上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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2章 1年1学期前半

40話 先生会議

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「皆さん、急な会議に参加いただき感謝します」


バルサハルの挨拶から始まったが、オレたち戦闘科の教師は質問をしたくて仕方ない。
急な呼び出しはいつもの事だが、今回は他のダンジョン科の担任も出席していて、オレたちに文句を言う訳では無いようだった。


「この顔ぶれを見る限り、只事じゃなさそうだな」


戦闘科の教師は、他種族で構成されていて、オレは猫族のライネック種だ。
他にはエルフやドワーフとさまざまだが、それぞれ名誉貴族としての地位は貰っている。


「まぁ形だけの貴族階級だがな」


この国はダンジョンヒューマンが何よりも優先される。
他の国を支配した力だ、優先するのは分かるが、協力関係の国から来た者は皆同じ気持ちだろう。

「今回の集まりだって、オレたちに何かさせたいだけだろ?」


ダンジョンは、探索する者が強くないと成立しない、言わば支えあうパートナーと言う奴だ。
だからこそ、オレたちは両国の為に協力しているんだが、こいつらの態度にイライラもしているんだ。


「この集まりはいつもと違うのです、それと言うのも」
「能書きは良いんだよバルサハル、この時期は生徒たちの試験で忙しいんだ、早く済ませてくれ」
「分かっていますよジャンガル、まずはこのダンジョンを見てください」


魔法の杖を使い、バルサハルはダンジョンの立体図を作り出した。
オレはそれを一目見てなかなか優秀な生徒だと思ったな。


「だが、バルサハルは違うようだな」


生徒の文句が止まらず、これ以上のモノを作らせないと言い始め、俺たち戦闘科の教師は嫌な感じを受けたぞ。
あれは確実に何か悪い事をしている感じで、こいつらは変わらないとガッカリした。


「このダンジョンを作った者がダンジョンバトルを挑まれました。それもよりにもよって相手はどちらも公爵家で、とてもまずいのです」


この会議に参加している全員が驚きの声を上げたが、その中にはオレも当然入っていた。
1年でいきなり生徒同士のバトルが行われるのは前例がない、それだけ優秀なのかとオレは興味が湧いた。


「凄い生徒もいたもんだな」


ダンジョンヒューマンとして生まれた平民の子供は、大抵それほどの実力を持ち合わせていない。
だからバルサハルは困っていて、何としてでも勝たせたくないんだ。


「そうしないと勝つ実力か、面白いな」


普通は伸ばしてやるのが教師だろうとオレは思ったが、バルサハルはそんな事は考えず公爵家2人の名前を発表した。
しかし、1年生で公爵家と言えば話題になっているから誰か分かっている、問題の子の方を教えてほしいと思ってしまったな。


「一人は男性貴族のジャケン・ジャダル、そしてもう一人は女性貴族のケリー・メイルトバレンです。どちらもかなり優秀なダンジョン貴族ですよ」
「ほうほう、ではバトルを受けた者もそれくらいの実力なのじゃな?」


校長のジ・バラオンが長い髭を触って質問したが、バルサハルは応えなかった。
言いたくない程の実力なのかと、オレは他の教師たちに視線が向く。ダンジョン科は全員困った顔が並び、戦闘科は面白いと笑っていた。


「正直、まだ分からないのです」
「どう言うことなのぉバルサハルゥ~」
「それが今回集まって貰った理由ですよイクサーノ、彼のダンジョンにはまだ誰も入っていません。彼は平民の出なので誰も入りたがらなかったんですよ」


やれやれって仕草をしているが、それはおかしいだろうとオレは思ったぞ。
戦闘科の生徒は余っているし、ローテーションを考え無くて良いのなら、他種族のPTは喜んで入る程だ。


「こいつら、またやったのか」


他の他種族メンバーは分かっているようだが、これは嫌がらせをしていただけなんだ、オレたちの様に見下されている生徒なんだろう。
生徒を指導し伸ばして成長させるのが教師の仕事だ、コイツらは自分たちの保身しか考えてない。


「そんなことはどうでも良いぞバルサハル、我は先に進めてほしいな、結局この会議はなんで開いた?」
「せっかちですねホビロイ、そのダンジョンは未知数なのです。なのでバトルを開く際お力を貸していただきたい」


それを聞いてダンジョン貴族側はかなり騒ぎ出した。
1年で生徒同士のバトルをするのは初めての事だ、普通は騎士の取り合いで優秀な方を選んで貰う為に行うもので、大体2年の後半が通例だ。


「もしかして、こいつらズルをするつもりか?」


なにをしようとしているのか、それは台座に仕掛けを施すつもりだ。
ダンジョンの最後に出てくるモンスターにブーストを掛けるつもりだ。


「インチキしてでも勝たせたいんだろうが、それこそ公爵家に失礼だろう」


とばっちりはごめんだと、オレたちを呼ぶなと言いたい、いや言ってやろうと手を挙げたぞ。


「それならオレたちには関係ないな、退出させて貰うぞ」
「いえ、普通教科を教えている他種族の先生方には、PTの選定をお願いします。なるべく優秀な人を選んでください」


ダンジョンを調査する為にもとか言わなければ、オレも素直に了承したが、バルサハルは出来るだけ細かな情報が欲しいと言ってきた。
オレと同じ騎士科で、斧やハンマーを教えているドワーフのガージャ先生が腕を組んで唸り始め、オレも悩んでしまった。


「何を迷っているのですか?誰でも良いのですよ」
「そう言うが、契約をしてないとは言えそうそうおらんのじゃよ」


ガージャがそう返し魔法科担任のエルフ、シャレールの顔をチラッと見た。
シャレールは長い青髪をいじりながら、いるにはいると答えたが、嫌そうなのは言うまでもない。


「気性に少し難ありの生徒でも構いません、まずはダンジョンの構造をもっと知らなくては行けないのです」


バルサハルはかなり焦っている様で、オレは何となく理解した。
調査させる部下を無くしたと言う噂は本当だったんだ。


「分かったわ、でも失敗してもこちらのさいにしないでよね」
「分かっています。では頼みましたよ」


会議が終わったので、オレたちはいつもの場所に集まり、再度の会議を始めた。


「やはりあやつらはダメじゃな、教師と言う者を理解しておらん」


別の会議室でガージャがテーブルをたたき怒り出し、他のメンバーも同じ様に怒っていた。
オレたちの様に生徒を指導する為にいるわけではないで仕方ない事ではある。


「だがあいつらは自分の出世しか見ていない。生徒たちが不便だ」


参考になる良いダンジョンがあれば、自分のダンジョンに反映させようと必死過ぎだ。


「仕方ないさガージャ、この国はそうやって出来ている。ダンジョンの善し悪しで決まるんだ」


良いダンジョンを作り国を繁栄させてきたのだから仕方ない。
それは騎士たちも同じで、より強くなる為にダンジョンに挑戦して来た。


「だが、最近は酷過ぎるだろう」
「仕方ないわ、ダンジョンが良くないのだもの」


ダンジョンが向上していないせいで、新しい国王が教育を強化するために、各ダンジョン貴族の中で優秀な人材を教師にした。
しかし、それでも進展がなくてあいつらは焦っているんだ。


「そんな事は分かっておる、それでおぬしはどう思うとるんじゃジャンガル」
「それはもちろん応援してやるさ、その生徒はいじめにも挫けずがんばって成績を出したんだ、しっかりと評価されるべきだろう」


オレの答えは決まっていた、そして他の先生たちもだ。
今の学園は腐っている、ダンジョンを担当している奴らに力が偏りすぎているのがいけないんだ。
いくら自分たちのダンジョンに進展が無いからって、八つ当たりも良いところだ。


「私もそれには賛成よ・・・でもね、選べる生徒がいないのは確かなのよ」


シャレールが長く尖った耳を下げガッカリして来たが、時期が遅すぎるのは全員が分かっていることだ。


「そうじゃな、優秀な生徒はもうダンジョンを決めておる」


優秀な生徒は、ダンジョン科の生徒と協力しあっている。
今残っているのは、他種族か成績が低い者で、もう一つは性格が合わず貴族と仲違いしてしまった者たちだ。


「そうだな、出来るだけの事をするしかないだろう。素質はあるがそれを持て余している生徒・・・あいつらかな」


オレの想像している生徒たちは、他の先生も同じ様で皆が変な笑顔見せて来た。
あいつらはほんとに実力はあるんだ、だが少し性格がきついんだ。


「問題の生徒に負担が掛かりそうだが仕方ない」
「まぁそやつらしかいないじゃろうな、才能はあるんじゃ、才能はな」
「はぁ~そうねぇ・・・でも、その子のダンジョン楽しみね」


気持ちを切り替えたのか、シャレールが嬉しそうな顔をして来たぞ。それどころではないのだがオレも楽しみではある、どんな生徒だろうな。


「まぁ、どうせバトルもそれほど評価されんだろう。オレたちは影ながら応援してやろう」


みんなが頷きオレたちも解散した。


「優秀な生徒を卒業させれば、国からポイントを大量に貰えるダンジョン科の教師と違い、オレたちには何もないが味方くらいはしてやりたいな」


アイツらはそれを使って研究が出来るが、間違いを正そうとはしない。
一度嫌った相手を評価なんてしないだろう。


「他国の民だったオレたちが言っても、聞き届けてくれん、国王が変わったと期待したんだが、どうなる事かな」


去年から新しい国王が継いでいるが、今の教師をみれば分かってくれると期待したい。
この国は血筋ではなく、ダンジョンの強さで国王が決まる。
今の教師たちは去年までの国王が選んだ者たちで、純血派と言う派閥に偏っていた。


「まぁオレたちの育てた生徒が困らなければそれで良い。他種族を気に入る生徒なんてそういないし、あまり期待はするものじゃない」


バルサハルが嫉妬するほどのダンジョンを作った生徒を見るのは、とても楽しみではある、早く見てみたいモノだ。
貴族は自分よりも優秀だと取り込むか潰そうとする。オレたちに害がなければ良いが、その生徒は平気なんだろうか。
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