レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
127 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第125話 王都

しおりを挟む


 自分の主人であるドルツと聞いた話は、とても信じがたいものだった。何せ、強い者を選出し、神の試練を受けなければならないというものだったからだ。

 私はある予感を覚えた。REN殿のお陰で目覚ましくレベルアップした私とリンお嬢様は、恐らくだが、この国で最もレベルが高い獣人になるのではないだろうか? しかし、この神の神託に恩人の娘たるリンお嬢様を選ばせるわけにはいかない。つまり私が立候補するより選択肢がないのだ。

 私の主人であるドルツは眉を寄せ厳しい顔つきで下を向いている。

「ドルツ様……。どうぞお命じ下さい。私はこのアレクサンドロスの街を愛しております。もちろん、主人であるドルツ様も、先代のお館様も、そして、リンお嬢様も、です。現状、我が国で最もレベルの高い獣人は、私と、リンお嬢様でしょう。ですが、リンお嬢様に戦わせるわけには参りませぬ。REN殿はたまたまこの街を通りかかった旅人。彼に神託を託すわけにも参りません。

 どうか……ご決断を」

「ザッツよ……、そなたは私の生まれる前からこのアレクサンドロス家に仕える重臣。そなたをこのようなわけの分からない戦いに巻き込むなど……」

 ドルツの握りこぶしが震える。

「ドルツ様はお気になさる必要はありません。私がこの街を守るために戦いたいのです」

 私は説得を続ける。もうこの方法しか残されてはいないのだ。アレクサンドロス家を守るため。アレクサンドロスの街を守るために、私が戦えば良いのであれば、喜んでこの身をささげようではないか。正直、どんな試練が待っているのか……、恐ろしくはある。だが、ドルツ様とリンお嬢様に心配をかけたくないのだ。

「くっ、ザッツ……」

「ドルツ様。まだ何も私が試練の戦いとやらで負けると決まったわけではありませんぞ? 何せ、あのREN殿に鍛えられ、今やレベルは4300を超えているのです。私が負けるなど、想像もつきませんぞ! ハッハッハッハ」

「すまぬ。ザッツ。許してくれ」

 ドルツの目から涙が頬を伝い落ちた。

「ドルツ様。早速、王城へ参りましょう。この話を神父と共にすれば、王室からも候補があがるはずです。ですが、我等が領土の命運をどこぞの誰かに任せるわけには参りませんからな」

「ザッツ……。私と共に王城へ……行ってくれ。この領土を守って欲し……い」

 涙を流しながら震える声で言うドルツを見ると、昔、子供だったころの姿を思い出す。

「えぇ、任されましたとも。ドルツ様は大船に乗ったつもりで朗報をお待ちください」

 私は泣き止まないドルツを抱き合うようにかかえ、数十年ぶりにその頭を撫でてあげるのだった。



   ***



 ドルツは部屋を出る時にはすっかり領主の顔に戻っていた。

 二人で、庭にいたリンお嬢様とREN殿にしばらく屋敷を空けると簡単に説明だけして、早速、馬車に乗り込んだ。



 そして、馬車に揺られて丸一日。ついに王都に辿り着くのであった。



「おお、ドルツよ。久しいな。元気しておったか?」

 この、アノルダス王国の王である、ヒュルベルトは、ドルツと同い年で同じ学園へ通った友でもあったと聞いている。そのせいもあり、王の顔はパッと明るくなっていた。

 今、私はドルツ様と共にこの国の国王陛下を訪れていた。そして、地に膝を着き、頭を下げている。

「恐れながら。実はこのたび、我が領土の教会にて神託が降りたのです」

 ドルツや教会長である神父の説明に、王は目を丸くして驚いていた。



「ふぅむ、なるほど。その戦い、負けるわけにはいかぬ、というわけか」

 王もあまりの内容に眉間に皺を寄せている。

「はっ。そこで、僭越ながら……、我が領土で最強の戦士である、ザッツを引き連れ、参上した次第なのです」

 王の目が見開く。

「ほぅ! 最強とな? だが、王都にも戦士がいないわけではないぞ? ヘルマンよ! 来るがいい!」

「はっ!」

 ヘルマンと呼ばれた騎士が兜を脱ぎ、王の前に進み出ると膝を折った。

 大柄な体つきは2メルを大きく超え、太い腕は丸太のごとく、その足は猛獣のように弓なりかつ図太かった。顔は獅子、たてがみも大きく、見る物を圧倒する雰囲気を放っていた。

「どうじゃ? 強そうじゃろ? このヘルマンは王都で開かれておる武闘大会を4連覇中でな。ワシとしては実力の知れている者に任せたいと思うのじゃが……」

「ならば、戦いの場を設けて頂けませんでしょうか? そちらのヘルマンとザッツに戦ってもらい、強い方が神の試練を受ける。ということでいかがでしょう?」

「うむ、なるほど。面白そうじゃ! では、早速、闘技場の準備じゃ! 急げ!」

 王の号令のもと、臣下達がすぐに動き始めた。

 だが、ヘルマンはジッとザッツを睨み付けたまま動かない。ザッツもまた、ヘルマンを睨み返しており、一触即発の空気となっていた。

「ふん、田舎貴族の騎士が調子に乗りおって。今なら辞退してもかまわんのだぞ?」

 ヘルマンはその高い身長からザッツを見下ろし、冷たい口調で言ってきた。

「おやおや、都会の騎士は違いますなぁ。口で戦うのがお好みですかな? それとも、決闘を前にブルってしまわれたのでしょうか?」

 ヘルマンは舌打ちをし、振り返った。

「貴様には容赦ない敗北を与えてやろう」

「それはこちらの台詞でございますぞ」

 ヘルマンが去ると、ドルツが心配そうな顔つきで近寄ってきた。

「大丈夫か? 降りるんなら今しかないぞ?」

「お任せ下さい。あの程度の威圧、蚊ほどにも効きませんよ」

 一瞬だが、私は見たのだ。あのREN殿が放つ一撃を。レッドドラゴンに対し、剣に魔力を込め、ブレスを切り裂いた一撃を。

 あの濃密で膨大な魔力の塊を見ていれば、ヘルマンの睨みなど児戯同然。

「さ、参りましょうか。REN殿に鍛えられた技というものをお見せいたしましょう」

 私はドルツを先に歩かせ、闘技場へと向かうのであった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...