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2章 歩み
26話 実力の違い
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「あの女、聖女であるワタクシにあの態度、処罰してやりたいわ」
ただの村人PTで長くいるだけの分際なのに、ダンジョンで成果を上げて目にもの見せてやるとやる気でしたわ。
昨日の事を思い出し、イヤな気分のまま準備をしてダンジョンの前に来て、丁度そいつらとアレストがいたから、ワタクシは睨んでやりましたの。
「そちらも今からダンジョンですか?」
「あなたには関係ないでしょうアレスト、それとも同行してくれるのですか?」
「同行はしないけど、一言警告してあげるよイーシン」
「警告ですって?」
アレストは、20階よりも深く潜るなと言って来て、そうしないと死ぬとまで警告してきたわ。
ワタクシたちが死ぬなんて、そんなに簡単に起きる事ではありませんわ。
「な、何をふざけた事を言ってますのアレスト」
「僕は本気だよイーシン、今日21階に降りたら君たちは死ぬ、それが暴言でない事は分かるでしょ?」
「予言と言う事なのかしら?」
「そうだよイーシン、強さとか関係なく君たちは死ぬ、それは確実だ」
そんな事が本当に起きるのかと、普通の人なら思うかもしれませんが、既に何度もその言葉通りになっているから、ワタクシは背筋がゾクッとしたの。
彼の言葉を無視して聖剣を抜きに行けば、間違いなくそうなっていたのはワタクシも分かっていて、だからその言葉の通りにするなんて嫌だったから、言葉を覆すと宣言してあげたのよ。
「それが出来ないから、君たちは昨日負けたんだよ」
「うっ!そ、そんな事はありません、ワタクシたちは奇跡を起こしてきました、今回も」
「その奇跡はね、僕が用意したものだよイーシン」
アレストがありえない事を言って来て、ワタクシたちは信じられませんでした。
でも、7つ星に上がるまでの依頼でピンチになると、必ずアレストが何かをしている事を思い出し、ワタクシは冷や汗が止まりませんでしたわ。
「で、でも・・・戦ってきたのはいつもワタクシたちでしたわ」
「そうだね、だから君は信じないんだ、自分が偉いと思っているからね」
「思っているのではなく、そうなのですわよアレスト」
「だから君たちは死ぬんだよ、そのおごりは危険なんだ」
聖女であるワタクシは、偉いし強いのですから当然なのに、アレストに言い返せませんでした。
言うだけのアレストとは違うと自分に言い聞かせ、ワタクシは必ず生きて帰ると宣言しました。
「じゃあここでお別れだね、もう会う事は無いから、せめて安らかに眠ると良いよ、さようなら」
「「「「「え!」」」」」
「僕が言葉でしか伝えられないのは確かにそうだよ、信じた人はその結果が変わり立証も出来ない・・・でもね、どうしても止めるほどの責任はないし、信じないならそれまでなんだ」
ジェミナとアラートに訓練が出来なくて残念と言い残し、アレストはダンジョンに入って行ったから、ふたりは入り口を見てかなりがっかりしていたわ。
その後にワタクシを見て来て、二人の顔には止めようって書いてありましたわ。
「ふたりとも、イヤなのですか?」
「だって、あれだけ言っているんですよイーシンさん」
「そうだぜ、イーシン止めようぜ」
「あなたたち、それでも上位の冒険者ですか、あれしきの脅しで屈してはなりませんわ」
アレストはあんな事を言って脅してくるので、ドスモスも抵抗があったようにワタクシも嫌だったわ。
まるですべてを知っているような嫌な感じを受け、だからこそ追放したんです。
「聖剣を取りにいかなかったのも、ワタクシの意志であいつの言葉ではないわ、たまたまなのですわよ」
「で、でも死んじゃうんですよ」
「そうならない為に、みんなで頑張るのですわジェミナ」
その為のPT強化なのだからと、ワタクシたちもダンジョンに入りました。
そして、10階まではそれほど苦労しないで進めたのだけど、11階からは素早い動きのウルフたちが相手で、15階に到達する頃にはダメージと疲労が溜まり始めたの。
「な、なんでこんなに強いんだ」
「普通のウルフじゃないと言う事ですわエレミナ、ポチもっと攻撃を加えなさい」
「は、はい!」
ポチを前衛の更に前に置き回復の時間を作りますが、エレミナもアラートも限界に近く、これは20階とか関係なく進めないと思いましたわ。
見えるウルフたちを倒したポチに警戒を続ける様に指示を出し、ワタクシは皆に提案することにしましたの。
「みんな、疲労もかなり溜まってきましたし、一度戻りましょうか?」
「「え?」」
「あたいは賛成だ、ここのモンスターは普通よりも強いようだしな」
「ん、賛成」
ジェミナとアラートはありえないって顔をしてきたけど、これはアレストの言葉を聞いたからではなく、ダンジョンのモンスターが強かったからで、戦略的撤退というだけと説明しました。
元から乗り気ではなかった二人は、何か言いたげでしたけど頷いてくれました。
「じゃあ戻りましょう」
10階の転移魔法陣まで5階も戻らないといけないので、ワタクシたちはかなり疲労しましたが、何とか魔法陣に到着して戻る事が出来ました。
でも、ギルドに向かうと既に明かりが消え閉まっていて、2階には明かりが見えるけど、扉を叩いても降りてこなかったの。
「何よ、ワタクシたちが戻ってきたのに、出迎えもしないなんてありえませんわ」
「もう良いからさイーシン、宿に行こうぜ」
「ん、疲れた」
「そうね、明日文句を言ってやるわ」
フラフラのままで、ワタクシたちは村の中心部に向かい借りていた部屋で休みました。
次の日、ギルドに向かったのだけど、まだ疲労が残っているワタクシたちの足取りは重く、ギルドの外で訓練をしている子供たちが見えて、その呑気さにイライラしてきましたわ。
「こ、これって」
「姉ちゃんたち、どうしたの?」
「あ、あの君たち・・・その動きって?」
「これはね、アレスト兄ちゃんが教えてくれたんだよ」
アラートが驚きながら子供たちに聞いていて、ワタクシは見た事の無い型の動きとは思いましたがそれだけでした。
それが適当でないのは、剣士のアラートが凄いと一言口にしたから分かったけど、ポチは分からないようで首を傾げていたわ。
「動きに無駄が無い、これは実戦を考えた動きだな」
「た、ただの訓練だろう?」
「本気で言ってるのかポチ、お前本当に剣士か?」
「な、なんだよアラート」
そんな事も分からないのかと、ダンジョンを出る前に見せた表情をアラートはしていて、もしかしてと思っていたら、アレストたちが現れましたのよ。
生きてるワタクシたちを見て驚いていたけど、喜んでいる様には見えなかったから、ワタクシは堂々と言ってやることにしましたの。
「予言が外れたわねアレスト、ワタクシたちは生きていますわ」
「いやいやイーシン、それを喜ぶのは君たちで、僕は逆にがっかりだよ」
「な、なんですって!」
「だって、君たちがここにいると言う事はさ、20階まで到達しなかったんでしょ?」
どうしてそれが分かるのか、ワタクシがそれを聞く前にアレストが説明を始め、それだけギリギリの戦いに陥ってしまった事を語ったの。
限界だったから戻ってきたと予想して、ワタクシの反応で確信を持ったみたいよ。
「そんなレベルで、良くアルシュナたちに喧嘩を売ったね」
「な、なんですって」
「彼女たちはね、昨日60階のボスを倒したんだよ、君たちとは実力が違うんだ」
ワタクシよりも強いのは知っていたけど、そこまでの差を聞かされ驚いたわ。
でも、それよりもアレストが見下して来たことが許せなかったわ。
「わ、ワタクシは聖女なのよ、強さなんて関係ないほどに偉いのよ」
「まったく、まだそんな事を言ってるのイーシン、君はもう聖女じゃないでしょ」
「な、なんですって」
「だって、ドスモスに純潔を奪われてその資格を失ったじゃないか」
痛い所を突かれ、ワタクシは何も言えなくなったわ。
聖剣を取りにいかなかったもう1つの理由、それが聖女としての資格を失った事だったんです。
「本来は、勇者と契りを交わせば聖女としての力は残り、更に力も上がるはずだったけど、君はその判断を誤り候補の内から純潔を無くしたんだ」
「だだだ、黙りなさい」
「黙っても結果は変わらないよイーシン、君はもう聖女じゃないんだよ」
見事に真実を言われたワタクシは、その場から逃げるしか出来ませんでした。
エレミナたちも付いて来て、これからどうするのかと聞いて来たのよ。
「もうおしまいよ、ワタクシには何もできないわ」
「だ、だけどよ、まだ冒険者としてなら上がれるだろう」
「エレミナ、教会はそんなに甘くないわ、アレストが報告したら使者がここに来て、ワタクシは聖女としての位をはく奪されておしまいなの」
もう何もかもが終わってしまい、PTを解散しようと提案しました。
エレミナは、それを聞いてその場から動けず、フィンはその場に座り込んでしまったわ。
「情けない奴らだな、もっと自分に自信を持てよな」
「アラート?」
「イーシン、昨日ダンジョンから撤退を決めた時、どうしてそんなに簡単に決断できたんだ」
「それは、危険と判断したからよ」
それは違うとアラートは即決して来て、アレストの忠告があったから無理をしなかったと言ってきたわ。
結局、アレストには逆らえないのが分かり、ダンジョンから戻る時アラートはガッカリしていたそうです。
「確かに死ぬのは怖いさ、だけどあれだけの啖呵を切ったんだぞ、どうして戻る事が出来るんだよ」
「それは」
「あんたは怖いんだよイーシン、だからアレストをPTから外して安心感を得たかったんだ」
何でも知っているアレストが傍にいれば、聖女としての資格を失ったことも悟られると怖かったのは事実で、アラートにそこもツッコまれました。
失っても足掻いて見せろと言われたけど、ワタクシにそんな力は無くて、その場に座り込んでしまって動けなかったわ。
「これで勇者PTなのかよ、情けないにも限度があるぜ」
「アラート、あなたには分からないわ」
「悪いんだがイーシン、PTが解散なら好きにさせてもらう、行こうぜジェミナ」
「そうですね、短い間でしたけどありがとうございました」
ジェミナとアラートは、アレストの所で訓練をすると言い捨てて部屋を出て行き、ワタクシは涙が止まりませんでした。
そんなワタクシの肩に手を置いたのはフィンで、顔を上げたら泣いていましたわ。
「イーシン」
「フィン、あなたも城に戻りなさい、宮廷魔法士に戻るのよ」
「でも・・・分かった、楽しかった」
「そうね、楽しかったわね」
何もかも失い、ワタクシは教会に戻って処罰を受ける事にしたの、ポチはエレミナに任せる事にしたけど、きっと奴隷にして働かせるでしょう。
アレストではありませんが、ワタクシの残された道は田舎の修道院で暮らす未来しかなく、それを拒めば命を失う選択肢しか残っていませんでしたわ。
ただの村人PTで長くいるだけの分際なのに、ダンジョンで成果を上げて目にもの見せてやるとやる気でしたわ。
昨日の事を思い出し、イヤな気分のまま準備をしてダンジョンの前に来て、丁度そいつらとアレストがいたから、ワタクシは睨んでやりましたの。
「そちらも今からダンジョンですか?」
「あなたには関係ないでしょうアレスト、それとも同行してくれるのですか?」
「同行はしないけど、一言警告してあげるよイーシン」
「警告ですって?」
アレストは、20階よりも深く潜るなと言って来て、そうしないと死ぬとまで警告してきたわ。
ワタクシたちが死ぬなんて、そんなに簡単に起きる事ではありませんわ。
「な、何をふざけた事を言ってますのアレスト」
「僕は本気だよイーシン、今日21階に降りたら君たちは死ぬ、それが暴言でない事は分かるでしょ?」
「予言と言う事なのかしら?」
「そうだよイーシン、強さとか関係なく君たちは死ぬ、それは確実だ」
そんな事が本当に起きるのかと、普通の人なら思うかもしれませんが、既に何度もその言葉通りになっているから、ワタクシは背筋がゾクッとしたの。
彼の言葉を無視して聖剣を抜きに行けば、間違いなくそうなっていたのはワタクシも分かっていて、だからその言葉の通りにするなんて嫌だったから、言葉を覆すと宣言してあげたのよ。
「それが出来ないから、君たちは昨日負けたんだよ」
「うっ!そ、そんな事はありません、ワタクシたちは奇跡を起こしてきました、今回も」
「その奇跡はね、僕が用意したものだよイーシン」
アレストがありえない事を言って来て、ワタクシたちは信じられませんでした。
でも、7つ星に上がるまでの依頼でピンチになると、必ずアレストが何かをしている事を思い出し、ワタクシは冷や汗が止まりませんでしたわ。
「で、でも・・・戦ってきたのはいつもワタクシたちでしたわ」
「そうだね、だから君は信じないんだ、自分が偉いと思っているからね」
「思っているのではなく、そうなのですわよアレスト」
「だから君たちは死ぬんだよ、そのおごりは危険なんだ」
聖女であるワタクシは、偉いし強いのですから当然なのに、アレストに言い返せませんでした。
言うだけのアレストとは違うと自分に言い聞かせ、ワタクシは必ず生きて帰ると宣言しました。
「じゃあここでお別れだね、もう会う事は無いから、せめて安らかに眠ると良いよ、さようなら」
「「「「「え!」」」」」
「僕が言葉でしか伝えられないのは確かにそうだよ、信じた人はその結果が変わり立証も出来ない・・・でもね、どうしても止めるほどの責任はないし、信じないならそれまでなんだ」
ジェミナとアラートに訓練が出来なくて残念と言い残し、アレストはダンジョンに入って行ったから、ふたりは入り口を見てかなりがっかりしていたわ。
その後にワタクシを見て来て、二人の顔には止めようって書いてありましたわ。
「ふたりとも、イヤなのですか?」
「だって、あれだけ言っているんですよイーシンさん」
「そうだぜ、イーシン止めようぜ」
「あなたたち、それでも上位の冒険者ですか、あれしきの脅しで屈してはなりませんわ」
アレストはあんな事を言って脅してくるので、ドスモスも抵抗があったようにワタクシも嫌だったわ。
まるですべてを知っているような嫌な感じを受け、だからこそ追放したんです。
「聖剣を取りにいかなかったのも、ワタクシの意志であいつの言葉ではないわ、たまたまなのですわよ」
「で、でも死んじゃうんですよ」
「そうならない為に、みんなで頑張るのですわジェミナ」
その為のPT強化なのだからと、ワタクシたちもダンジョンに入りました。
そして、10階まではそれほど苦労しないで進めたのだけど、11階からは素早い動きのウルフたちが相手で、15階に到達する頃にはダメージと疲労が溜まり始めたの。
「な、なんでこんなに強いんだ」
「普通のウルフじゃないと言う事ですわエレミナ、ポチもっと攻撃を加えなさい」
「は、はい!」
ポチを前衛の更に前に置き回復の時間を作りますが、エレミナもアラートも限界に近く、これは20階とか関係なく進めないと思いましたわ。
見えるウルフたちを倒したポチに警戒を続ける様に指示を出し、ワタクシは皆に提案することにしましたの。
「みんな、疲労もかなり溜まってきましたし、一度戻りましょうか?」
「「え?」」
「あたいは賛成だ、ここのモンスターは普通よりも強いようだしな」
「ん、賛成」
ジェミナとアラートはありえないって顔をしてきたけど、これはアレストの言葉を聞いたからではなく、ダンジョンのモンスターが強かったからで、戦略的撤退というだけと説明しました。
元から乗り気ではなかった二人は、何か言いたげでしたけど頷いてくれました。
「じゃあ戻りましょう」
10階の転移魔法陣まで5階も戻らないといけないので、ワタクシたちはかなり疲労しましたが、何とか魔法陣に到着して戻る事が出来ました。
でも、ギルドに向かうと既に明かりが消え閉まっていて、2階には明かりが見えるけど、扉を叩いても降りてこなかったの。
「何よ、ワタクシたちが戻ってきたのに、出迎えもしないなんてありえませんわ」
「もう良いからさイーシン、宿に行こうぜ」
「ん、疲れた」
「そうね、明日文句を言ってやるわ」
フラフラのままで、ワタクシたちは村の中心部に向かい借りていた部屋で休みました。
次の日、ギルドに向かったのだけど、まだ疲労が残っているワタクシたちの足取りは重く、ギルドの外で訓練をしている子供たちが見えて、その呑気さにイライラしてきましたわ。
「こ、これって」
「姉ちゃんたち、どうしたの?」
「あ、あの君たち・・・その動きって?」
「これはね、アレスト兄ちゃんが教えてくれたんだよ」
アラートが驚きながら子供たちに聞いていて、ワタクシは見た事の無い型の動きとは思いましたがそれだけでした。
それが適当でないのは、剣士のアラートが凄いと一言口にしたから分かったけど、ポチは分からないようで首を傾げていたわ。
「動きに無駄が無い、これは実戦を考えた動きだな」
「た、ただの訓練だろう?」
「本気で言ってるのかポチ、お前本当に剣士か?」
「な、なんだよアラート」
そんな事も分からないのかと、ダンジョンを出る前に見せた表情をアラートはしていて、もしかしてと思っていたら、アレストたちが現れましたのよ。
生きてるワタクシたちを見て驚いていたけど、喜んでいる様には見えなかったから、ワタクシは堂々と言ってやることにしましたの。
「予言が外れたわねアレスト、ワタクシたちは生きていますわ」
「いやいやイーシン、それを喜ぶのは君たちで、僕は逆にがっかりだよ」
「な、なんですって!」
「だって、君たちがここにいると言う事はさ、20階まで到達しなかったんでしょ?」
どうしてそれが分かるのか、ワタクシがそれを聞く前にアレストが説明を始め、それだけギリギリの戦いに陥ってしまった事を語ったの。
限界だったから戻ってきたと予想して、ワタクシの反応で確信を持ったみたいよ。
「そんなレベルで、良くアルシュナたちに喧嘩を売ったね」
「な、なんですって」
「彼女たちはね、昨日60階のボスを倒したんだよ、君たちとは実力が違うんだ」
ワタクシよりも強いのは知っていたけど、そこまでの差を聞かされ驚いたわ。
でも、それよりもアレストが見下して来たことが許せなかったわ。
「わ、ワタクシは聖女なのよ、強さなんて関係ないほどに偉いのよ」
「まったく、まだそんな事を言ってるのイーシン、君はもう聖女じゃないでしょ」
「な、なんですって」
「だって、ドスモスに純潔を奪われてその資格を失ったじゃないか」
痛い所を突かれ、ワタクシは何も言えなくなったわ。
聖剣を取りにいかなかったもう1つの理由、それが聖女としての資格を失った事だったんです。
「本来は、勇者と契りを交わせば聖女としての力は残り、更に力も上がるはずだったけど、君はその判断を誤り候補の内から純潔を無くしたんだ」
「だだだ、黙りなさい」
「黙っても結果は変わらないよイーシン、君はもう聖女じゃないんだよ」
見事に真実を言われたワタクシは、その場から逃げるしか出来ませんでした。
エレミナたちも付いて来て、これからどうするのかと聞いて来たのよ。
「もうおしまいよ、ワタクシには何もできないわ」
「だ、だけどよ、まだ冒険者としてなら上がれるだろう」
「エレミナ、教会はそんなに甘くないわ、アレストが報告したら使者がここに来て、ワタクシは聖女としての位をはく奪されておしまいなの」
もう何もかもが終わってしまい、PTを解散しようと提案しました。
エレミナは、それを聞いてその場から動けず、フィンはその場に座り込んでしまったわ。
「情けない奴らだな、もっと自分に自信を持てよな」
「アラート?」
「イーシン、昨日ダンジョンから撤退を決めた時、どうしてそんなに簡単に決断できたんだ」
「それは、危険と判断したからよ」
それは違うとアラートは即決して来て、アレストの忠告があったから無理をしなかったと言ってきたわ。
結局、アレストには逆らえないのが分かり、ダンジョンから戻る時アラートはガッカリしていたそうです。
「確かに死ぬのは怖いさ、だけどあれだけの啖呵を切ったんだぞ、どうして戻る事が出来るんだよ」
「それは」
「あんたは怖いんだよイーシン、だからアレストをPTから外して安心感を得たかったんだ」
何でも知っているアレストが傍にいれば、聖女としての資格を失ったことも悟られると怖かったのは事実で、アラートにそこもツッコまれました。
失っても足掻いて見せろと言われたけど、ワタクシにそんな力は無くて、その場に座り込んでしまって動けなかったわ。
「これで勇者PTなのかよ、情けないにも限度があるぜ」
「アラート、あなたには分からないわ」
「悪いんだがイーシン、PTが解散なら好きにさせてもらう、行こうぜジェミナ」
「そうですね、短い間でしたけどありがとうございました」
ジェミナとアラートは、アレストの所で訓練をすると言い捨てて部屋を出て行き、ワタクシは涙が止まりませんでした。
そんなワタクシの肩に手を置いたのはフィンで、顔を上げたら泣いていましたわ。
「イーシン」
「フィン、あなたも城に戻りなさい、宮廷魔法士に戻るのよ」
「でも・・・分かった、楽しかった」
「そうね、楽しかったわね」
何もかも失い、ワタクシは教会に戻って処罰を受ける事にしたの、ポチはエレミナに任せる事にしたけど、きっと奴隷にして働かせるでしょう。
アレストではありませんが、ワタクシの残された道は田舎の修道院で暮らす未来しかなく、それを拒めば命を失う選択肢しか残っていませんでしたわ。
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