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2章 のんびり

40話 国王会議その2

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「皆さんは知っていますか?ウインサード領での戦いを」


話しはそこから始まり、誰もが勝利したことを知っていましたわ。
ですが、その理由は誰も知らず、ウインサード領の力で勝ったと言ってきましたわ。


「それが違うのですのよ」
「ラランディア、それはどういう事だ?」
「ヴェルモット様、実はワタシたちはその戦いに介入していましたのよ」


喋り方がいつもの様になっているラランディア様は、カオーズ国との戦いの詳細を説明したのですわ。
得意げに話す内容は、誰もが信じられない事で、だからこその4万と言う数だったのですわよ。


「それだけの自信があり、あの勝利は自分たちのおかげと言いたいのか?」
「その通りですのよヴェルモット様」
「ほう、撃退もその兵士たちで成した事だから、説得力もあると言いたいのだな」
「それだけではなく、ウインサード領の領主ウインサード殿にも使い方を教えましたのよ」


ワタクシが説明を行い、藁人形での援軍はすばらしい事が分かり、ヴェルモット様も納得したのです。
自分たちの強みを全て見せて説明した事で、誰もが納得したのですが、ララバル殿だけはダメでしたわ。


「まるで、他にも何かある様ですよね、どうしてそこまで余裕があるのかな?」


そこが一番の問題で、ワタクシは緊張で視界が揺れ始めましたわ。
ですが、ここで失敗しては意味がないので、落ち着いて表情を作りましたわね。


「それはですわね、相手が勇者だからですわ」


ワタクシの言葉に、ララバル殿も顔を強張らせましたわ。
それは、勇者の強さは人の領域を超えていて、剛力のフイン殿でも閃光のアジュラ殿でも勝てないからですわ。


「確かにそうかもしれない、しかし男相手だぞ」
「今までならそうでしたわ、ですがウインサードの戦いでは違いましたのよ」
「タバサの言う通りなのよ、あそこの戦いでは、勇者がいなかったにも関わらず負けそうだったのよ」


だからこその力の増強だと、ラランディア様が宣言しました。
そして、ワタクシは緊張が更に増してきて、怒り心頭な方たちを前に倒れそうですわよ。


「ラランディア、我々を侮辱するのか?」
「ササカの言う通りよ、ワタシたちは負けないわ」


公爵家の3家が怒りをぶつけて来て、予想通りの動きに少しは落ち着きましたの。
ここで言う事は、物資の支援は安全策を取る為の準備で、藁人形たち4万は撤退に使う事だったのですわ。


「皆様の強さは知っていますのよ、それに最強部隊に閃光と言う、最強のお1人が加わるのですから、まずないのは分かりますのよ」
「だが、お前はそれが起きると言いたいわけだなラランディア」
「起きなければ良いのですのよ、ですがゼフォルト国での相手は、勇者のいる最強国ですのよ」
「なるほど、用心すると言う事か」
「その通りですのよヴェルモット様」


攻められてるのは、あくまでもゼフォルト国で、その戦いで我が国最強の軍と、閃光を失う訳にはいかず、撤退の助けを4万に託す案は魅力と、ラランディア様が賛成したのですわ。
隠れるのに適した部隊とも伝えて、皆さんから賛成を勝ち取りましたわね。


「では、物資はラランディアに任せるとして、援軍はよろしく頼む」


席から立ち上がり、敬礼してヴェルモット様に返事を返しましたが、ヴェルモット様が退出するとワタクシたちに視線が集中しましたわね。


「あらあら、皆さん怖いですのよ」
「何を企んでいる、ラランディア」
「伯爵程度がでしゃばるじゃないの」


公爵家の3家はかなりケンカ腰で、他の伯爵たちもそれに習っていますが、それにはこちらも言い返す他ありませんわ。
結果を出すことがワタクシたちの反撃で、こちらの援軍の力を使わず、勝って見せる様ににこやかに伝えましたわ。


「勝てないと言うのか?」
「そうですのよササカ様、このままでは勝てませんのよ」
「大きく出たな」
「そうでもありませんのよインジューラ様」


それだけの結果が出ているからこそと宣言し、だからこその余裕だと勝利宣言ですわ。
それだけの自信を持ったラランディア様を見て、さすがに言い返す人はいません。


「もし負けそうでも、ワタシの部隊が支えますのよ、だから全力で戦ってくださいなのよ」
「言うじゃないか、やってやるよ」
「その意気ですのよササカ様」


勝てばそれで良い、ワタクシたちはそこまでを見越して宣言しました。
ですが、相手は勇者ですから、きっとワタクシたちの部隊は出撃する事になり、誰も反論できなくなるのですわ。


「お前も、物資の配給を止めたら許さんからな」
「他の支援もよ、それを忘れないでねラランディア」
「勿論ですインジューラ様」


全てを完璧にこなす、それが出来てこその宣言で、失敗したら責任を取る為に貴族の爵位は無くなるかもしれませんわ。
公爵家の3家を敵にするのですからそれ位は当然で、次の手を打つために会議室を出てある人の待つ場所に向かいます。


「やりましたのよタバサ」
「良かったですわラランディア」
「ええ、これで後はあのお方を落とすだけですのよ」


そう、ここまでのお膳立てが出来るラランディア様だからこそ、ワタクシは頼ったのですわ。
そうでなかったなら、ワタクシは自分で駆け上がるつもりでしたの、でもエイリュとの仲が深まって失敗が怖くなったのですわ。


「平気でしょうか?」
「大丈夫ですのよ、あのお方は分かってくれますのよ」


部屋の前に来てノックをすると、扉を開けたのは使用人ではなくそのお方でしたわ。
その小さなお方に、ワタクシは緊張が蘇りましたわね。


「ラランディア待っていたわよ」
「シャンディー様、遅れましたのよ」
「良いのよ、どうせ公爵家が離さなかったでしょ」


あははっと、第5王女のシャンディー様が笑って部屋の中に招いてくれましたわ。
ラランディア様は、ワタクシの動揺を気にもしないでソファーに座り、話をする為の準備に入ります。
お茶をメイドに淹れさせ、ワタクシは何とか座りましたけど、ドキドキですわ。


「それで、作戦は何処まで順調かしら?」
「予定通りでしたのよシャンディー様」
「まぁそうでしょうね、あの人達は力技しか知りませんものね」


そう、上の方たちは男に勝てないとは思っていませんわ。
現実に起きなければ理解できず、手遅れになるのですわ。


「だからこそ、実績を作り必要最低限の対策を作ったのよね」
「そう、それこそが最低ラインでしたのよ」
「ええ、これで負ける事はなくなったけど、問題の場所が明るみになるわ」
「そうなのですシャンディー様、ですのでお支度をおねがいしますのよ」


公爵家が動く前に次の手を打つ、そう考えてシャンディー様に動いて貰います。
シャンディー様は、継承権の無いお方で、13歳と成人はしていますけど、権力を持っていません。


「楽しみね、防衛重視の部隊の誕生なのよ」
「はいシャンディー様」


シャンディー様が嬉しそうですが、守る要となる重要な役割を作る事と、あの村を守る王族の誕生なのですわよ。
ワタクシが王族になりたかった時期もありましたが、エイリュとの平和な暮らしが魅力でしたのよ。
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