上 下
67 / 132
3章 1年1学期後半

67話 完全勝利への道

しおりを挟む
1年生の順位が、ジャケン君にケリーさんにイサベラと、順当な順位が付いて解散となったんだけど、僕はそこで嫌な空気を感じてシャンティと寄り道をしています。
そこには20人位の人が集まっていて、6年生の騎士科と魔法科の生徒たちだとシャンティが教えてくれます。その生徒たちはラーツたちを取り囲み困らせていたんだよ。


「な、何の用ですか先輩たち」
「言わなくても分かってるだろ毛むくじゃら、その装備を置いていけ」


ラーツたちの装備を奪う為に大会を見に来たのかと、僕はシャンティと一緒に怒りが込み上げてきます。
別に渡してもどうと言う事はないけど、あんな奴らの渡すのは抵抗があるんだ。


「でも、今渡してラーツたちに更に支援するのも手かな?」


ラーツたちは、必死で手に入れた装備だから嫌だと、6年生たちに話して断ってるけど、相手はそんな事は知らないと言い張って来て、渡さないのなら力ずくと言い始めた。


「あいつら、アレシャス様」
「分かってるよシャンティ」


少し出遅れた僕は、行くよっとシャンティに声を掛け、集まる場所に乗り出します。
囲んでいる6年生は気づいてなくて、ラーツたちは僕たちを見て助かったと笑顔を見せてくれたけど、その顔は引きつってて泣きそうです。


「やぁラーツ、みんなもご苦労様。何をしてるのかな?」


何をしてるんだっと、僕は叫びたいのを抑えここは冷静に対処するよ。
シャンティは尻尾をボサボサにして怒ってるけど、僕はラーツたちにご苦労様と手を振り、6年生たちは無視したんだ。6年生たちは振り向いて僕を見るけど、その視線はとても嫌な感じだった。


「良い所に出て来たな平民上がり、こいつらに装備を引き渡す様に言え、さもないと力ずくで行くぞ」


腰の剣に手を掛けて来て、いつ攻撃を仕掛けて来てもおかしくない状態になってしまった。
僕なら余裕で倒せるし、シャンティでもひとひねりだけど、こいつらにはそれ以上の報いを受けさせたくなりました。


「暴力はいけませんよ先輩」


戦う意思がない事を手を挙げて知らせながら、装備は渡せないことを伝えます。
何を言ってるんだと6年生たちは怒って来るけど、そこである提案をしたんだよ。


「お前のダンジョンに入れだと?」
「そうですよ先輩、ラーツたちが手に入れたのは知ってますよね、自分の装備位自分で揃えないとね」


そんな事するわけないと言って来るけど、僕はそこで焚き付けの言葉を発します。
自信がないなら仕方ないから譲ってあげると、軽いジャブを浴びせ鬼畜で怖いダンジョンだから怖気づくのは分かると、シャンティにダンジョンに入る様に指示を出したんだ。


「め、メイドがダンジョンに入るだと!?」
「何を驚いてるんですか先輩、僕たちにとってあそこは訓練の場所で日常にある事です、そうだよねシャンティ」
「はい、日常の事なので怖いと感じた事はありません」

話しに乗ってくれたシャンティだけど、確実に相手を威嚇してます。
ラーツたちだけでなく、メイドにまで負けていると感じたのか、さすがの6年生も挑発に乗って来て、入ってやろうじゃないかって言い出したんだ。


「ちょ、ちょっとセイロー話が違うわよ」
「うるさいぞエマーナ、ここまで言われて黙ってられるか」
「そ、そうだけど、それじゃ時間が掛かるじゃない」


6年生同士で言い争いを始めてしまい、僕たちは答えを待ちますが、これは掛かりそうだねっとラーツたちに手招きをしてこちらに来てもらった。


「災難だったねラーツ」
「すみませんアレシャス殿」


災難だったねと笑い合い、6年生たちを見守る体勢になったけど、そこで更に参加者が増えます。
騒ぎを聞きつけて来たバルサハル先生たち教師で、ぞろぞろと大人数が通路に集まってしまったよ。


「いったいこれは何の騒ぎですかっ!!」


一喝して騒ぎを納めるけど、僕に視線を向けて来て事情を説明させようとしてくる。
僕が主犯と決めつけている感じで、イラっとしながら僕は説明したんだ。


「そうですか、あの装備が欲しいと」
「僕のダンジョンで手に入るので挑戦してほしいんですけど、先輩たちは時間が掛かる問題で揉めています」
「分かった、6年生たちはアレシャス君のダンジョンに入りたまへ」


バルサハル先生ではなく、後ろにいた先生が指示を出し6年生たちは返事をしたよ。
どうやら担任なのか、後ろにいた金髪の男性教師は強制力を持ってるみたいです。


「ですけど、先生」
「口答えをするな、夏休みの期間中だ何も問題ないだろう」
「は、はい」


夏休みの期間中と聞き、どうしてか僕が注目され、先輩たちはなるほどって顔してます。
その顔は、手に入らなかった時は全て用意しろと言っているのが分かった。


「なるほどね、そっちがその気なら」
「君もそれでいいな」
「はいもちろんです。ですけど、その間ラーツたちはダンジョンに入れませんから、外出の許可をもらえますか?」


交換条件として聞こえたのか、その先生は簡単に了承します。
彼はきっと僕が分かってないと思ったのかもしれませんが、分かっています。
6年生はダンジョンには挑戦しません、文句を言えば装備は僕が用意するからです。


「何もしなくても手に入り、先輩たちは他の何かに時間を使えるから賛成した。そう言う事だよね」
「ラーツさんたちを外に追いやり、アレシャス様はポイントを得られない。やってくれましたねこいつ」


ヒソヒソと話しているのに、シャンティが少し威嚇を上げました。
こらこらっと、後ろで攻撃体勢に入ろうとしたシャンティを抑え、僕はこれで良いと目で訴えたよ。


「どうして止めるのですかアレシャス様」
「こう言った輩はね、準備して徹底的に叩き潰した方が良いんだ」


それを知らないシャンティは、僕に不利過ぎると感じて怒ってしまった。
だけどね、僕はダンジョンに遺物を入れずに済んでホッとしてる、あいつらが何を言い出すか分からないと思ってるんだ。


「ではそれで良いですね、解散しなさい」


バルサハル先生の声に6年生たちは無言で離れて行き、ラーツたちは申し訳なさそうにしてきた。
すみませんと頭を下げたのはその後すぐで、僕は逆にお礼を言いました。


「な、なんで感謝なんてするのよ、アタシたちのせいで、あんなに高い装備を用意しなくちゃいけないのよ」
「ツィーネの言う通りですよアレシャス殿、先輩たちはダンジョンには入りませんよ」


分かってるとにこやかに返事を返し、僕がどうして了承したかを説明します。
ラーツたちは、それはそうだと顔に出してきたけど、それ以外にも目的はあるんだ。


「平均を上げる?」
「そうだよラーツ。学園でスキルがあまり習得できないのなら、装備を上げるしかない」


シャンティに教えた事以外も、6年生たちには目立ってもらいたくて、装備以上に色々するつもりです。
このままだと、サイラスやラーツたちばかり強くなり、批判がそちらに向くかもしれないからで、今回の様な事が起きる前に僕が解決させたいんです。


「文句を言って来た人には、もれなくプラチナソードを進呈しようと思ってるんだ」
「「「「「「嘘っ!?」」」」」」


驚くみんなの声が揃ったけど、僕は本気も本気で、更には裏で情報も流すつもりです。
学園の騎士生徒全員が持つ事になれば、あれは特別ではなくなり、更にはっと少し言葉を溜め指を立ててみんなに話したよ。


「その装備を使えば、今のダンジョン科の作るダンジョンは、とても楽な難易度に変わり難しくしろと意見が出て来る、そうなれば」
「なるほど、サイラスさんたちの吹かせた風をそちらの方に向けるのですね」
「その通りだよシャンティ、みんなが強くなってくれれば僕は目立たない」


みんなの為に限界まで作ったダンジョンの数値は90。あれは流石に上げ過ぎたと、反省していたところだったんです。
減点もいつまでしてくれるか分からないから、僕はそちらにも使える対策を打った訳です。


「正直、装備なんていくらでもあるし、邪魔な人たちはそれで黙らせるよ」
「いいのかしら?」
「まぁアレシャス殿が言ってるんだし、それで良いんじゃないかな?」


ラーツたちは納得がいってない様でしたが、不満と言う物は溜まっていく物で、今の内に自分たちから遠ざけて損はありません。
でも、6年生に先手を打たれ、僕は少し甘かったと感じてます。


「もっと先の先を見て、対策を立てないといけません」
「アレシャス様?」


移動を始めて僕は呟いたけど、シャンティには少し聞こえてしまったみたいで、何でもないと歩き出したんだ。
上級生のダンジョンを見て基準を作らないといけない、みんなを食事に誘いながら思っていました。
そして、僕はある重大な事実を知る事になるんです。
しおりを挟む

処理中です...