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3章 コスで反逆

50話 会議

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このお話は、冒険者ギルドの訓練場にいた時間のお城のお話です、会議室ではある議題で王様と上級貴族が集まっていました。
議題はもちろん僕です、伯爵の屋敷が孤児院のエリナに襲撃されたと知り、今後の対策を検討するために招集したんです。


「不敬罪だ!何としてでも探し出し処刑するべきだ、それでよろしいでしょう殿下」


1人の貴族がテーブルを叩き宣言します、それに習って半数が賛成しました、でも残る半数は賛成しません、不正をしていたのは伯爵だと反対意見を述べる人が出てきたんだ、でも上級貴族たちは不正も裁くが罪は罪として見るべきと怒りを机にぶつけます。


「しかし、伯爵が不正をしなければなかった事ですぞ、屋敷破壊はやり過ぎたとは言え死者は出ておりません、これは当然の怒りでしょう」

「何を言っているのだ!平民が貴族に手を上げたのだ、それだけでも罪なのだぞ」


どちらも引かず、それを聞いて正当だと言う者まで出て来てしまいます、結局どうするのか、それを委ねる為に全員が国王陛下に視線を向けました、国王陛下は腕を組んで唸っています。


「半数が不敬罪か・・・しかしな、その者を捕まえるのに王都中を混乱させるのは良くないだろう」

「それには及びません、今ドラソル伯爵は心に傷を負い別館で療養中ですが話は聞くことが出来ました、犯人の居場所は突き止めております、そこに兵を送れば逃げられることなく拘束できるでしょう」


不正の内容を知っていた上級貴族がその中にいて、後押しとばかりに孤児院の件を口にします、孤児院を包囲すれば民衆も混乱させずに実行できると安心しました。
それならば被害も出ない、全員が賛成しようとしたその時、国王陛下がため息を付き注目を集めます。


「そなたら考え方を変えぬか、不正をしていたのはこちらだぞ、怒るのも無理ない事だろう、屋敷を破壊したのはやり過ぎだがな」

「しかし殿下!貴族として力を誇示しなければなりません、平民を立ててはなりませんぞ」


貴族たちは全員一致で頷きます、国王陛下はそれを聞きため息を更に深く付きました、貴族たちはその反応を見てお言葉を待ちます。


「力を誇示するのは大切だ、しかし悪いのはこちらなのを忘れてはならない、力でねじ伏せるばかりでは民は付いてこないのだ、上に立つ者としての責務を果たすべきだろう」


国王陛下はそう言った後、プラチナクラスの冒険者が近々ゴールドの試験を受ける事を宣言しました、その者が他国に行き騎士にでもなったら、それは大変な痛手です。
貴族たちはその情報を聞いて悩み出します、騎士の中には元冒険者も多く、問題の冒険者たちは騎士たちにも人気と小さく呟きます、騎士たちは国を離れる事はしないかもしれません、でも貴族たちに不満を漏らす者が出る可能性はあると陛下は言いました。


「使者が出なかったのは襲撃した者の良心だろう、今は伯爵の屋敷崩壊という小さな物で済んでおる、ここで間違えばその者は良心を失い被害が大きくなる、そうなれば取り返しがつかんぞ」


今は動かず時期を待つ、独断専行は控えるように指示します、貴族たちが退席後、国王陛下は背もたれに深く寄りかかりある名前を告げます、それを聞いていたのは部屋に入って来た赤髪の女性だけです。


「相変わらずの親ばかだねアザラーン」

「早かったなネミナ、ギルドの情報感謝するぞ」


女性は向かいの椅子に座り「良いのよ」っと一言口にします、懐からお酒を取り出し飲み出しました、国王陛下は自分にもと手を出します、やれやれっとネミナが酒瓶を差し出します、一口飲んだ国王陛下は良い笑顔を見せます。


「美味いな、さすが冒険者ギルドのマスターだ、良い物を飲んでいる」

「そう思うだろアザラーン、しかしそれは安物だ、ある場所の酒場で銅貨50枚で買えるんだ」


これがそんなに安いのか?とても信じられないとワインの瓶を見ます、ネミナはもっと良い話もあると他の酒とグラスを机に出しました、それを見て国王陛下は身を乗り出して驚きます。
それをネミナは眺めご満悦で説明を始めました、飲みたいだろうとグラスにもお酒を注ぎます。


「透明なこのガラスというグラス、酒の色がとても綺麗だな」


グラスを眺めた後、まずは色のない透明のお酒を口にします、ネミナは香りが良いだろうと一言質問し、陛下はそれに頷きます、そして他のお酒も飲み満足気な顔をしました。
ネミナは美味しかっただろうと当然の質問をして、陛下も当然と返し本題を話せと急かしました。


「その酒とグラス、作る気はないか?」

「なるほどな・・・つまり貴族を黙らせるわけだな」

「そうよ、あなたは今の貴族たちに嫌われてるけど、そんなのは力でねじ伏せるの、その為の力よ」


ありがとうと、陛下は口にし息子たちも安心できるとお酒を飲みます、それを聞いてネミナは貴族にもその心を持ってほしいと愚痴をこぼして孤児院のエリナの話をしました、弟のリュウが影で支えて暮らしていると布で顔を隠します。


「嘘な気はよせネミナ、良い話なのは分かるだな」

「それすらも思わない貴族たちばかりだから困っているの、自分の息子たちですら道具扱いよ、今動かないよ手遅れになるわ」


ネミナは学園都市に向かったアサラン様を心配します、それをきき陛下は饒舌になります、最後にはアサランが欲しい物は出来るだけ手に入れたいと宣言したんです。


「相変わらずアサランには甘いわね」

「そうだな、アサランの専属メイドから聞いて孤児院を守ろうとした、これは違う理由も出来たようだ」

「そう言ってくれると思ったわ、これでギルドも協力出来る、次はもっと良いお酒を期待しててね」


ネミナは少し残ったワインの瓶をテーブルに置き退席しました、国王陛下はそのワインを持って掲げます。
部屋の明かりに照らされ、残ったワインはキラキラと光り綺麗でした。


「ワタシについて来る者たちは、恐らくこれくらいしかいないだろう・・・国もこれくらい綺麗ならよいのにな、貴族たちは自分の保身ばかりで嫌になる・・・アサランにそれを見せたくないと言うのに、上手くいかん」


学園都市に入学させたのも、その間に変えるつもりだったと残ったワインを飲みます、継承権1位と2位に継がせるためにも急いでいました。
残りのお酒を飲むとテーブルに置くと、陛下は立ち上がり天井を見上げ、これからどうするかとため息を付きました。
世界は今平和です、でもきな臭い話は絶えない、国が不安定だと刈り取られるかもしれない、そう不安を口にして統率は難しいと悩みを口にしたんだ、ネミナが協力してくれるとは言え成功するとは限らない、そう思って不安なんです。


「大人は頭が固い、せめて子供たちが仲良く出来る場所を作りたいな、大人が邪魔をしない様にしなくてはいけない・・・ネミナも協力してくれる」


酒も美味かった、影で動いてみるかと執事やメイドを集めました、貴族で協力してくれる者を知る為です。
1人1人の名前を呼び感謝の言葉を伝えました、執事やメイドたちは跪いてお心のままにと頭を下げます。


「皆には苦労を掛ける、しかしワタシには信用できる者がそなたらしかいない、頼んだぞ」


全員が返事をして部屋を出ます、残った執事は国王陛下の隣に立ち、味方は必ずいますよっと伝えました、陛下はそうだろうかと信じていない感じです、いれば今の様に敵だらけにはなっていない、そう思うからです。


「考えすぎですよ陛下、自分たちの様なお方はいます、陛下はこの国で一番偉いのですよ」

「トップの顔をしているだけだ、大臣たちの政策や方針を聞き、それを進めるかの判断するのがワタシの仕事、だからそれを変えたいのだ」


先代たちは上手くやっていた、しかしワタシにはその力が無い、だから貴族たちが傲慢になってしまった、このままでは他の国に飲み込まれる、そう思っているんです。
そしてそれは知らぬ間に近づいている、誰も知らないけど着実にです。
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