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3章 1年2学期

75話 落ちこぼれの集団

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「そ、そんな!?急に言われても困ります」


ボクは今とても困っています。
ボクのダンジョンに入ってくれていた騎士たちに、もっと強いモンスターを用意しろと言われ焦っているんですよ。


「そんなに難しいことではないだろうリリーナ・ピキー殿、1体で設置すれば済む事だ」
「それはそうですけど、ポイントにならないから困るんです」
「それなら、10体でも強いのを出せるようにダンジョンを作ってくれ。そうでないなら、俺たちは他のダンジョンに行かせてもらう」


リーダーの騎士さんが無理を言ってきます。
彼らの言う強いモンスターはキングクラスで、それが10体設置で出てくれるのならボクは困っていません。


「初めからキングクラスを設置すれば可能ですけど」
「まぁそう言うことだ、考えて置いてくれよな」


騎士たちが離れ、ボクは床に座り込んじゃったよ。


「10体でキングクラスを設置しても、今のダンジョンだと弱体化しちゃうんだ」


どうすればいいのか分からず、ボクは泣きそうです。


「このままじゃ家を継げない、それに男性貴族にも結婚を拒否されちゃう・・・どうすれば」


ボクの家は子爵家で、長女なのでかなり期待されてるんですよ。
そのボクが成績が上がらないんじゃ、家は没落してしまい、他の女性貴族の下に付く、生産ダンジョン派になってしまいます。


「伯爵や公爵家の下に付くならそれでもいいけど・・・このままじゃ、ボクと同じ爵位の家に仕える事になっちゃう。下手をしたら、もっと下の生産貴族になっちゃうよ」


ダンジョンヒューマンにはそう言った戦いがあって、負けた者は下のダンジョンを作るように指示をされ、ポイントのほとんどを取られるんだ。


「野菜や肉を生産するだけのダンジョンなんて、花が無くてボクは嫌だよ」


しかも悪い事に、家を継げない子爵家や騎士爵や男爵家がやっていることで、長女のボクは家の名に傷をつけてしまうんです。
このままでは、どこかの村を領土に貰って一族から没落してしまいます。


「まだ2年に上がってもないのにどうして・・・それもこれも、いきなり武器が強くなった騎士たちのせいだよ。アレがなければもっと時間があったのに、どうしてみんなプラチナソードを持ってるのよ!」


休みが終わって最初の授業で、ボクはビックリしました。
どこのPTでも、騎士はプラチナソードを持っていて、自分の目を疑いました。


「でも、言われたんだからポイントにならないけど、1体だけは強いのを召喚して、他は今まで通り10体にするしかないかも、先延ばしにしてるだけに感じるなぁ」
「ちょっとあなた、よろしいかしら?」


ダンジョンに新しくゴブリンキングを設置していると、他の女性生徒が声を掛けてきました。
その子は、ボクよりも爵位の高い伯爵家の女子で、後ろにはボクと同じ子爵家や男爵や騎士家の子が何人かいます。


「マルトーク伯爵家のエマル様・・・ボクに何かご用ですか?」
「用があるから呼んだのですよリリーナさん、ちょっとこちらにいらして」


エマルさんに手を掴まれ連れていかれたのは会議室でした。他の生徒も一緒で、みんなかなり深刻そうな顔をしています。
正面の壇上にエマル様が立ち、ボクたちはそれに向かって座り緊張が走ります。


「普通じゃないのは顔を見れば分かるけど、ボク怖くなってきたよ・・・お話というのは」
「貴方もご存じでしょう、騎士たちの装備のことですわ」


周りの生徒が頷き、全員が暗い顔をします。つまりここにいる生徒は、みんな同じ悩みを抱えていると言うことです。
ボクはどうしてこうなっているのか原因を聞くと、ある人物の名前を聞き驚いたんです。


「平民から上がってきたアレシャス?」
「そうですわ、1学期に公爵家のジャケン様とケリー様にバトルを挑まれた、あの殿方ですわよ」


彼がバルサハル先生に言われ長期休暇の間、生徒をダンジョンに入れていたそうです。
そして、ドロップした武器を騎士たちに配っていたのが始めで、広まるのはとても早かったそうです。


「わたくしたちはとても怒っていますの、分かりますわよねリリーナさん」


エマル様と後ろの子たちが怒っている理由は分かります。
戦闘科の生徒を他のダンジョンに入れる時は、ダンジョンの担当生徒に連絡を入れるもので、それがなかったから怒っているんです。


「こんなだまし討ちのようなことをして、許せませんわ!」
「でもエマル様、それは3年に上がって正式な専属契約をしてからですよ。まだボクたちは1年で決まっているわけではありません。ましてや、学園の先生が許可した事なら」
「それでもっ!!わたくしたちになんの相談もなくですわよリリーナさん!普通は頼まれた生徒が自重するか、連絡くらいはするものですのよ。わたくしあの方に抗議しますわ」


エマル様がメイドに手紙を渡し、ボクたちは会議で待ちました。
そしてしばらくして彼が来て、後ろに獣人のメイドを連れて来ました。


「僕に話ってなにかな?」
「あなた!ちょっと公爵家に気に入られたからっていい気になっているのではなくて、身分をわきまえなさい!」


エマル様の言葉に、彼は首を傾げ良くわかってない感じなのを見て、他の生徒は平民上がりだと怒鳴ってしまったんです。


「そういわれてもなぁ、あなたの手紙を読んだから言いたいことは分かるけど、僕は先生に言われたから了承しただけだよ。文句ならそっちに言ってほしいな」
「いいえ!わたくしたちに連絡をしなかったあなたに責任はあります、これだから平民出は困るのですわ。賠償してくださるかしら?」


エマル様がダンジョン玉を出してポイントを請求しました。
額は、強いモンスターを設置しなくてはいけなくなった数値と、騎士たちにプライドを傷つけられた事を入れて30万ポイントです。


「30万ですか」
「そうですわ、1人30万ですわよ」


かなり高額なのに彼は顔色を変えせん。ここにいる15人全員に30万ポイントずつ取られると分かっているのかと思ってしまったよ。
その額は1人が1学期に入手する平均値で、きっとエマルさんは持ってないのを知っています。彼から全てを奪うつもりなんです。


「随分高額ですね」
「嫌なら無理やり奪いますわよ、スタンピードバトルですわ!」


他の生徒も玉を出し、みんながエマル様の出した門の後ろに自分たちの門を重ねました。
スタンピードバトルは、お互いの門の入り口合わせれるとバトルが開始します。


「お互いのモンスターをぶつけ合う戦いですわ。さぁあなたも門を出しなさい」
「やれやれ」


アレシャス君がエマル様の門の入り口側に自分の門を重ねたら始まってしまう。
ポイントがある限り、モンスターを新たに設置して戦う事になりますが、消滅したポイントは、バトル終了後に勝者側に全て流れます。
つまり15対1での戦いになり、彼に勝ち目はありません。


「ボクはそんな戦いは嫌だ。こんな弱い者を虐めるなんて出来ませんよエマル様」
「どうしましたのリリーナさん、早く門を出して後ろに合わせなさい」
「エマル様、これはやり過ぎです!落ち着いて話し合うべきですよ」
「な、なにを言っていますのあなた!伯爵家であるわたくしが侮辱されたのですわよ。全てを対価に償うべきですわ、さぁ門を出し後ろに重ねなさい!」


ボクは渋々門を出しました。じゃないと次はボクがすべてを奪われる対象になってしまう。
彼も渋々門を出し、エマル様の門に合わせてます。ボクは悪いと思い彼の顔を見たら、とても悲しい顔をしていました。


「さぁ始めますわよ!」


こうしてボクたちの卑怯な戦いは始まりました。
彼のダンジョンは、スライムナイトがキングクラス並と言っても、1体ではそれほどの脅威になりませんし、15対1では勝ち目はありません。
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