23 / 75
第1章 獣の檻
第23話 初夜 7
しおりを挟む翠蓮が今夜の本来の目的を思い出して呆然としている中、渓青は黒漆の小箱を開き、中に入っていた布に包まれた棒のようなものを何本か丁寧に取り出した。
翠蓮が手を伸ばして恐るおそる包みを開くと、そこには白くつるっとした表面の男根の先端が現れた。先日はまじまじと見たわけではないが、なにやら線やら段差がきちんと設けられていて、なんというかこだわりを感じる作りになっていた。
「これは……磁器?」
「はい。こちらは白磁ですね。今回のために作らせました。他に牛の角や、木、玉などを用いることもありますので、今後好みがございましたら遠慮なく仰ってください」
好みといわれても、そんなに違いなどあるのか、と翠蓮は疑問に思いながら包みの残りをぱらりと開き、そして声にならない悲鳴をあげた。
「……っ! け、渓青……っ」
「はい、なんでしょうか」
「こ、これはいくらなんでも……その、大きすぎじゃありませんか。こんなの……絶対に入りません」
「え? こちらはやや小さめで作らせたのですが……」
「無理、絶対に無理です!」
「ちなみにこちらが標準的なもので……あとこれは元の私の大きさです」
「…………っ‼︎」
渓青が二つの包みを開いて、翠蓮は竦みあがった。そこには渓青の言葉どおり、さきほどのものよりも一回り大きいものが一つ、そして……「渓青のもの」だというそれはもう、翠蓮にとっては凶器にしか見えなかった。
翠蓮は恐ろしくなって寝衣を握りしめて渓青から遠ざかり、ふるふると首を振る。そんな翠蓮に渓青はため息を一つついて言った。
「翠蓮様……東宮殿下も皇上殿下も受け入れられたのですから、これも入りますよ」
「そんな大きいの無理です! だって二人とももっと小さかったもの……!」
翠蓮が思わず叫んだ言葉に二人ともしばし固まった。ややあって呆然とした渓青が、半信半疑の様子で尋ねてくる。
「……翠蓮様、不躾なことをお聞きしますが……お二人ともさきほどのようにじっくりと前戯をされたわけではないのですよね?」
「……ええ。唾や潤滑剤のようなもので指を濡らして、少しかき混ぜられただけで挿れられました。でも痛くなかったし、血も出ませんでした」
「で、翠蓮様は達することもなく、一方的に精を吐き出された、と」
「そうです。多分時間にしたら……数分くらいでしょうか。だからさっきの渓青は……その、永遠のように思えました」
翠蓮がそういうと、渓青は神妙そうな顔をしたあと――破顔して急に笑いはじめた。
「け、渓青?」
「くっ、くくっ……これは傑作ですね」
「ど、どうしたのですか?」
「皇上陛下はまぁ、お年のこともありますが……東宮殿下は間違いなく短小で早漏ですね」
渓青の嘲るような表情を見て、翠蓮もそれがどういうことなのかピンときた。
「それは……一般的に見て、男性にとってはあまり好ましくない状態、ということですか」
「そうですね。大きさに関しては、大きすぎるのもどうかと思いますが、大体男の自尊心とか見栄とかに直結してますね」
「……東宮殿下はご自分でご自分のものを「大きい」と仰っていましたが……」
「おそらくご存じないのでしょうね、他のものを。そして周りの宦官や妃嬪たちも身分をはばかって言えない……と」
翠蓮も謎が解けた気分だった。婚姻の支度をしてくれた侍女たちからは、破瓜の際は痛いだとか出血するだとか散々聞かされていたのだ。だからこそ藍月漿も勧められた。
処女を散らされたときに痛みもなかったし血も出なかったことは、不思議だとは思っていたがあんな異常な状況でもあったので、怪我の巧妙くらいにしか感じていなかった。そこにまさかこんなからくりが隠されていただなんて、初心者の翠蓮にはなにも分からなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる