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第9章 勇者RENの冒険

第127話 代表戦 決着

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 ヘルマンの一撃はシンプルな横薙ぎの一振り。

 だが、先ほどの振りとは明らかに威力、スピード共に違っている。

 なるほど、これが本気というわけですね。

 ヘルマンはこの一撃に相当な魔力を込めていた。ならば、私の答えは……。

 腹に溜め込んでいた魔力を一気に腕に集中して解放する。魔力は腕を覆うように形を為し、一回り大きなオーラとなって私の手の周りに揺らめく。

「少しばかり見せてあげましょう。私の本気をね」

 ヘルマンの攻撃に合わせてパンチを繰り出すのは先ほどと変わらない。だが……、

 ギョバババババッッッッ!!! 激しい火花が散り、剣と拳がぶつかり合う。そして、鍔競り合うようにお互いが力を入れ合い、意地と意地がぶつかり合った。

「ぬうううううううっっっ! 俺は負けるわけにはいかんのだ! この闘技場の覇者として! お前に勝つ!」

 ヘルマンの一撃は確実に殺気を含んでおり、本気で討ち取りにきている。このぶつかり合いでも引くつもりはなく、このまま押し切って私に止めを刺すつもりなのだろう。ぶつかり合いながらも、魔力を剣に込めていき、およそ彼の魔力の全てを剣に込めていった。

「フム、これほどの使い手だったとは。いや、思っていたよりも強かった。私がいなければ、この国で最強なのはアナタで間違いなかったでしょうな」

「な……なんだと!? まだ勝負は」

 私の宣言に驚くヘルマンの鎧にヒビが入っていく。

「もう、終わっておりますよ」

 止めの魔力を拳から剣に通した。

 ヘルマンの剣にも大きな亀裂が入っていく。

 バキィィィィィン!!!

 剣がまるで爆発したかのように弾けた。そして、鎧も粉々に砕けていく。

 残ったのは下着姿のヘルマン本人だけ。

「いかがですかな? これでもまだ続けるとでも?」

 ヘルマンは呆然としていたが、ハッと気付いたように自分の体を見回した。そして、深く項垂れ、体に纏っていた闘気が消えた。

「いや、俺の負けだ。まさか、あの装備を全て破壊されるなんて……」

「「「おおおっっっ!!!」」」

 観客席にいた貴族達から歓声があがった。

 パチパチパチと王が手を叩き、両者の健闘を称えた。

「見応えのある試合であった。此度の神の試練は、ザッツに一任する! これは国王であるワシの決定である!」

 王の宣言が高らかになされる。

「謹んでお受けいたします」

 私は王の前に膝を着き、礼をした。

「ヘルマンよ。世の中には強き者はゴマンといる。これを機に精進せよ」

「はっ、この命に代えましても、いずれ最強の座を奪い返してみせます!」

 ヘルマンも王に礼をとり、この対決は終わりを迎えるのであった。



   ***



 闘技場での対決が終わり、王都からの帰り道に至るまでドルツは元気なく俯いたままであった。

「いかがされましたか? ドルツ様。予想通りの結果になったではないですか」

「あぁ、だが、これでザッツを神の試練とやらに向かわせねばならん。気が重い」

 ドルツは声を絞り出した。

「私はこれで良かったと思っております。それはヘルマン殿に任せたほうが私は楽ですがね。この度は我等の領土や、国の危機でもあります。力があるのに人任せにするなど、出来るものではありません」

「そうか、ならば、ザッツよ。この国を、頼む……」

 ドルツは私の手をグッと握り震わせた。

「はい、お任せ下さい。必ずや吉報をお持ちします」

 ドルツは手を離さなかった。震えた手の上に彼の涙が落ちてくる。

 その時、急に馬車が止まった。

「ん? どうしましたか?」

「すみません、道に人がいて。すぐに退かせますんで」

 御者は馬車を降り、道に立っていた人に話しかける。その瞬間だった。

 御者は剣のようなもので斬られ、悲鳴を上げながらその場に倒れた。

「む? これは? 山賊か?」

 剣を持った人型は剣を振りかぶり、馬車に斬りかかってきた。

「ドルツ様、幸い領地はすぐそばです。馬に乗ってお逃げを! 私が時間を稼ぎます」

「あぁ、頼む。ザッツよ」

 私は馬車のドアを蹴飛ばし、その人型にぶつけると外へと飛び出した。

 人型は飛んできた馬車のドアをたたき切り、私の前に立ちはだかった。

「貴様、我等を知っての狼藉か?」

 人型に問う。人型は爬虫類のように先端の割れた舌を出し、口の周りをなめながら口を開いた。

「クックック、なぁに、この馬車にアンタが乗っているってわかったんでね。ほんの摘まみ食いってやつさ」

 人型は両手を広げ、ただのいたずらだと言わんばかりの態度であった。

「摘まみ食い? 何を言っている?」

「とぼけるなよ? アンタがゴッズトーナメントの出場者なんだろう? さっき王国を襲ったらザッツという男に決まったと雑魚の騎士が言ってたぞ? 獅子の顔をしていたが、まるで大したことなかったんで、喰い足りねぇんだ。もうちょっとつきあってくれよ?」

「ヘルマン殿……。そうですか。狙いは私というわけですな? しかし、ゴッズトーナメントなど、私は知りませんがな」

 ドルツを横目に見ると、馬に跨がった所であった。そして、ドルツは一人、領地へと向かって駆けだした。

「ふん、貴様の神はそんなことも教えてないのか。随分とケチ臭いんだな。いいだろう、教えてやる。ゴッズトーナメントとは、これから開かれる大舞台よ! この大地を支配する神々、16柱が選びし戦士16名。その戦士達が闘い合うトーナメントこそ、ゴッズトーナメントよ! そして、優勝者は願いを一つ何でも叶えられるのだ!」

 人型は胸を張って衝撃の内容を答えるのだった。


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