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第9章 勇者RENの冒険

第149話 神剣ヴォルグスネーガ

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「舞台では激しい闘いが繰り広げられております! まず地上の舞台真ん中ではデーモン・ロード3体とデュラハン、モンドの対決が激化しております! しかし、モンドですが、3体ものデーモン・ロードの攻撃をよくぞ跳ね返していますね!」

「えぇ、あの大きな盾がポイントでしょう! しかも彼の盾ですが、あれは間違いなくレジェンド級の代物ですね! 聖属性の加護までついており、デーモンの得意とする闇魔法を通しておりません! 直接の格闘戦でもデュラハンに決定的な攻撃を通すことができておりません! しかも後方に位置するリッチ2体が絶え間なく魔法攻撃をしかけておりますから、これは大変ですよ!」

「なるほど! デュラハンのモンド! かなりの使い手ということですね!」

「えぇ、デーモン・ロード3体のピシッとしていた服装も今や、焼け焦げた跡や、破れた跡でいっぱいになってきています! そこから出血して服が青く染まっていますからね……。デーモン・ロードには厳しい闘いになっておりますね」

「あっとー、上空ではイヴリスとジークの激突が激しくなってきました!」

「イヴリスが大型の魔法を放つと、ジークも吸収の魔法を使いますから、一転して細かな魔法を連打し始めましたね! ですが、火力不足でしょうか。ジークの足止めくらいにしかなっていません!」



 なんて奴なの? 魔法主体の私の攻撃じゃ相性が最悪じゃない! なんだってこんな奴が地上を闊歩してるっていうのよ!

 イヴリスは焦る内心を抑えきれなかった。

「このぉっ! この気持ち悪いスケルトンのくせに!」

 イヴリスは火属生の魔法を連打していく。だが……。

「ワシにそのような下級魔法など……そよ風も同然。無駄な抵抗をしおって」

 そんなっ、私の魔法が……全てバリヤーで防がれちゃってる。くっ……、私が……この私が足止めしか出来てない……。

「フンだ! ここで時間を稼いでいればあの子達が応援に来てくれるんだから!」

「ほぅ……。下の戦闘もそろそろ決着がつきそうじゃがな……」

 イヴリスは肩で息をしながら下をチラリと見た。

「なっ! ……そんな!」

 デュラハンの剣が1体のデーモン・ロードの首を横薙ぎに切る。強力な聖属性の剣の持つ浄化作用がデーモン・ロードの再生能力を上回り、デーモン・ロードの身体が消滅するのだった。

「これで1体目じゃのぅ。やれやれ、これほど時間がかかるとは彼奴らもまだまだじゃの。くっくっく」

「う……うそよ! 私の眷属があんなに簡単に……」

 デュラハンの後方にいたリッチからの魔法射撃が残りの2体に集中すると、デーモン・ロード達は防戦一方となってしまった。

 イヴリスが衝撃を受けて口を開けている間に、2体目のデーモン・ロードまでもが切られ、消滅した。

 そして、3体目にデュラハンが迫った時、イヴリスは咄嗟にデーモン・ロードを闇の中に引き下げる。

「くっくっく……、召喚獣の強さもワシの方が上手じゃったようじゃの」

 し……信じらんない……、私が……、苦戦してる?

 イヴリスは悔しさに腕を震わせ、ジークを睨み付けるのであった。



「ま、まさかの展開! ジークの召喚したデュラハンとリッチ2体が、なんと! デーモン・ロード3体を退けました!!! そして、デュラハン達は役目を終えたとばかりに闇に消えていきます!」

「イヴリスの召喚したデーモン・ロードも決して弱いわけではありませんが……、あのデュラハンがネームドの個体、それも元々英雄だったのでしょうね! 圧倒的な強さでした! このトーナメントに参加していてもおかしくない強さを召喚獣が持っているというのは脅威以外の何者でもありません!」

「さぁ、イヴリスには後がなくなってきたか! それともここから挽回できる技を隠し持っているのか?」

「確かにイヴリスは苦しくなってきましたね……。ですが、伊達に伝説の大悪魔とは言われてません。まだ何かあるはずですよ! 期待しましょう」



 好き勝手言ってくれちゃって……。

 イヴリスの勝算は相当に薄くなっている。頼みの綱である魔法が吸い込まれてしまい、召喚獣も適わない。となれば、最後はいよいよ一番不得意な格闘戦しか残されていなかった。

「ふんっ! 私を怒らせたこと……後悔させてやるんだから!」

 イヴリスは自らの翼に魔力を込めていく。その翼は空を飛ぶためのものではなかった。明らかに大きさを増し、そして手の爪も1メル以上もの長さに伸びていった。

「ほぅ……、これはこれは、少しは楽しめそうじゃの」

 相変わらず私を見下して! 絶対に許さない!

「その減らず口を叩けないようにしてあげるんだから!」

 イヴリスは素早く移動し、ジークへ迫る。その長く、煌めく爪で攻撃を仕掛けた。

 ジークは持っていた杖を掲げ、イヴリスの爪攻撃を迎え撃つ。



「イヴリスの爪攻撃です! ここにきて、初めての直接攻撃です! しかし、イヴリスの爪ですが、なんでしょう? 黒く光っているように見えますね!」

「イヴリスの翼がより大きくなっていますよね? その影響もあって素早い移動が可能になっているようです! それにあの長い爪ですね。並の武器ではあっというまに折られてしまうでしょう! それほどの魔力が込められています! あの黒く光っているのは内包しきれない魔力が爪から漏れ出しているんですよ!」

「しかし、ジーク、イヴリスの攻撃をなんと! 手に持っていた杖で受けました! あああっっっ!!! ジークの杖が割れていきます!」

「ふんっ! その忌々しい杖もこれまでのようね」

 ジークの杖が砕け散った。イヴリスはさらに連続して攻撃をしかける。だが、その攻撃が通ることはなかった。

 キィィィンーーーーー!!!

 硬質なモノ同士がぶつかり合う音が会場に響き渡る。

「な……、何よ! それ!」

「これこそ、呪われし神剣、ヴォルグスネーガ。ワシに剣を抜かせた以上、もう……降伏は受け入れんぞ?」

 ジークの手には黄金に輝く神剣、ヴォルグスネーガが握られ、イヴリスの攻撃を受け止めているのであった。


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