140 / 219
第9章 勇者RENの冒険
第138話 ブッピーの怒り
しおりを挟む「両者準備が整ったようです! では、1回戦第二試合。レディ……ゴーーーーーーッッッ!!!」
闘いの火蓋が切って落とされた。天使達の張った結界が一瞬にして消え去り、二人の戦士がフリーになる。
「ブモモモモオオオオォォォォッッッ!!!」
ブッピーが凄まじい咆哮を上げた。入場の時とは違う、本気の咆哮。ブッピーの口の前の空間がグニャリと歪み、細かく震えた。そして、ブッピーの前の石畳が割れていき、フラットだった舞台が一瞬にしてガタガタに変化する。
「残念だがその程度の威圧など、我には効かぬわ」
ズールが右手人差し指をクイッと上げるとそこに分厚い空気の壁のようなものが出来上がった。
バアアアアアンッッッ!!!
ブッピーの咆哮の威力がその空気の壁に衝突し、周囲に凄まじい破裂音が鳴り響いた。
放たれた音波と空気の壁がぶつかり合い、二人は何事も無かったかのように、また睨み合った。
「初っぱなから強烈ですね~~~!」
「ズールは魔法も使えるんですよ! その腕前は言うまでも無く超一流のものです。まさか、あの咆哮をさらりと受けてしまうとは思いませんでした!」
「ブモアアアアッッッ!!!」
ブッピーがその手に持った巨大な剣をズールの遙か上空から振り下ろす。だが、その剣は刃が着いたところが横を向いていた。つまり、ブッピーは巨大な剣の横で、ただ叩きつけるように振り下ろしたのだ。
「ぬぅ!」
ズールは4本の腕で剣を交差し上空へ構えた。
「あぁっと、ズールが咄嗟に防御する!」
ズガアアアアンッッッ!!!
辺りは一気に土煙に飲み込まれた。
「強烈な一撃だぁぁ!!! 果たしてズールは無事なのか?」
土煙が晴れてくる。すると、ブッピーの剣は地面に大きな穴を空けており、地上にはズールの姿がなかった。
「あぁ! ズールがいません! あの剣で押しつぶされてしまったのでしょうか!!!」
ブッピーはその口を逆さになった三日月のようにグニャァと緩ませた。剣をゆっくりと引き上げていくが、ズールの姿は無い。
「ふむ、凄まじい力だな。だが、この程度我を倒したと思ったら大間違いだ」
大きな穴からボフッと何かが飛び出すと、後方へ着地した。
「ああ~~~っと、ズールはまだ生きておりました! 信じられません! あのブッピーの強烈な一撃を防ぎきるとは!」
「しかし、ズールは少しダメージになっているかもしれませんね」
ズールは腕をユックリ回しながら調子を確認し、首を横に曲げコキリと音を鳴らす。
「やってくれるじゃないか。これは御礼をせねばならんな」
ズールはユックリと歩き出した。その目はブッピーを全く恐れていないほどに鋭く相手を捉えている。
「ブモモモモオオオオォォォォ!!!」
ブッピーは上空へ向かって叫んだ。そして、示し合わせたようにズールに向かってユックリと歩き出すのであった。
***
エルダーオークであるブッピーは怒り狂っていた。自分のボスであるオークキングが何者かに倒されて以来、オーク族は激しく数を減らし、この世界での優位性が失われてしまったのだ。
本来、格下であるゴブリンや、コボルドですら集団でオークに襲いかかり、食肉として食べられる始末。奴らの雌をさらい、繁殖用に使用していたのも過去の話になってしまったのだ。1匹で動き回ると確実にやられてしまうため、オーク族は群れ出すようになっていた。だが、そのありあまる性欲を抑えきれず、発狂してしまい、群れを飛び出した所を確実に狙われていったのだ。
「ブモモッ! 我等オーク族がこれほど舐められるとは……」
ブッピーは独りごちた。視界には10頭のオーク達がいる。オークキングの元にいた頃は数百頭もいたオークが今や、たったのこれだけしか残っていなかったのだ。それも満身創痍。怪我を負っていない者など皆無だ。
かつてキングがいた頃は人間の村を襲い、極上の雌を囲い、快適な家でエサを貪り食っていたのも昔の話。今は雌もおらず、毎夜の警戒で神経をすり減らし、身体は傷だらけだ。
「最早、神に見捨てられた我々は滅ぶしかないのか!」
仲間達は一様に俯き、言葉すら発する事が出来ない状態だった。
もし、今ゴブリンキングや、コボルドエースに襲われてしまえばブッピーの群れは壊滅必至であった。ブッピーはオークジェネラルでもオークキングでもないのだ。ただ長く生きながらえただけのオークだった。オークは比較的力が強いが、ゴブリンキングはもちろん、ゴブリンエースやゴブリンソルジャーといった亜種に対しても1対1では勝つことが出来なかった。
天が光り出し、辺りが白く包まれたのはそんな時だった。
「オーク族、族長はお前か?」
「ぬぅ? 誰だ貴様は! 妖しい奴め!」
ブッピーは傍らにあったボロく、刃の欠けた粗末な剣を握り、立ち上がった。もう闘える者は自分一人。群れのため、オーク族を生きながらえさせる為には自分が闘わなければならないのだ。
立ち上がっただけで傷口が広がり、手足の毛が赤く染まり出す。剣を持つ手は痺れが残っており、握っている感覚が半ば分からない。
だが、それでもブッピーは立ち上がった。
「例え最後の一匹となろうとも、俺は破壊王、ブッピーだ。戦い抜いてみせる!」
握る剣はブルブルと震える。恐らく一振りするのもやっとだろう。それでもブッピーの目は鋭く、現れた光存在を睨み付けた。
「いいでしょう。ソナタのような存在こそ、我が代表にふさわしい」
白い存在は両手を広げ、闘う素振りも見せない。
「代表だと? 何のことだ?」
「これより、地上のあらゆる種族が集まり、闘い合うのです。その闘いに最後まで勝ち残ったとき、私はソナタの願いを一つ叶えましょう」
「願いを叶えるだと? 貴様は神だとでも言うのか?」
「いかにも。私こそが魔獣の神。そなたに力を授けます。なんとしてもトーナメントを勝ち抜き、オーク族を復興させるのです」
魔獣の神が手のひらをブッピーに翳した。
白く、神聖なる力が霧のようにブッピーを包み込んでいく。
「ブモッッッ!!! こ、この力はっ!」
ブッピーの身体が一回り大きくなり、強力な再生能力が備えられ、傷口はあっという間に塞がった。
溢れ出る力は持っていた剣を一瞬で握りつぶしてしまい、粉々に散っていく。
獲物を狩る目は今までよりもずっと冴え渡り、近くの鳥が動くはずの未来の行動がその目に映り込むようになった。
「この力こそ、オークキングに相応しいものです。先代のオークキングの力、確かにアナタに授けましたよ?」
「ブモッ! この力はキング様のものだったのか?」
「はい、オークキングは常に一人。私に選ばれし者こそがキングとなり、群れを率いるのです。さぁ、新しい剣を受け取りなさい」
魔獣の神は何も無い空中から巨大な剣を取り出した。そして、ブッピーの前に刀身が突き刺さるように投げ与えた。
今や体長3メル以上もあるブッピーの背丈を上回る巨大な黒い剣。この剣にはろくに刃がついていなかった。素材もまるで得体が知れない。
「さぁ、時は満ちました。その剣を握るのです! 力強いソナタに剣技やら体術やらそのような誤魔化しの技術は必要ありません! 強大な力を持って全てをねじ伏せるのです! そして、あらゆる種族を蹂躙し尽くすのです!」
ブッピーは目の前の剣を抜いた。凄まじい重量の一品だったが、今のブッピーならば、片手でも振り回すことが可能だった。その剣はまるで長い間使い続けていたかのように手に馴染む。
「いいだろう。俺を案内しろ。全てを喰らい尽くしてみせる!」
ブッピーの目が赤く光る。
その様子を魔獣の神は微笑みながら満足したように頷くのだった。
1
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
俺のレベルが常人では到達不可の領域にある件について ~全ユーザーレベル上限999の中俺だけレベル100億いった~
仮実谷 望
ファンタジー
ダンジョンが当たり前のようにある世界になって3年の月日が流れてずっとダンジョンに入りたいと願っていた青年が自宅にダンジョンが出現する。自宅の押し入れにダンジョンが出現する中、冷静に青年はダンジョンを攻略する。そして自分だけがレベル上限を突破してレベルが無尽蔵に上がり続けてしまう。そうしていづれは最強への探索者として覚醒する青年なのであった。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる