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第9章 勇者RENの冒険
第146話 ジークの反撃
しおりを挟む「ふぅむ、大悪魔と聞いていたからどの程度かと思えば……期待外れだな」
ジークはイヴリスの放とうとしている魔方陣を見るとつまらなそうに呟いた。
「なんですって? そんな余裕も言えないくらいデッカいのを味合わせてあげるんだからっ!」
イヴリスは先ほどの魔方陣よりもさらに魔力を注ぎ込んでいく。そして、先の魔方陣よりもさらに巨大な模様を描き終えると、満足したようにニッコリと微笑む。
「アンタなんてチリ一つ残さずに燃やしちゃうんだから! 覚悟なさい!」
イヴリスの魔法が手から放たれる。
ジークは自ら出した黒い点が先のフレアーを吸収し終えたのを確認し、杖を翳し、さらに魔力を込めていった。
「先ほどは吸い込むだけだったが、同じことをしては面白みに欠ける。どれ、貴様の反魔法結界の程度でも調べてやろう」
ジークの放ったブラックホールに雷がまとわりついた。そして、さらなる詠唱を加え、大きさを増し、イヴリスのフレアーを勢いよく吸い込み始める。
「す、凄い光景が目の前に展開しています! イヴリスが放った魔法は間違いなく世の中で一番の威力を持っていたことでしょう! ですが、ジークはなんと、これを吸収してしまおうというのです! ローファンさん、こんなこと、出来るものなんでしょうかーーーッ?」
「わ、私も驚いています!!! まさかこのイヴリスの魔法を吸い込んでいくなんてっ! しかも、今度は雷をまとい、渦巻きながら威力を増していってるように見えます! この人知を超えた魔法同士の衝突! まさしく今、伝説に残る試合を見ていることは間違いないでしょう!」
「フッ、伝説など蓋を開けてしまえば大したことはない。随分と長生きしたようだが、どうだ? この辺で種族ごと変えて生まれ変わってみるか?」
ジークの出したブラックホールはイヴリスの巨大フレアーを全て飲み干してしまった。それと同時に纏わり付いていた雷がイヴリスの方へ向かって解き放たれた。
ズガガガアァァーーーーーッッッ!!!
「耳をつんざく轟音ーーーッ! 今、ジークの怒りが解き放たれました! 舞台が稲光に包まれ、イヴリスがどうなっているのか? 全く知ることが出来ませーーーん!!!」
舞台は稲妻が縦横に走り回り、ステージの床を破壊し尽くしていく。大爆発が何度も起き、イヴリスの立ち位置の上空にはキノコ雲が上がっていく。
「リサさん! 私はこ、これほどの雷魔法なんて見たことがありません! 元勇者だったという噂は本物ですよ!」
「煙が晴れていきます! 果たしてイヴリスは……、あぁーっと! 立っております! それも涼しい顔で無傷のように見えます! あれほどの激しい爆発、一体どうやって耐えたのでしょうか?」
「リサさん! イヴリスの足下をご覧下さい! 彼女の足下から2メルほどの円形は全くの無傷となっているでしょう?」
「た、確かに!」
「イヴリスは魔法に対するバリヤーを張ったものと思われます! あの雷撃を凌ぐバリヤーですから……、流石はイヴリスと言うほかはありません!」
「な、なるほど! バリヤーですか! そんな便利な魔法があるんですね! 勉強になります!」
イヴリスは髪を撫で、ホコリを払うとキッとジークを睨みつけるのであった。
***
「あの伝説は本当だったとでも言うのか?」
人間の建てた国の中でも大陸一の大きさを誇るヴェルグ帝国。その王城で一際豪華なイスに腰をかける若い男が言った。衝撃がよほど大きかったのか、ブルブルと体を震わせている。
「陛下、このジークは確かに伝承にある通りの見た目……まず、間違いはないかと……」
この国で宰相を務めるレイドは顔を俯かせながら答える。
「バカな! あのリッチが我が祖先だと……、認められるものか!」
若き王は怒りに身を任せ、テーブルに拳をぶつける。
「こんなことが……、こんなことがあってもよいのか!」
「陛下……、全ては過去のこと……、陛下がお気に病むことではございませぬ。どうか、怒りを静め下され」
宰相は王が若き時より従者も兼ねて国の維持に努めてくれた腹心。彼の言うことはもっともなのは分かっている。だが、どうにも怒りが治まらないのだ。
「ジーク……、我が祖先よ。そなたの怒りは尤もだろう。だが……、そこまで変わり果てたとしても神への復讐をするのか……」
「陛下、恐れながら……、その伝説とは一体……」
口を開いたのは幼なじみにして騎士団総司令を務める若き天才騎士、ヴァーバリー。今はここにいる3人で人間界の行く末を見守るべく、応接室に現れたモニターで観戦していたのだ。尤も、人間代表の黒騎士は敗れてしまったため、人間に害のない者が勝つことを祈りながら見ているだけなのだが……。
「ヴァーバリーよ。その伝承は王家の者と近しい者にのみ伝えられる話。部外者である貴様は知らぬ方が……」
「よい……もうこの者はこのジークというリッチを見てしまっているのだ。それにあの武器が真の姿を現すのもすぐだろう。その時に気を乱さないよう、聞いておくべきだ……」
宰相の言葉を遮り、若き王は語り出す。自らの祖先の伝説を……。
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