レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
124 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第122話 レベルアップの効果

しおりを挟む


「先生! 私、身体強化魔法が使えました!」

 リンは満面の笑みを浮かべて俺に抱きついている。

 予想を遙かに上回る適性に俺はしばらく口が聞けなかった。

「おおっ! どうやらお嬢様の才能が開花したようですね! どれ、私めも試してみてよろしいでしょうか?」

 後ろから話しかけてきたのはザッツだ。彼は使用人らしいビシッとした礼をして、庭にある大きな岩に向かった。

 ってか、もしもザッツまで身体強化魔法に適性があるとしたら、獣人族はこの魔法が向いているんじゃないだろうか?

 ザッツは滑らかに腰を落とし、構えをとった。まるで数十年もの間修行をした武道家のような隙の無い構えだ。

 ゴクリと俺の喉が音を鳴らす。

 ザッツが踏み込んだ。まさに電光石火。姿が一瞬にして消え去り、気付くと岩にパンチが突き刺さっていた。ボガァァァッ! っと轟音が響いたかと思えば、ザッツの拳は岩に当たったままなのだが、大岩の反対側が一辺に吹き飛んで、クレーター状のエグれを造った。

「う……、うそでしょ?」

 大岩を攻撃し、その内部や反対側だけを破壊するのは、打撃の威力が浸透している証拠だ。武術を志す者にとって、この浸透させる打撃はまさに奥義と言って差し支えない。分厚い鎧や大型の盾を持った相手がいたとしても、その防具を攻撃し、内側にいる人間そのものを攻撃する事ができる、という究極の武である。

 ザッツの佇まいは、すでに熟練の武道家のものだった。凄まじいまでの適性能力だ。ヘタに他の魔法を磨くよりも身体強化魔法を極めてみた方がいいことは間違いないだろう。

「ほほぅ! これはこれは……。胸が躍りますな!」

 ザッツは上機嫌で自分の拳を眺めている。

「そうでしょ? やっぱり先生はすごいです! 私たちをたった一日でここまで強くしてくれるなんて!」

 リンの目が輝きに満ちている。

「は、ははは……」

 俺はしばらくの間、その場から動けなくなるほどの衝撃を受けたのだった。



   ***



 俺は幻でも見ているのだろうか?

 目の前で繰り広げられる光景はまさに常軌を逸していた。

 二人とも昨日まではレベルの低い初心者だったのだ。それがどうだろう。今では嬉々としてドラゴンに殴りかかっている。リンのパンチがドラゴンの頭部に生えていた大きな角を一撃で木っ端微塵に粉砕した。

「身体強化魔法って気持ちいいっ!」

 リンは頬を赤く染めながら、自分の拳にウットリとする。

 ザッツがドラゴンの顔を殴りかかる。ザッツのパンチの衝撃で牙は全て吹き飛び、顎に大きな凹みを作って、ドラゴンはあっという間に白目を剥いて倒れ込んだ。

大して時間もかからずにドラゴンに止めを刺しきると、背後からストーンゴーレムが出現した。二人は息をつくまもなく、新たな魔物に襲いかかっていく。

「てやぁ!」

 リンのパンチがストーンゴーレムの頭部に炸裂すると、ストーンゴーレムの頭が爆発四散する。

 よろめく胴体にザッツが瞬時に近寄り手のひらを胴体に当てると、胴体の反対側が吹き飛び、すり鉢状の大穴を開けた。

 ストーンゴーレムは決して弱い魔物ではない。ドラゴンとも殴り合えるだけのタフさを持った魔物であり、レベル1000程度では本来、苦戦するほどの魔物なのだ。それがどうだ。たとえ二人がそれぞれソロで闘ったとしても、負ける要素は皆無だろう。そんな時だった。

「むっ? この気配は……」

 強い魔物の気配が辺りに満ちてきた。間違いない。上級モンスターのお出ましだ。二人を見ると身体強化魔法をかけ直し、腰を落とした構えを取っている。俺が何も言わなくとも強者の気配をしっかりと感知していたようだ。

「何だか、二人とも成長著しいな。だが、今度の魔物はどうだろうか」

 遠くからでも強者だと分かるほどのオーラを見に纏った怪物。辺りからは雑魚モンスターの気配があっという間に引いていき、やがて響くような足音が少しずつ近づいてきた。現れたのは、レッドドラゴン。アースドラゴンよりも遙かに格上の強敵。現れたレッドドラゴンは大きさや、魔力、放つオーラから察するに、推定レベルは4500~5000といったところか。アイツを倒すには通常、チームの皆がレベル4000程度は欲しいところ。

 現状はリン、レベル1600。ザッツ、レベル1600。二人のレベルはまだ充分ではないが、俺を含めればもちろん倒すことは容易いだろう。俺は撤退命令を出さずに、戦ってみる事を選択した。丁度いいレベル上げの機会だ。コイツを倒し、パーティーが勢いを高める切っ掛けとなってもらおう。

「リン、ザッツ。やるぞ! 準備はいいか?」

「もちろんですわ!」

「了解しましたぞ!」

 二人とも闘志を燃やし、やる気満々だ。

 ドラゴンを相手にする場合、恐怖心があると、ブレスを吐かれたときに動けなくなる。そのため、恐怖心を克服することが重要だが、二人にはもう必要なさそうだ。

 そんなことを考えていたら、ついにレッドドラゴンの全体が現れるほどに近づいてきた。

「よし、散開! 俺は正面を担当する。二人はそれぞれ、左右から攻撃してくれ!」

「はい!」「はっ!」

 二人とも元気に返事をし、レッドドラゴンの側面に走って行く。

 レッドドラゴンは二人のことを無視して俺から視線を外さなかった。そして、口に膨大な魔力を集めていく。

 いきなりブレスか。来るなら来い! 俺の聖剣でブレスを切り裂いてやる!

 俺は聖剣を抜き、魔力を込めていく。黄金の魔力が聖剣に溜まっていき、刀身がどんどん大きくなっていく。

 レッドドラゴンも魔力を溜め終えたのか、上空に口を向けて大気を思いっきり腹に吸い込んだ。

 来るっ!

 レッドドラゴンのブレスが吐き出された。

「てやあぁぁぁ!!! 喰らえ! 聖剣の一撃を!」

 ブレスと聖剣の一撃がぶつかり合った。

 赤い炎と黄金の稲妻がぶつかり合い、火花を散らす。

「うおりゃああああ!!!」

 辺り一帯を爆風が襲いかかる。それに伴い、激しい光が包み込む。そして爆音が轟いた。

 今、ドラゴン最大の攻撃であるブレスと人間界最強の聖剣の一撃が雌雄を決すべくぶつかり合うのであった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...