レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第6章 アナザージャパン編

第65話 鏡花

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「うふふっ、ありがとう。私を選んでくれて」

 満面の笑みで迎えてくれたのは鏡花だ。

「いえ、警察のほうも大変そうだとは思うんですけどね。少し思う所がありまして。それに、あなたのお話っていうのも、さっきの怪物がらみ、なのでは?」

「いきなりそんなところから話すの? もう、せっかちねぇ。もう少しゆっくりお互いを知ってからでもいいんじゃない?」

 車は狭い二人乗りのスポーツカー。中は彼女の香りで充満しており、少しでも気を抜けば、思考がまとまらなくなりそうだ。

「お互いを知るって? 自己紹介でもしましょうか?」

「あら、律儀なのね。じゃ、私から。私は鏡花。泉が言ってた通り、元モデルをやっていたの。今は関東妖激団の団長なんてやらされてるけれど……。正直、やりたくないのよね」

「驚いた。団長だったんですか。でもやりたくないとは?」

「さっきも話したと思うけれど、私、能力者だからって担ぎ上げられたけれど、争いごとなんてしたくないのよ」

「あの過激な連中を仕切ってたのに?」

「うーん、アナタにはこっそり教えちゃうけれど、あの連中は騒ぎたいだけなのよ。だからまとめて処分、ってところ。だから助かっちゃった。アナタのおかげで死者が出なかったんですもの」

「怖いなぁ。いらないから突っ込ませたんですか? 全く、美しいバラにはトゲがあるってところか」

「あら、美しいだなんて。嬉しいこと言ってくれるのね」

「俺はソウ。さっきの泉さんに連行されて、警察官にならないか? って誘われてたんですよ。でも、なんだか状況がよくわからなくて」

「そうだったの。まだ警察にはなってないのよね?」

「えぇ、話をしてる途中で、あの蛇が出てきちゃって……」

「なら、ちょうど良かったわ。私のお手伝い、してもらえないかしら? もちろん、それなり報酬は用意するわよ?」

「お手伝い? 何をするんです?」

「さっきも少しだけ言ったと思うんだけど、勾玉を回収して欲しいの。あれは、黄泉への通り道を塞ぐ大事なモノ。奴らが奪ったおかげで、大蛇みたいなバケモノが黄泉からこの世界に送られてきてしまうわ。今ならまだ間に合う。お願いできないかしら?」

「簡単に言いますけれど、どこにあるのか知ってるんですか?」

「えぇ、もちろん」

「ある場所は知ってるのに、取りに行かないってことは……」

「えぇ、日本でも最大級の警戒が採られているわ。残念だけど、私の力では……」

「ま、アナタの力だけでは難しいでしょうね」

「……っ! 気付いてたの?」

「えぇ」

 この女、鏡花は始めて会った時から、魅了の術を使っていた。俺から目を離さなかったのは確実に魅了の術を深めたかったからだろう。無駄に会話を長く引っ張って、気付かれないようにしながら。

 俺はバリヤーを張っていたため、魅了は効かなかったのだ。それにバリヤーが反応していたため、魅了に気付くことが出来た。以前にモンスターを操っていたワーケインが似たような技を使っていたな。

「へぇ。じゃ、私の術が効いたフリをして、わざとついてきた。でもどうして?」

「警察のやり方が強引すぎて気になってたんですよ。天下の公務員ですよ? それが、安定した給料の他、歩合で報酬も出すなんて、おかしいにもほどがある。それに、あなた方の目的も気になりましてね」

「ふふっ、怖いのね。そこまで気付いてるなんて……。でも、さっき言った、勾玉の話は本当よ。これだけは信じて欲しい」

「えぇ、鏡花さんがウソを言ってるとは思ってませんよ。ただ、その勾玉と黄泉の関係性も含めて気になってるんです。なぜ、政府は危険を冒してまで勾玉を入手したんです?」

「あの勾玉には、妖力が宿っている。そう言われているわ。黄泉から蘇らせたい人物でもいるのか、それとも妖術者を増やしたいのか……、詳しいことはわからない。でも政府が勾玉を奪ったせいで、この世界はおかしくなってきた。それだけは言えるわ」

 勾玉か……、一体どんなアイテムなんだろう……。そして、黄泉。何だか、異世界と構造は似てる気がする。



 車は高速道路を西へ走っていく。だが、昼間の首都高。当然のように渋滞し、なかなか進まなくなってしまった。

「あら。おかしいわね。いつもなら少しずつでも進むのに……」

「事故でもあったのかな? サイレンも聞こえてきたし」

 鏡花はカツカツと左足を踏みならす。

 後方からサイレンが鳴っているが、この渋滞だ。なかなか到着できないだろう。

 そう思っていると、前方が黒く曇ってくるのが見えた。

「あれ? 雨でも降るのかな? 前方が……」

「……、あれは……、っ! あれは雲じゃないわ! 黄泉からの敵? それにしては数が多すぎる!」

「うそ……だろ? だって前方が真っ黒だよ? 一体、何匹いるっていうんだ?」

「逃げましょう! まだ間に合うわ。態勢を整えてからじゃないとあんな数、対処出来るわけない!」

 鏡花はドアを開け、すぐに外へ飛び出した。

「待ってくれ、鏡花さん!」

 俺の声も聞かずに、鏡花は高速道路を逆方向に走って行ってしまった。

 前方では人々の悲鳴が聞こえだした。

 すでに敵は近いな。なんだか、日本に帰ってからというもの、巻き込まれてばっかりだ。トホホ……。どう見ても、俺が闘うしかないんだよなぁ」

 正直、数は多いが強い敵はいなそうだ。ま、上げるレベルもないし、一気に片づけるか!

 逃げる人の波が押し寄せる。だが、俺だけは車の屋根伝いにモンスターへ向かって走り出すのであった。


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