レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第145話 吸収魔法

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「ジークの赤く光る目がイヴリスを捉えて離さない。試合開始前から既に臨戦態勢か!!!」

「あら? 随分と怖い目つきで私を見つめるのね? でもごめんなさい。私、もう気になってる人がいるの。だからアナタの期待には答えられないわよ?」

 冗談交じりにからかって反応を見たかったのだけど、帰ってきたのは意外な言葉。

「ワシに勝ちを譲ってはもらえんか?」

 リッチとなって顔の肉もそげ落ち、灰色のスケルトンとなっているからには表情がくみ取れない。

「あら? どうしてかしら? 私はこのゲーム、楽しみにしてたんだけど……」

 ジークはやや上を向いて口を開く。

「ワシの目的は神への復讐。それ以外に無い。そして、このトーナメントで優勝すれば……、ワシの願いは全ての神の消滅。ソナタも神は嫌いであろう? ワシの目はごまかせぬ」

「もちろん神なんて嫌いだけど……、それって私にメリットなのかしら?」

「神が消えればソナタやソナタの種族ももっと世界に干渉できるようになるはずだ。それが報酬でいかがだろう?」

「残念ね……、私は別に不自由なんて感じてないのよ。それよりもアナタの強さに興味があるのよね」

「そうか……」

 ジークは顔を下に向け、手に巨大な木製の杖を出現させる。

「ならば、ソナタも消滅させてやろう……。ワシの秘術、とくと御覧じろ!」

 ジークの目の輝きが増し、赤い光が強まる。杖はジークの魔力を帯びると黒い瘴気を発生させる。その瘴気もまたドクロを形作っていくのだった。



「さぁ、試合前に何やら話していましたが、どう見ますか? ローファンさん」

「いやぁ、まさかの降伏勧告でしたね! しかし、相手はあの大悪魔イヴリス! 降伏するわけもありません。交渉は決裂! これは最初から荒れそうな展開になりますよ!」

「最初から目が離せないわけですね! これは期待してしまいます! それでは、一回戦第三試合! レディーーーッ! ゴーーーーーーーーッッッ!!!」

 解説者の合図と共に戦士達を隔てていた結界が消え去った。

 イヴリスはすでに詠唱を始めていた魔法を打ち放つ。

「喰らいなさい! 我が終焉の炎を! アルティメットフレアーーーッ!!!」

「ああぁーーーっと、いきなりの極大魔法です! イヴリスの手に巨大な炎が現れましたーーー!」

「大きな魔方陣ですね! 普通のフレアーの倍以上の大きさはあるかと思います。恐らくですが、先の試合でズールが放った魔法と威力は遜色ないかも知れませんね!」

「対するジークは……、杖を高く掲げました! 一体何をするつもりでしょう?」

 ジークは手に持つ杖を上方に掲げ、何やら詠唱を始める。そして、杖を中心として現れたのは黒い魔方陣。ヘドロのような半液体がドロリと垂れ落ちるその魔方陣は見る者におぞましさを感じさせるに十分なものだった。

「こ、これはーーーっ! 不気味な魔方陣が描かれております! 一体どんな魔法なのでしょうかーーーッ!」

「あの黒い魔方陣ですが、どうやら吸収系の魔法かと思われます。おどろおどろしい模様、そして、黒い液体がしたたり落ちる謎の構成物! 死人族と呼ばれるアンデッド特有の魔方陣ですね!」

「しかし、イヴリスは猶も詠唱を続けていくーーーッ! その魔方陣がさらに大きくなっております!!!」

「これは凄いですね! 私はこれほどの大きな魔方陣を見るのは初めてですよ!」

 イヴリスの前方には巨大な魔方陣が描かれていく。その大きさはイヴリスの三倍以上の大きさにまでなっている。

「果たして、この魔法を吸収しきれるのかしら? 色々と誘ってくれたけれど、アナタとは縁がなかったようね。これでサヨナラしましょう!」

 イヴリスの手から魔法が放たれた。それは轟音と閃光を強烈に放ちつつ、ジークを完全に飲み込む大きさの炎の塊。会場にいた観客達もあまりのまぶしさに目を開くことも出来ない。

「イヴリスが魔法を放ったーーーッ!!! 大きいッ! こんな巨大な炎見たことがありませんーーーーッ!」

 ジークにその巨大な炎が迫っていた、が、ジークはそれを躱す素振りも見せず、ただ自らの魔法を詠唱し大きく伸ばしていた。

「フッ、大悪魔の魔法がどれほどのものか計ってやろうではないか」

 ジークは炎が目前に迫ってから魔法を発動した。それは小さな黒い点。その点が渦を巻き、炎の揺らめきを吸収していく。

「ジークの魔法もギリギリで発動したようです! 巨大な炎がッ! 小さな黒い点に渦を巻くように飲み込まれていくーーーッ!」

「こ、これはまるでブラックホールのようですね! しかし、巨大な炎をどこまで吸い込めるのか? 全く予想もつきません!」

 ジークは全く動じてはいなかった。目の前にまで近づいた炎に対して、静かにその赤い眼で見つめるだけ。

「悪魔の女王よ。見るがいい。復讐の鬼と化したワシの秘術を!」

 ジークが杖に魔力を込めた。杖を通して現出している黒い点が少しずつ大きさを増す。吸い込む渦はより大きさを増し、あっという間にイヴリスのフレアーを半分以上を飲み込んでいく。

「なっ! なんとーーーッ! ジークの出したブラックホールがイヴリスのフレアーを飲み込んでいくーーーッ!」

「フンッ! やるじゃない! だけど私の力がこの程度だと思われるのは困るのよ! もう一発プレゼントしてあげるんだからっ!」

 イヴリスはすぐに膨大な魔力を紡ぎ出し、巨大な魔方陣を描いた。

「あぁーーーっと、イヴリスがこの短時間で再度の詠唱に入ったーーーッ!」

「極大魔法を連発なんて前代未聞です! もし、ジークがこの魔法を受けきれなければ、結界すらもやられてしまうかもしれません!!!」

「そ、それって……やばいんじゃ……」

「やばいですよ! 我々も吹き飛ばされる可能性があります!!!」

「ひえぇーッ! ど、どうしましょう?」

「今はジークの動きに注目しましょう!」

 解説者の提案と共に観客達も固唾をのんでジークの動向に注目が集まるのであった。


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