レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第150話 イヴリスの誤算

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「あ……、あれがヴォルグスネーガ……」

 ジークの子孫である王はその剣の輝きに目を奪われていた。腰にはあの剣のレプリカが提げられており、見た目こそ似ている。だが、剣の放つオーラは段違いだった。

 本物のヴォルグスネーガは聖なる輝きを常に発しており、剣の周囲はそのオーラで揺らめいているように見える。

「我が祖先、ジークは未だにあの剣に捕らわれている……か……」

 最早、私には祖先の思いを成し遂げてくれる者の登場を願うよりない。だが、これまでの試合内容では、優勝候補とまで言われた大悪魔イヴリスですら、ジークに有効なダメージ一つすら与えられていない。イヴリスがこのままとは思わないが、ジークの圧倒的な強さを目の当たりにしては、彼が倒される所など想像もつかないのであった。



   ***



「はっ、そんな剣、知らないわよ! 魔法使いであるアンタが使いこなせるっていうの? 諦めてボコボコにされるといいわ!」

 イヴリスは強気の姿勢を崩さない。聖剣ヴォルグスネーガを握ったジークに襲いかかる。

「私の爪で引き裂いてやるんだから!」

 翼を用いた移動は目にもとまらぬ速さでジークとの距離を一瞬にして詰める。だが……。

 キンッ、キンッ、キィーーーーーン!

 軽やかに躱しつつ爪の攻撃を全て弾き返すジーク。

「なるほど、翼による移動力と魔力を込めた爪による引き裂き。なかなかどうしてレベルが高いではないか。

 ジークの言葉には余裕が溢れ、まるで子供でも相手にしているかのようにイヴリスの攻撃を受け止めていた。



「イヴリスの攻撃が止まりませーーーん! 目にも止まらぬスピードで攻め立てております!」

「リサさん! 確かにイヴリスの攻撃は激しいんですが、ジークも負けてはいないですよ! 彼女の攻撃を最小限の動きだけで躱しているんです! まるで熟練のソードマスターの動きのようです!」

「た、たしかに! ジークはあの激しい攻撃を一発ももらってません! なんということでしょう! 魔法職であるリッチとはとても思えません!」



「はっ、アンタの強がりもここまでなんだから!」

 イヴリスが狙いを定め、一気に攻め込む。

「だが、まだ甘い」

 ジークの言葉が発せられるや、瞬間的にイヴリスと身体が交差する。ジークの身体がイヴリスの後方へ抜けた。

 ゆっくりと振り向くジーク。

「そ、……そんな……!」

 翼が付け根からズレ落ち、イヴリスの青い血が背中から噴き出す。



   ***



「追い詰められたな……」

 イヴリスは翼を切られ、すでに満身創痍。決め手に欠け、ジークへの対抗手段がないように思われた。

「さすがの大悪魔もこうなっちゃ形無しだね」

 隣にいたヴァンパイアのキュイジーヌは冷めた目つきでその様子を見ていた。

「ねぇ? RENならこのジークに勝てそう?」

 キュイジーヌはニヤリとしながら俺の方を向いた。

「勝つさ。勝たなければならないからな」

「ふぅーん、その言い方だと……、アナタは勝ち筋がまだ見えてないんじゃない?」

 痛いところをついてくるヴァンパイアだ。確かに今の俺の実力を持ってして、ジークに勝てるかはやってみなければわからない。何せ、極大魔法ですら吸収されてしまう、召喚魔法で強力な軍勢を従えている、その上、一番得意なのは剣技でその腕前はソードマスタークラスという始末。入場時に感じた悪寒は間違ってはいなかったのだ。

「フン、ジークと当たるまでは少し時間的に余裕がある。それまでに対策するさ。そのまえにズールを確実に倒さなければならん。今はジークのことを考えている暇はない」

「アナタの愛しのイヴリスちゃんが負けちゃうよ?」

「それは仕方のないことだろう……、弱い者が負ける。それだけだ」

「ふーん?」



   ***



 イヴリスは翼を再度、生やし、また爪を使った攻撃に終始する。

 だが、待っていたのは一方的な展開であった。

 ジークは元々、剣士であった。つまりヴォルグスネーガを持つ今こそ、最も力を発揮する時だったのだ。

 打ち合う度にイヴリスの爪が断ち切られる。その度にイヴリスは爪を瞬時に生成し、なんとか打ち合うも、すぐに爪は割れてしまう。

「くっ……! こ、このっ……!」

「甘いわっ!」

 ジークの渾身の一振り。イヴリスはギリギリで身を躱すも、背中の翼に黄金の線が走った。

 一瞬の交錯を経て、イヴリスはジークと大きく距離をとった。

「覚悟せよ、大悪魔。次は貴様の首が飛ぶ番だ」

 ハァッ、ハァッと肩で息をするイヴリスの背中から大きな翼がスルリと地面に落ちていく。

「だ、だれが……、アンタなんかに負けるもんですか!」

「だが、もう打つ手もあるまい? 大人しくそこで立っているがいい! せめて一瞬で終わらせてやろう」

 ジークは構えた。その瞬間である。

「おおっ! ここにきてイヴリスの足下に巨大な魔方陣が描かれました!!!」

 イヴリスは目を閉じ、両手を天に翳し魔法の詠唱を始めた。

「こ、これは……、失われて久しい魔法と思われます! 一体何を唱えているのでしょうか?」

「この後に及んで魔法とは……、悪あがきなぞしよって……」

 ジークも魔方陣をいくつも重ねて出現させた。

「あっとー! ジークも魔方陣を出しました! この魔方陣は最初に出した魔法でしょうか? ローファンさん?」

「そうですね! リサさんの言うとおり、吸収魔法の魔方陣です! ですが、こ、これは……幾重にも重ねられた魔方陣から、例のブラックホールの威力が段違いになるかと思われます! イヴリスの巨大な魔方陣を見てブラックホールも大きくするつもりなんでしょう!」

 今再び、二人の魔法が交錯しようとしているのだった。

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