさせようとするが、指に力が入らず腕の表面を軽くひっ掻くだけになってしまった。

 体の中で嵐が暴れている。渓青が言った「強く」とはこういうことかと、翠蓮は理解はしたが、体から与えられる衝撃に理性がついていかなかった。

「ん、あっ! け、渓、青っ……ああぁっ……!」
「気持ちいいですか?」

 そう問われても答える余裕などないし、これが気持ちいいという感覚なのかなんなのか、翠蓮には分からなかった。ただ脚にぎゅっと力を入れて耐える。だというのに渓青の指はさきほどよりも激しく翠蓮の蜜壺をかき混ぜる。聞くに耐えない水音と、自分自身の甘ったるい声とが翠蓮の耳をも犯した。

 激しく抜き挿しされる渓青の手は、次第に手のひらで陰核を打ちつけるようになってきた。同時にそんなことをされてしまうと、翠蓮の体はもはや爆ぜる寸前になる。

「け、渓、せっ……も、駄目っ……!」
「……達しても構いませんよ」

 そういうと渓青は今度は指を抜き挿しさせるのではなく、ぐっと深く挿しこむと指を折りまげ、翠蓮を狂わせる箇所を小刻みに強くゆすりはじめた。陰核も手のひらで押しつぶされて一緒くたに擦りあげられる。

「ひ、うっ……や、あっ! あっ、ああっ! やぁっ、だめぇ……っ‼︎」

 全身を貫くような衝撃に、翠蓮はがくがくと体を揺らして限界を迎えた。はっはっと浅い息を繰り返し、暴れだしたくなる体をなんとか鎮めようとする。自分の体になにが起こったのか翠蓮は分からなかった。翠蓮という水瓶はもう水で満たされていたのに、さらに水を注がれつづけ、注がれる水の勢いに耐えかねて割れてしまったような、そんな感覚だった。

 もう翠蓮はこれだけで精一杯だった。渓青は少し経って翠蓮が落ち着いたのを見ると、手で優しく髪を梳いた。気づけば髪は寝台の上でもつれてしまっている。そういえば刺激に耐えかねて頭をぱたぱたと振っていた記憶がある、と翠蓮は思いだし、そして今ごろになってとんでもない羞恥が襲ってきた。
 ゆっくりと起き上がり、ぐしゃぐしゃになった寝衣をかきあつめてなんとか前だけを隠す。渓青の顔はとてもではないが直視できなかった。

「け、渓青……あの……」

 はしたない姿を見せてしまってごめんなさい、そう言おうとしたのだが渓青はそのまま翠蓮の頭をゆっくりと撫でると笑みを浮かべて言った。

「とてもよく出来ましたよ。もしかしてとは思いますが……達するのも初めてでしたか?」
「……達する?」
「……やはり……。 先ほどのように、快感が極まって……そうですね、弾け飛ぶというか、破裂してしまうような感覚です。男でしたら射精という分かりやすい現象になるのですが、女性の感覚は私も分かりませんので推量でしかないのですが」
「でしたら多分……なにかが徐々にせり上がってきて、壊れてしまうような……」
「ああ、良かった。ならばおそらくきちんと絶頂を迎えられたのだと思います」

 渓青は出来のよい生徒を褒めるように言うが、翠蓮は恥ずかしさと少しばかりの恐ろしさでいっぱいだった。

 琰単えんたんの時も、皇帝の時もこんな感覚にはならなかった。その割には二人とも射精していたので、男女の絶頂とは時を同じくするものではないのだと気づく。今も翠蓮は汗まみれで全身を火照らせていたが、渓青は衣服の乱れ一つなく、余裕そうに笑っている。

 それは、閨房けいぼうでは必ずしも双方が同時に快感を得られるわけではないということを翠蓮に理解させた。琰単に犯されたとき、翠蓮は快感など微塵も感じなかったのに琰単は達していた。ならば、翠蓮が今、一方的に渓青に翻弄されたように、翠蓮が快感を得ずとも相手だけを絶頂させることは可能ではないのか、と。

 しばらく考えこんでいた翠蓮だったが、渓青がなにやらごそごそと寝台の下から箱を取り出しているのに気づいた。

「……渓青、その箱は?」
「箱の中には男根を模したものが入っております。狎具こうぐと申しまして、宦官が女性と交わる際によく使用するものです」

 翠蓮はもはや一仕事終えた気分になっていたのだが、それを聞いてそういえばまだ本来の目的には到達していなかったのだと、軽い絶望に襲われた。



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