68 / 219
第6章 アナザージャパン編
第67話 モフモフ
しおりを挟む辺りは一面、石だらけの世界。所々に石を背の高さまで積み上がっており、その上に火が灯っている。その石灯籠があちこちに配置されており、幻想的な光をもたらしていた。
天を見回したが、太陽はない。この火の灯りだけがこの世界の光なのだろうか?
「とりあえず、歩いてみるか」
行く当てもないので、とりあえず進むしかない。視界は石だらけだが、何か見えてくるかもしれないしな。
30分ほど歩くと、川が見えてきた。川の岸には石灯籠の灯りが立ち並んでおり、川を火の色に照らしている。
反対側は見えない。
「んー、渡るには……、バリヤーで足場作って跳ねていくしかないか」
よっと。
バリヤーを足の先にだけ出し、飛び跳ねるように川を渡っていく。
「しっかし、なんて広い川だ。向こう岸がうっすらとしか見えないぞ」
川をどんどん渡っていくと、向こう岸に何やら闘いがあるようだった。激しく光ったり、風が吹いたり、フラッシュのような稲光が光ったりしている。
一体何だろう? モンスター同士で闘っているのか?
近寄ってみるか……、あれは?
闘っていたのは赤い肌の鬼が数匹と大きな白い狐だった。
赤鬼は巨大で10メルはありそうだ。次々に巨大な金棒で狐を攻撃している。
一方、狐は魔法で迎撃している。が、赤鬼を倒しきれないようだ。風魔法でダメージを負った赤鬼に後方からヒールをかける鬼がいるようだ。
なるほど、確かに狐は強いが、集団で襲われると話が変わる。
赤鬼が金棒を振り回す、それが、狐にヒットすると顔を苦痛に歪める。
そして、後ろに回っていた鬼からの一撃を狐はまともに喰らってしまった。
白い狐は倒れた。後方に構えていた魔術師の鬼は黒い霧を出現させる。そして、狐を黒い霧に捕らえこんだ。
「あれは?」
あれほどの大きな黒い霧を扱える術士がいるのか!
黒い霧は俺の分析だと、まず、体をエネルギーに変えているようだ。複数の個体からエネルギーを溜めることも出来る。そして、他の世界とパイプと繋げ、体を再構築するように出現させる。こんな所だ。
魔術師の鬼は、強力な狐のパワーを取り込んだのだろう。
赤鬼達は近くにあった岩を破壊し始めた。
「いったい何をしているんだ?」
すると、岩陰から飛び出す小さい影があった。
それは子狐だった。
あの大きな狐は子供を守るために闘っていたのか。どうしよう? 助けるべきなのだろうか? 本来であれば、俺は部外者だ。助けない方がこの世界の摂理を壊さないで済む。だが、あのかわいい見た目の子供を大きな鬼達が囲んで倒そうとする、その姿がどうしようもなくいたたまれない。
ここからあの子狐までは、まだ距離がある。間に合うだろうか?
鬼達は子狐を葬るべく金棒を振り上げた。
急ぎでダッシュしながらバリヤーを子狐にかける。
「届け!」
振り下ろされる金棒。動けない子狐。ドスン! と低い音が地響きと供に広がった。
土煙が晴れていく。鬼達は目を見開いて驚いた。金棒は子狐に届かなかったのだ。
白い膜に覆われ、守られた子狐も何が起こったのかわからないように目をパチクリとさせている。
「よし、間に合った!」
腰に下げたアイテム袋から刀を抜き、鬼達に振りかぶる。
鬼達は急に出てきた俺に驚き、動けないでいる。
チャンスだ! 今のうちに刀を振り、鬼達の首を全て狩り落とすのだった。
ズゥゥン。轟音を響かせながら鬼達が倒れていく。
後は、後ろで構えていた魔術師タイプのみ。
魔術師の鬼は俺の登場に驚きつつもファイアーボールの魔法を使ってきた。
見たこともないような大きさだ。恐らくレベルが相当高いマジシャンなのだろう。
だが、こんなのはハーデスが使った魔法に比べれば数分の一程度の威力しかない。
バリヤーを張り、ファイアーボールがぶつかると爆炎を上げて燃え上がるが、俺には届かない。
魔術師の鬼は仕留めたつもりだったようで、ニヤリと笑っていた。が、俺の姿を確認すると驚愕の表情を浮かべた。
「こいつで終わりだ!」
俺の動きに全くついてこれない鬼を通り抜けるように切り裂く。
最後の一体も危なげなく倒すことができたな。
自分の技に感心していると、足下からグルルル、と喉を鳴らす声が聞こえてくる。
「お? 助かったようだな」
子狐は俺をまだ警戒しているように喉を鳴らしながら睨んでくる。
だが、その痩せ細った体といくつもの傷を体に抱えていた。このまま放置しては、すぐに死んでしまう可能性が高い。
「よしよし、安心しろ。俺は敵じゃないぞ? ほれ、水をお飲み」
手からポーションを出す。流れ落ちる水に子狐は警戒を少し解き、チロッと舐めてくれた。
かわいいなコイツ。でも拾っていくわけにはいかないし……。
やがて、子狐が完全に警戒を解くと、俺の出すポーションをゴクゴクと飲み始めた。
うんうん、これで、体も元通りだろう。
そんなことを思っていると、子狐の体が光に包まれた。
うん? 眩しいな! なんだ?
光が収まっていく。俺はうっすらと目を開けると、子狐の体はすっかり傷もなくなっていた。のだが……、
「あれ? 尻尾が増えてる?」
ひい、ふう、みぃ、と数えていくと九本もの尻尾があり、それをクジャクの様に広げて見せてくるのであった。
「おお! お前、九尾の狐だったのか! それにしても凄い魔力の放出だ!」
以前とは完全に見違えるほどに、毛並みはキラキラと輝き、毛がフサフサになっている。
思わず、ゴクリと喉が鳴ってしまった。
モフモフしたい……、だけど噛みつかれたらやだしなぁ……。
そんなことを思っていると、子狐は俺の脚に頭を擦りつけてじゃれついてきた。
「クゥーン」
ゆっくり手を伸ばすと、俺の手をペロペロと舐め出す。
「い、いいのか? 触っても?」
「ワン!」
と勢いよく吠える子狐。
よし、じゃあ、少しだけ……、
モフモフ……、もうちょっと……、モフモフモフモフ。
あぁ、なんて柔らかい毛並みなんだ。指がこんなに気持ちいいなんて!
止まらないっ! モフモフ……。もう俺を止められるのは誰もいない! モフモフモフモフ……。
「ワンワン!!」
子狐が撫でられるのを嬉しそうに喜び、軽く吠えてくる。
「なんて可愛い奴なんだ……」
俺の気が完全に緩み、モフモフに没頭していると、俺の手が光り出した。
「ん? なんだこりゃ?」
気付くと、手の甲に不思議な模様が浮かび上がり、子狐の額にも同じ模様が浮かんでいるのであった。
23
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる