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一番星は泡沫を泳ぐ
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しおりを挟む翌朝、カーテンの隙間から射し込む光で目が覚めた。腰を始め、足やお腹など身体の至るところに違和感があるけれど、そんなことは気にならないぐらい多幸感に満ちた目覚めだった。
じとと視線を感じて顔を上げれば、何やら不満そうな律。珍しく僕より先に起きていたらしい。
「おはよう……?」
「……おはよ」
何に対して不機嫌なのか分からないけれど、とりあえず声をかければ額に唇を落とされる。向かい合った体を抱き締めた律は、小さな声で不服そうに呟いた。
「今日誕生日なの?」
「うん」
「はぁ……、何で言わないんだよ」
信じられないとため息を吐き出す彼。あまりにも大袈裟なリアクションに笑いが溢れた。
「笑い事じゃないんだけど」
「だって、僕の誕生日なんてどうでもいいよ」
「俺の誕生日にも同じことが言える?」
「は?」
東雲律の誕生日と僕なんかの誕生日を一緒にしないでほしいんだけど。聞き間違いかと思って顔を顰めれば、律は天を仰いだ。
「紡の誕生日は俺にとっても大切な日なんだよ」
「……なんで?」
「本当に自分のことになると無頓着になるね」
首を傾げた僕の鼻を摘む律は寂しそうに笑う。
「好きな子の誕生日なんて祝いたいものでしょ」
「好きな子……」
「紡、俺に愛されてるってそろそろ自覚して?」
「ッ、」
いざ面と向かって言葉にされると、やっぱり気恥ずかしい。
ぼっと火が出たように顔が熱くなって、ようやく律が不機嫌になっていた理由をちゃんと理解した。
神さまとオタクの関係は、僕の中からなかなか抜けきらない。こういうところも少しずつ変えていかなきゃ。
僕らはきっと、言葉が足りなすぎる。いらぬ誤解を生みたくないなら、もっとコミュニケーションすべきなのだろう。まあ「僕ら」というよりも、勝手に空回りしがちな「僕が」なんだけど。
「ごめん、これからはちゃんと言うようにします」
「そうしてください」
僕の考えが変わったと理解した律は笑って許してくれる。そんな心の広い彼に甘えるように擦り寄れば、何も言わずに抱きしめてくれることにきゅんとして、またひとつ、好きの理由が増えていく。
「あのさ、律に……」
「ん?」
「その、せっかくのクリスマスだし、プレゼントを買ったんだけど、……えと、律は何でも手に入るし、何がいいのか分かんなくなって、だから、あの、気に入らなかったら全然いらないって言ってくれて構わないし、」
「紡」
記憶の彼方に放り投げられたままだったクリスマスプレゼント。その存在を思い出したから口に出してみたはいいものの、寝起きの頭ではどういう風に渡すか整理できていないし、自信を持って堂々と渡せるかと言われると全くそうではなくて。
もしもの時に傷つかないようにつらつらと言い訳を並べて心をガードしていれば、落ち着かせるように背中をぽんぽんと叩かれる。
「紡からのプレゼントは何でも嬉しいよ」
「……ほんと?」
「うん、それにプレゼントなら昨日貰ってるから他に用意してるなんて思ってなかった」
「昨日……?」
「紡をくれたでしょ」
昨夜の情事を思い出して、かあっと朱に染まる。顔が見れなくなった僕はするりと律の腕の中から抜け出すと、隠していたクローゼットの扉を開けた。紙袋を取り出して手に取ったはいいものの、やっぱり渡すのを躊躇ってしまう。
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