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4章 1年3学期

107話 襲撃の対応その2

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「くそっこの剣じゃダメだ、サイラス!」


モンドルが俺の横まで下がり折れた剣を見せて来るが、俺の方も刃こぼれが酷く、いつ折れてもおかしくない。
俺たちは今、闘技場に突然舞い降りてきたワイバーンと戦っている。
折れたミスリルソードを構えモンドルが俺に叫ぶが、俺たちは引く訳にはいかない、せめて避難が終わるまでは耐えて見せる。


「くっくっく、ワイバーンの皮膚には、さすがのミスリルも敵わなかったな。だが、ガキどもにしてはなかなか良い腕だ・・・どうだ、俺たちと来ないか?」


ワイバーンに乗っている仮面の騎士がそんなことを言ってきやがった。
だから俺たちは言ってやったよ。


「「断るっ!!」」


俺とモンドルの声が重なり闘気をぶつけてやった。
こいつは、民間人を巻き込んで殺戮を楽しんでいた、そんな奴と一緒に行けるわけがない。


「くっくっく、そうか・・・じゃあ死ね」


騎士が手綱を引き、ワイバーンが口から火の玉を飛ばしてきた。
剣が折れたモンドルに変わり、俺は武技【パワードスラッシュ】を使い何とか防いだ。



「だが、俺の剣も折れたか、くそっ!」
「ほんとにやるなガキ、ここで始末するのが勿体ないぜ。だが、誘いは断ったんだ、まぁ死んでおけ」


もう一度手綱は引かれ、火の玉が飛んできた。
俺たちもここでおしまいなのかと思った瞬間、空から剣が3本振ってきて火の玉をかき消してくれた。



「な、なんだこの剣?」
「そんな事言ってる場合じゃないぞサイラス、これはチャンスだ!」


モンドルに言われ、俺はハッとして剣に向かって手を伸ばす。
俺は目の前に刺さっている太めの1本の剣を抜き、闘気と魔力を流したんだ。


「こ、これはすごい!?ミスリル以上に魔力が通るぞ、これなら」


いけると感じた俺は、ワイバーンに向かって遠距離武技【魔神刃】を放った。
さっきは噛みつきでかき消された武技だったが、今度のはさっきよりもデカくて鋭く撃てたんだ。


「いけえぇぇーー」
「無駄な足掻きだな」


騎士がさっきと同じようにワイバーンの手綱を【パシン】と叩き、武技の刃にワイバーンが噛みついた。
先ほどと同じかと思ったが、その刃はワイバーンの口を切り裂き顔を通ってワイバーンの顔がずれ落ちたんだ。


「そ、そんなばかな!?ドラゴン種の皮膚を斬るほどの武技をこんなガキが」


仮面の騎士が驚いているが、俺も実は驚いている。


「さっきよりは強くは打った。だが凄いな」


感想を言いながら握っている剣を眺めてしまう。
騎士はワイバーンから降りようとしているが、モンドルが残った細目の剣2本を持ち騎士を切りつけた。


「お、おれが、こんなガキたちに」
「すごい!?すごいぞサイラスこの剣!まるでオレが斬りたい所が分かってるみたいだ!」


俺の持っている太めの剣も同じで、魔力と闘気がスムーズに通る。
ミスリルですら、ちょっと引っかかる感じがあったのにだ。


「これなら、今戦っている所に加勢に行ける、行くぞモンドル!」
「おうよ!」


俺たちは新しく手に入れた剣を使い、闘技場で戦っていた国の騎士たちの加勢に入った。
ワイバーンの堅い皮膚がスパスパと斬れたおかげで形勢が逆転したよ。


「すごいなお前たち、確か1年の優勝者と準優勝者だったよな?」


助けた騎士にそんな言葉を貰ってしまい、俺たちはちょっとテレて頷いた。
しかし、この戦果は剣のおかげで、俺たちの実力ではない。


「俺たちは他の場所に行きます、皆さんはけが人をお願いします」
「分かった、頑張ってくれ」


騎士は負傷していた人たちを運び始め、俺とモンドルはダンジョンを公開している北地区に向かおうと走った。
城もねらっているだろうが、一番警備が手薄なのは北で、ダンジョンを公開している闘技場だ。


「あそこはダンジョンに入る騎士たちが集まるから、急がないとまずいかも知れない」
「ちょっと待てよお前ら!」
「ん?どうしたモンドル」


俺を止める声がしたので、後ろを走っているモンドルに振り向き聞いた。
しかし、モンドルは分かっていない感じで、俺を見て首を傾げて来た。


「モンドルが止めたんじゃ?」
「そいつじゃないぞ、こっちだこっち」


俺は空耳かと思ったのだが、その声はまた聞こえた。
走るのを止め、周りを見たがモンドル以外はいない。


「どうなってるんだ?」
「オ、オレも聞こえたぞ、誰が呼んでるんだ?」
「そっちじゃないよぉ~もっと下ね」
「そうそう、人じゃないからね」


俺たちは声のする方を見た。するとその先にあったのは、今さっき拾った剣だったよ。
鞘に納めた剣がしゃべっている?っと俺たちは顔を見合ったぞ。


「なにを驚いていやがる、俺様たちはウエポンモンスターだぞ、しゃべるのは当然だ」
「そうだよぉ~そんなに驚かないでよね」
「そうそう、それと向かうなら南にしてくれるかな?」


3本の剣は、それぞれ違う口調で喋ってきた。
俺たちは驚きすぎて、口をパクパクさせ声にならなかったぞ。


「戻って来いよお前ら、さもないと鞘から出て俺様たちだけで行くぞ」
「ちょっちょっと待て!お前たちはモンスターなのか?」


俺は何とか声に出し聞いてみた。
その答えは一番口の悪い、俺の持っている剣がそうだと答えたよ。


「俺様たちはな、ある人の指示であそこに行った。そこに丁度使えそうなお前たちがいたから、存分に使わせてもらったんだ、予想通りお前の闘気も魔力も俺様好みだったぜ」


鞘から出した剣は、あれだけ硬かったワイバーンの皮膚を斬ったとは思えないほど、刀身をクネクネと動かしている。
俺はちょっとイヤだったが、モンドルの方の剣たちは嬉しそうに話して来て、悪い奴らには感じなかった。


「ある人ってのは誰なんだ?」
「そいつは言えねぇよ、ある人はある人だ」
「そうだよぉ~その人がね、他の区画にモンスターを向かわせたから、北は問題ないんだよ。負傷者とかを南に集めてるから、君たちには南を守ってほしいんだよ」


俺たちは、他の区画にもこいつらと同じのが行ってるのかっと思った。
だが、剣たちが説明したモンスターは違っていて、そっちの方がビックリした。


「「レッドドラゴンに鬼神!?」」
「そうだよぉ~それにゴーレムにリザードマン、スライム騎士にゴールドとプラチナもいるよぉ~」
「そのモンスターたちは主力でね、東西南北に1体ずつが向かったんだ。後は城にも向かわせたよ」
「そうだぜ、他のモンスターたちは民間人を守ったり、治療の為に南に集結してる。俺様たちは使用者がいた方が強くなるから、騎士の多いあそこに降り立ったって訳だな。杖のやつらは魔法士の多い方に降りたから、今頃誰かを使ってるんじゃねぇかな?」


俺たちの様に扱える奴らがいなくて、他のウエポンモンスターたちはがっかりしていたとか言って笑っている。
俺とモンドルはシェネルたちが気になったよ、主にやりすぎの方でな。


「まぁなんにしても、危険はなさそうだよなサイラス」
「そうだなモンドル、俺たちは南に行こう」


ちょっと苦笑いをして、俺たちは向かう方向を変えた。
剣たちは、嬉しそうに笑い自己紹介をし始めたぞ。


「俺様はインフェルノ、炎の剣のリビングモンスターだ」
「私っちはダイヤモンドダスト、氷の剣のリビングモンスターだよ、気軽にダイヤって呼んでよ」
「僕はウォーターと言う、水の剣のリビングモンスターだな、これからよろしく」


剣たちの自己紹介を受け、俺たちも名乗った。
かなり頼りになる味方がついてくれたと、正直な所嬉しかったよ。
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