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第1章 獣の檻
第38話 盛られた薬
しおりを挟む今晩の翠蓮の夕餉には媚薬が盛られていた。翠蓮の食事はいつも渓青がひそかに毒味をしているので、それは事前に察知できたのだが、おかげで翠蓮は琰単の前で「媚薬を盛られた」演技をしなければならない羽目に陥った。
翠蓮は媚薬を服用するとどうなるのか、と渓青に聞いた。すると渓青は「実際に試してみましょうか」とにっこりと笑い、翠蓮の秘部に「乱月漿」を塗りたくったのだ。
経口摂取のものと違って、塗るだけですから効き目はそんなに長続きしませんよ、などと渓青に言われ、散々に弄ばれた。
渓青の指が触れただけで刺すような快感が体を走り、敏感な箇所はじくじくと疼く。顔は火照り、涙が止まらず、体が震えるたびに愛液がぼたぼたとこぼれ落ちた。
渓青の手で何度も絶頂を迎え、気が狂いそうになるが体の飢えが止まらない。渓青に縋りついて、もっと大きなもので中を滅茶苦茶にして欲しいと懇願した。
ようやく迎え入れた渓青のものと同じ大きさの狎具で奥を抉られ、声にならない悲鳴をあげる。渓青の逞しい背中に爪を立て、口づけをねだった。熱に浮かされた中で渓青を見つめると、同じように滲む瞳の渓青が小さく囁いた。
「毒味が効いてしまったようです」と。
それから翠蓮は琰単が来ると聞いている時刻の直前まで、渓青に激しく抱かれつづけた。途中で渓青の言葉どおり媚薬の効果は切れていた気がするが、そんなものはお構いなしに貪られた。
おかげで琰単がやって来たとき、翠蓮はもう涙目で気怠げな状態になっていたのだが、それがさらに琰単を煽ったらしい。
翠蓮は次第に「なんでもいいから休みたい」としか思わなくなっていた。半分演技も忘れて呆然とした状態で抱かれていたのだが、琰単はそれをいいように解釈したらしい。
気をやりすぎて声も出なくなったかとか、気絶するほど良いかとか、なんとか言っていた。体力だけは有り余っている能無しめ、と翠蓮が内心毒づいたのは秘密だ。
「……練習の甲斐あって、殿下は随分と興奮されていたようですよ……もっとも、本当に媚薬を盛られていたのは殿下ですけれどね」
渓青が嗤うのに、翠蓮はのろのろと顔を上げた。
今日、翠蓮の中に仕込まれていたのは「濫月漿」。
渓青が実家に依頼して新しく開発したものだった。「乱月漿」は女の方に作用する媚薬だが、「濫月漿」はそれを舐めとった男の方に効果が出る。
「おそらく今回で妊娠するでしょう。枕元の茶にも精力剤と、精液を多く分泌させる薬を入れておきましたから」
静かに笑う渓青に、今度からは精力剤はいらないと翠蓮は言おうと思った。あの体力馬鹿は、出すものさえ出して、それが濃ければ十分だ。
翠蓮は渓青に頼んで琰単を手引きする日を出来るだけ妊娠しやすい日に定めた。
そして渓青には「妊娠」の準備を整えるように依頼し、少し前から体を整え始めていた。
そろそろ第一の復讐が成る、と翠蓮はひそやかに嗤った。
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