レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

文字の大きさ
163 / 219
第9章 勇者RENの冒険

第161話 打ち合い

しおりを挟む


「そこじゃっ!」

 バッジの剣は時間を経過すればするほど冴えわたってきているようだった。いや、単純にボクの動きに慣れてきたという所だろうか?

「くっ……」

 ボクの自慢の爪にヒビが入ったため、すぐに魔力を込め直して修復する。

 バッジのヴァンパイアキラーとも言える聖剣はボクの爪よりも固く、何度か打ち合うと、爪が割れてしまうのだ。しかもあの大盾は、何度も攻撃を受けているにも関わらず全くビクともしなかった。

 ボクの心には後悔の念が湧いてくる。この数万年、周りに敵がいないことをいいことに全く実戦や訓練なんてしてこなかったのだ。

 あの時、動いてさえいれば……、などと思ったところで、目の前に強敵が現れてからでは遅かった。

「嬢ちゃんの動きは洗練されてねぇんだ。全く戦い慣れてない。こんなんじゃぁ、すぐに動きが読まれちまうってもんだ。いいか? 熟練の戦士ってのは攻撃するタイミングを読まれないよう、動きに隠すんだ。ホラッ! こうやってやるんだよ!」

 バッジの一撃を受け止めた爪が3本も断ち切られる。瞬時に魔力を流して爪を復活させるが、バッジの猛攻は止むところを知らなかった。さらなる攻撃によって、ボクの爪はどんどん叩き折られていった。たまらず、大きく後方ジャンプして逃げると、細い魔法を連射しつつ、バッジが近づいて来れないよ牽制した。

 ふぅーっ、ふぅーっ……。

 ボクはこの期に及んでもなお、バッジを強敵として認めたくはなかった。だが、もうあとがないのも事実だった。

「ボクをここまで追い込むとはね、感心したよ。だけど、勝利だけは譲れないんだ。ボクはこれでもヴァンパイア族の王だからね」

 バッジは眉毛をピクリと動かした。

「ほぅ、まだ何かあるって事だな。受けて立とうじゃねぇか! おめえは攻撃がどんなものだろうと、この盾で受けきってみせる。さぁ、きやがれ!」

 バッジの決意を聞いて、ボクも諦めた。

 できることならこの技は使いたくなかったんだけどな……。

 ボクは全身を脱力し、魔力を自分の心臓に集めた。ドク、ドク、と心臓が力強く早く動き始める。やがて心臓の動きに合わせて手足がビクッビクッと動き始める。その鼓動はどんどん速くなっていき、それに合わせてボクの手足が長く変化していく。そしてこの体も大きく変化し、着ている洋服も、みるみるうちに逞しい体毛へと変化した。

「あーーーっと! キュイジーヌの様子がおかしくなっています。何があったのでしょうか? こ、これはっ! キュイジーヌの体がどんどん大きくなっていきます!」

「これはおそらく、変身ですね! 人狼族も人間のような見た目から狼のような姿に変身しますが、ヴァンパイア族も変身を持っていると聞いたことがあります! 私も初めて目にしますか、どのような変身なのか非常に興味深いですね!」



 キュイジーヌの体長は優に倍以上、3メルを超える大型の魔獣と化していた。体中を覆い尽くす体毛は黒く、長く、魔力を帯びている。あの美しかった顔も、巨大になったコウモリのような顔つきに変化していた。そして、細かった腕は巨大なコウモリの翼になっている。違いといえば、鋭く長い爪が生えており、その爪の太さも変身前とは比べ物にならないほどに太くなっていた。

「なんてこった……、こりゃあ……タフな戦いになりそうじゃねぇか」

 バッジは額に汗をたっぷりとかきながら、変身したキュイジーヌを見つめる。そして、すぐさま背中の大樽に手を突っ込むと大きな魔石を2つとりだした。一つは盾に、一つは剣の柄に、その魔石を突っ込んだ。

「クハハッ! ボクが変身したからにはオマエは生かして帰さないよ! この爪の餌食となるがいい!」

「あぁぁーーーッッッ!!! キュイジーヌが巨大化したにも関わらず、まるで消えるようなスピードです!」

 ドシィッッッ!!!

「重い一撃がバッジに……、な、なんと! バッジが防いでいます! あの大盾で変身、巨大化したキュイジーヌの攻撃を防ぎましたーーーッ!」

「くっ……、なんだってんだい! その大盾は……、忌々しい」

「へっ! こんなこともあろうかとパワーアップのための魔石を用意しておったんじゃ。まさか初戦から使うとは思わなかったがよ」

「見てください! リサさん! あの大盾の下には地面に突き刺せるよう尖っているのですが、床の石が数枚ほども砕け散っています! これは凄まじい威力ですよ」

「のわっ! 本当ですね! 攻撃する方も凄まじければ、それを防いだ方も凄まじい防御力です! あの大盾すごすぎですね!」

「凄いのはあの大盾だけではないですよ。バッジの腕もパンパンに膨れ上がった状態です。キュイジーヌの攻撃をまともに防ぎ切るだけのパワーを持っているというわけです!」



「へっ、正直、ギリギリだったけどよ。その攻撃さえ防いじまえばこっちのもんよ!」

 バッジは盾の横からキュイジーヌの翼を攻撃する。もちろんキュイジーヌも黙っているわけもない。応戦するべく、その剣と激しく打ち合う。

「な、なんとっ! パワーアップしたキュイジーヌですが、バッジは互角に戦っています!」

「バッジが変身した後に使用したあの魔石の影響が大きそうですね。あれを剣にもはめ込んでいましたから、相当に出力が上がっているものと思われます!」

「さぁ、またしても激しい打撃戦になりました! 果たしてこの激闘を制するのはどちらなのかッ!」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...