上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

文字の大きさ
66 / 132
3章 1年1学期後半

66話 野望

しおりを挟む
「よし!みんな行くぞ」


みんなにかけ声と共に槍を掲げると、みんながそれに合わせ武器を掲げてくれたよ。
俺の名はザード、本来家名のある高貴な者なのだが俺にはない、家が没落したからと言うわけではなく、国自体が無くなったと言った方が良いだろう。


「いよいよねザード」
「ああロロフィ。いよいよ始まるぞ」


この国に負け、俺たちの国が従属国になってしまったからだが、そんな事を気にしてはいなかった。
俺は、この国の言いなりになっているのが気に入らなかった、それを無くしてやるんだ。


「先頭はどうするのザード、アタシでも良いけど、いつものようにあなたが行く?」


双槍使いの女性エルフ、ロロフィに言われ俺は先頭を歩いた。
俺のPTは4人ともエルフで、みんな俺と同じ目標を持っている。


「暴れたかったけど、あなたがそう言うなら良いわ」
「指揮は俺がするんだ、戦うのはロロフィが軸だぞ」


俺たちは故郷に戻りたいんだ!この国に攻め落とされ、今は植民地になっているが別にそこはどうでも良い、俺たちは帰って家族に会いたい。
この国は人口がほしくて領地を広めた、普通に統治しているから苦しい訳じゃないが、10歳になると兵士としてここに連れてこられ、許しが無ければ故郷には帰れない。
ここを卒業すれば、どこかの貴族の騎士になる事が決まっていてそこでやっと許しが出て帰れるが、大抵は帰れない。


「分岐だ、みんな注意していくぞ」
「さて、どんなモンスターかしらね」
「どんなのでも良いぞ、オイラたちは同じぞ」
「ん」


俺たちはこの国の為に働きたくなかった、ダンジョンに入るのも生活の為だけで、それほど積極的ではなかったんだ。
しかし今は違う、同じような境遇の者が、ただの1人で頑張っているのを見たからだ。
彼の名前はアレシャスと言って、平民からダンジョンヒューマンになり、二度と家族に会えない孤高の者だ。


「手前にはいないが、奥だろうな」
「ちょっと見て来るわ」
「頼んだぞロロフィ」


俺たちよりもひどい事に、彼の故郷に帰る許可は絶対に降りない。それなのに、彼はダンジョンを学年1のモノにして頑張っている、だから俺たちも考えを変えたんだ。
ロロフィが見に行った分岐の左右にはモンスターがいたが、50センチほどの二足歩行のトカゲで、剣と盾を持ってウロウロしているだけだった。


「彼のダンジョンならば見た目以上に注意が必要だが、ここは他の者のダンジョンだから違うだろう」
「トカゲマンって事ね」
「ああ、いつも通りのスタイルで行くぞ」


別に俺が調べた訳ではないぞ、アレシャス殿がくれた資料に載っていたモンスターだ。
なんでもコボルトよりは強いらしいのだが、今の俺たちなら敵ではない。弓士のフィーンと魔法士のリューンに目で訴え、遠距離から攻撃してもらった。


「遠くからの攻撃、これで相手がどう出るのかで俺とロロフィの次の動作が決まる」


そう思っていたんだが、相手のモンスターはそれを受けて消滅してしまった。
アレシャス殿のダンジョンならば、その攻撃はダメージにならず地面に落ちるだけだが、ここでは倒す程の威力と言う訳だ。


「当たった」
「さすが我の魔法ぞ、楽勝ぞ」


無口なフィーンと、故郷の方言を使うリューンがモンスターを倒して喜んでいる。
だがこれくらい出来なければ、アレシャス殿のダンジョンではやっていけないぞ。


「2階層のあのダンジョンでは、こいつらよりも強い奴がウジャウジャ出てくる。当たったとか倒したと喜ぶ暇などはないからな」


だからなのか、二人はここぞとばかりに喜んでいる。
今の内だけだから、しばらくはそのままにしているが戻ったらそれも出来ない。


「ほらほら二人とも、それくらいにして先行くわよ、これからが長く・・・って、そんなことないんだったわね、どうもいつもの癖が」


ロロフィが後頭部をさすり、恥ずかしそうにしているが俺も同意見で、どうも余裕がありすぎて調子が出ない。
まだスキルも使ってないし、本気を出していないから余裕がありすぎる。先ほどから見ていたダンジョンより、ここは更に程度が低いみたいだ。


「だが油断はダメだ、みんな指名されたことを忘れるな、ここでやられては元も子もない」


ダンジョン公表会で、代表に出るなんて他種族ではあり得ない事だった。
1年生のダンジョンではあるのだが、それでもあり得ない、それなのに俺たちは今ここに立っている。


「これに出た生徒は、この後に長期の休みで遠出の許可が下りやすくなる。俺たちはそれがどうしてもほしい」
「そうよね、今はお金にも余裕があるし、許可を勝ち取るためにもがんばらないと、行くわよフィーン、リューン」


ロロフィが俺を抜いて先頭を歩き出した、それだけみんな故郷に帰りたいんだ。
前の俺たちでは帰ることが許可されても旅費がなかったが、今は十分に資金があるし良い報告だって出来る、これもアレシャス殿のおかげだな。


「また倒したぞ」
「ん、簡単」
「う~ん、なんだか拍子抜けね、ほんとにこれって優秀なダンジョンなの?」


しばらく進んでいると、先頭のロロフィがつまらなそうに言ってきた、フィーンとリューンも同じ感じだ。


「確かに、トカゲマンばかりだし、部屋に入っても小だからグリーンコブラが多数いるだったな。あれなら、広範囲攻撃が得意なフィーンとリューンがいるから余裕だな」


コブラ系は毒を持ち強さ的に言えばゴブリンくらいで、それが10匹は生息している部屋だったんだが、普通苦戦する場所でも、フィーンのメイン武器である弓矢を雨のように降らせる武技や、リューンのファイアーサークルと言った範囲魔法の敵ではない。


「ん、弓最高」
「調子に乗りすぎよフィーン」


フィーンが握り拳を胸の前で作りガッツポーズを取っていると、ロロフィがフィーンの頭をグリグリしていた。
リューンが抑えているが女性同士仲が良いのを、俺はやれやれって顔して笑顔で見守っているよ。
そして、しばらく同じ感じでダンジョンを進んでいると、どうやら大物の登場だ。


「中部屋ね、ザード中に何がいるかしら?」


ロロフィが俺に聞いてきたが、俺は部屋をのぞきながら生唾を飲んだぞ。
中のソイツはそれほどまでに強敵で、前の俺たちだったら手も足も出ずに負けるだろう。


「エキドナがいる、奴はコブラよりも強い毒を使うから、ゴブリンキングよりも厄介だぞ」


俺の答えを聞き、みんなもかなり緊張し始めたぞ。
エキドナは2種類の毒を使う、持続的にダメージを与える物と身体の自由を奪う物だ。


「持っている槍に付与されているのが自由を奪う毒で、エキドナの唾が持続ダメージだ、皆注意していくぞ」
「良いじゃない、やっと面白くなってきたわ」


ロロフィが双槍を鞘から抜き、早くも戦闘体勢を取る、そしてフィーンもリューンも杖を構えてやる気だ。
だが3人とも忘れているぞ、ここはアレシャス殿のダンジョンではない。
だから、やっと面白くなったのでは無くこいつで最後なんだ、つまりはボスって感じだな。


「こっちよヘビ女!武技【双槍蓮華】」


ロロフィが部屋に入るなり、エキドナに連撃系の武技をお見舞いした。
エキドナが悲鳴を上げ反撃も出来ずに倒れ、そこにフィーンの弓武技である【サイクロンアロー】が入り、エキドナの身体を3本の矢が貫いていった。


「ギャギャーー!!」


エキドナは悲鳴を上げ、激しい痛みのせいで地面に暴れ出すがまだ消滅はしなかった。
それを確認して、リューンが風の魔法を放ち、風のハンマー【エアープレッシャー】でエキドナを押し潰しとどめを刺したんだ。
俺の出番は無く、圧勝と言って良い成果だが、ロロフィが怒り出したぞ。


「なによ、全然弱いじゃない、ザードどういう事よ!」


話しが違うと俺に迫ってきているが、俺に言われても困ると思ったぞ。
返しが怖いからそこは言わないが、ドロップ品を回収しながら俺は当然だと応えて置く。



「何よ当然って、どう言う事よっ!!」
「言っただろロロフィ、注意するのは毒だったんだ、相手がそれをする前に倒したから何事もなかった。俺たちが先制できたおかげだ」
「ま、まぁそうね・・・じゃあ次も同じ感じで行きましょ」


そう言って先頭を歩いて行くが、この先にあるのは恐らく出口で、戦いは終わったんだ。
そしてそれは直ぐに現実になり、ロロフィが怒り出す。
俺たちはまだ本気を出していない。武技は使ったが、俺たちの得意な魔法との合わせ技を使わずに終わってしまった。司会者が俺たちを賞賛してくれたが、正直俺たちとしては不完全燃焼だよ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...