レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第119話 リンの初冒険

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「わ、私は冒険なんて初めてですわ! 緊張いたします!」

「はっはっは、最初はだれだってそういうものですよ。レベルさえ上がれば、昨日の狼だって敵ではないでしょう。ま、気楽にやってみましょう」

「しかし……、本当に大丈夫なのでしょうね?」

 心配症なのか、ザッツは全身フルプレートメイルに包まれていた。顔すらも完全に覆われており、今から戦争にでもいくかのような出で立ちである。

 リンは後ろからナイフを投げて貰うということで、投げナイフを20本と防御力がついたローブを着ていた。何でも防刃、防打、防突、防魔の付与がなされた、国宝もののローブらしい。さすが領主の娘。いいものお持ちだ。

 肌に当たる涼しい風を感じていると、前に魔物らしきものが現れた。

「どうやら魔物がいましたよ。では、俺が抑えますので、ナイフを当てて下さいね」

 魔物は緑色で小型の生き物、ゴブリンだろう。3匹ほどいるな。初心者の登竜門的モンスターである。最初の敵として不足はない。

 俺は鉄の剣を抜いて、ゴブリンを威嚇する。間違っても攻撃を当ててしまえばすぐに死んでしまうだろう。だからわざと当たらないように剣を振り回し、近づけないようにする。

「さ、今のうちに!」

「は、はいっ! えいっ!」

 リンはナイフを投げたが当たらない。続けて3本ほど投げたがどれも全く掠りもしなかった。

「あー……」

 しまった。言葉に詰まってしまう。これほどナイフ投げが出来ないとは……。こりゃ確かに練習してから来た方がよかったかな?

 後悔してももう遅い。仕方が無い。プランBだ。

「ナイフを持ったまま前に出して構えてくれ!」

「えっ、こ、こうですか?」

 リンは細い腕を目一杯伸ばしてナイフを構えた。

 俺はゴブリンを一匹ずつ羽交い締めにし、その構えた所に走っていき、リンの構えたナイフでゴブリンを傷つける。

「よし、これでオッケー」

 用済みのゴブリンはその辺の木に思いっきり叩きつけるように投げると、グシャッと潰れ死んだ。

「へ?」

 リンは呆気にとられた顔をしているが、まだ戦闘は終わっていない。続けて2匹を同時に抱え、同じようにリンの構えたナイフで傷つけたら木に投げ捨てる。よし、これで戦闘終了だ。

「ひゃっ! な、なんだか……力が湧いてきました!」

 リンは手を震わせながらジッと見つめた。

「おめでとう! レベルアップだ」

 親指を立てて祝福する。

「お嬢様! 誠でございますか! こ、こんなに簡単にレベルがあがるとは……」

 ザッツさんも相当驚いているようだ。

「ザッツさんも次はやってみましょうか」

「むぅ! 是非お願いしますぞ」

 軽く聞いてみただけのつもりが凄まじい喰い付きだ。ならば……。

 また魔物を探して少し歩いていると、今度はイノシシのような生物が見えた。体は大きく、人間の背丈の倍もありそうなほどに大きい。

「お? こりゃ丁度良さそうなのがいましたよ! 捕まえてきますね!」

 俺は走って大イノシシに飛び乗ると素手で頭部を殴りつける。何度か殴っていると足取りがフラフラになってきた。

 よし、ここらで持ち上げるか。

 大イノシシの背骨を掴んだまま、遠心力をかけ、ひっくり返すように持ち上げた。大イノシシはまだ俺に殴られたのが効いているようで足はビンと天に向かって真っ直ぐになっている。

「じゃ、二人とも! ナイフでも投げてくれ。刺さったら止めを刺すから!」

 大声で言うと、顔を真っ青にしていた二人は我に返ったようで、慌ててナイフを取り出し、大イノシシに向かって投げてくれた。さすがに大イノシシは巨体だったため、難なくナイフが刺さる。

「じゃ、止めでも刺しますか」

 安物の鉄の剣は普通に大イノシシを切ろうとしても分厚く硬い毛に阻まれてしまうだろうが、魔力を通すことによって性質を変えることが出来るのだ。

 俺の魔力を通すと金色に光り、パチッパチッと電気が弾ける音がなりつつ、小さい雷のようなものが剣から走る。

「それっ」

 大イノシシの首はあっさりと切り落とされ、地面に落ちた。アイテム袋でまるごと回収し、完了というわけだ。すこぶる簡単な作業だ。

 二人はというと、急激にレベルが上がったせいか、手をブルブルを震わせながら地面に座り込んでいた。

「はわわわわ……」

「なななななっ……、こんなことが!」

二人とも自分の世界に入ってしまっているようだ。

「大丈夫だったかな? んじゃ、次行ってみよう!」

 俺は二人に簡単にヒールをかけ、さらに奥へと進んでいく。

 すると、何やら大きな影が辺りを覆いながら進んでくるのが見えた。

「これは……?」

 空を見ると竜の頭部を持った翼の大きい魔物、ワイバーンが飛んでいた。

「うそっ! 山脈の奥にしかいないワイバーンがなぜこんなところに?」

 リンの顔がみるみる青く変化していく。

「ありえない! 私は60年もこの辺りにいるが、ワイバーンがでるなど!」

 ザッツも目を丸くして口を開けたまま、玉のような汗をダラダラと流している。

 なにやら、大げさに言っているようだが、ただの空飛ぶトカゲである。

「んじゃ、次はアレ行ってみましょうか!」

「「へっ???」」

 二人の口は空いたままだが、こんなレベルアップのチャンスを逃がすわけにはいかない。

「むんっ!」

 ワイバーンに向かって手をかざし、魔法を発動させる。

 ワイバーンの周りに雷が発生し、命中した。だが、もちろん生きている。

 よしよし、一番弱いサンダーの魔法だからな。死ぬんじゃないぞ?

 ワイバーンが驚き、ホバリングと止まったところで……。

「こうだっ!」

 俺が剣を振ると稲妻を帯びた衝撃波が飛んでいく。その衝撃波はワイバーンの翼を直撃、貫通した。ワイバーンは今や、飛ぶこともできず、落下し始めるのだった。

 よし、この場に落ちてきそうだな。うん、この辺りで受け止めれば……。

 俺は高くジャンプし、ワイバーンの体を受け止める。といっても、ワイバーンにとっては凄まじい衝撃だったのだろう。すでに虫の息になっているようで首はピクリとも動かない。

 これはチャンスだ。

「リン、ザッツ! ナイフで止めを刺してくれ!」

 二人は大きく口を開けたままだったが、なんとかナイフを取り出し、投げつけてくれた。

 二人のナイフはレベルアップの効果もあり、ワイバーンの体を突き抜け、遙か彼方まで飛んでいく。

 うまくいった! 止めを刺されたワイバーンは生き物ではなくモノ扱いとなる。モノとなればアイテム袋に回収可能になるのだ。その巨体はするするとアイテム袋に吸い込まれていくのだった。

 だが、問題が起きてしまった。

「きゃあああっっっ!」

「ぬふうううっっっ!」

 二人を襲ったのは急激すぎるレベルアップの快感。あまりにもレベル差がありすぎたせいであろう。二人は身悶えてしまい、その場から動けるようになるまで一時間近くもかかってしまうのであった。


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