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5章 2年1学期

128話 騎士たちの訓練の様子

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「あれが魔道具の銃、魔弾ガンかぁ」


あたしは今、凄くぼ~っとしてて、それは十騎士の同僚たちも同じです。
オーナとローナは頭を抱えて悩み、シャーリーとプーリマは、受け取った魔弾ガンをジッと見てるよ。


「ディファナとアマンミなんて、怖くてテーブルに魔弾ガンを置いてるけど、気持ちはわかるんだよね」


あたしの隣で、同じ様にぼ~っとしてしまってる、ピンシャとペーシャに言ったけど、全然聞いてないよ。
今、あたしたち十騎士は、魔弾ガンの扱いの講習を白騎士様から受けてるんだけど、それが凄い威力で戸惑ってるんだよ。


「今のは、魔弾ガンの威力で【中】だから、100発は撃てます。皆には【大】にメモリを合わせ、10発撃ったらカートリッジを交換して使ってもらうぞ」
「ちょっ!ちょっとお待ちになってノヴァ様!!」
「どうかしたかローナ」
「どうかしたかではありませんわ、そうでしょオーナ」


年長者でエメローネ様がいない時のサブリーダーを任されるローナは、さすがに黙ってられなかったみたい。
同じくサブリーダーをする事のあるオーナも頷いてるけど、ノヴァ様は凄く嫌そうな感じだよ。


「そうだなローナ、この武器は他国から来たと言いましたよねノヴァ殿、これは明らかに反逆に使うつもりだろう」
「そうですわよ、これの威力は脅威ですわよ」


ふたりは、このまま使わせるのは問題と抗議し始めたんだ。
あたしたちでも怖いと思う威力は、普通の兵士なら相手にならない、ノヴァ様は、それを聞いても頷くだけだよ。


「う、頷いている場合ですか!早く没収しなくてはなりませんわよ」
「それはダメだぞローナ、これの初期型は学園で使われる予定だし、既にかなりの数がこの王都にある」
「そ、そんな!?」
「何をそんなに怖がってるんだ?君たちには、これからこれに対抗できる力を付けてもらうんだぞ」


ノヴァ様は、横にいるエメローネ様に向きながら言います。
エメローネ様は頷いてるけど、今の威力を見たら、普通は出来ないと断言できますよ。


「ふ、不可能でしょ!シャーリーはそう思うよ」
「そそそ、そうだよ!プーリマ怖いよ」
「それはそうだろうな、これがワイバーンを手中に収める、きっかけになった武器だからな」


またまたノヴァ様から、衝撃の事実を聞きます。
全員で王都襲撃を思い出し、自分たちの不甲斐なさに落ち込み始めた。
あたしもそうだけど、ワイバーンには刃が立たなかったんだよ。


「あの後、本来なら敵の増援がこれを持ち、王都に攻め込んでくる予定だった」
「そ、そうだったんですの?」
「そうだぞローナ、しかし僕の獣魔たちの防衛によってそれは防がれた。何を言いたいか分かるか?」


暗かったみんなの表情は、急に真剣なモノに変わり、その答えに到達したんだ。
白十騎士は、この銃をモノともしない強さを持ってる、横に並ぶ自分たちが怖がっていてはいけないと感じたんだよ。


「精神修行を終えれば、この銃を怖いとは感じない程度にはなれる。しかし、エメローネ殿の要望で、君たちのレベルを上げる事となった」
「「「「「レベル上げ?」」」」」


何をいまさらっと、誰もが思って不思議そうだよ。
今までだって、城のお抱えダンジョンヒューマンのダンジョンに、あたしたちは入ってレベル上げをしてた、何が違うのかと不思議なんだよ。


「気持ちはわかるぞお前たち、しかし今回はほんとに特別で、この事はここだけの極秘だ」
「え、エメローネ様、そこまでの事ですの?」
「ワタシの言葉が信じられないかローナ?」
「それはそうですわよエメローネ様、わたくしたちは、ずっとレベル上げをしていましたわ」


それはそうだとみんなは頷いて、あたしもそうだけど、エメローネ様の答えは違ったんだ。
それだけすごいレベル上げをこれから行う、あたしは凄くドキドキしたんだよ。


「これで、あの滝を止めれるかもしれないよ」
「バーバラそれは無いぞ、これはあくまでもレベル上げで、精神修行とは違うんだ」


ノヴァ様に指摘され、あたしはそうなんだとガッカリです。
でも、それだけあの訓練はやらなければいけない事で、あたしは頑張ろうと決めたんだよ。


「うん、そんな時もあたしにはあったね・・・これは、ないよぉ~」


説明が済んで、あたしたちは魔弾ガンを持ってダンジョンに入ったんだけど、そこで行われたレベル上げは、本当にただ引き金を引くだけの事だったんだ。
みんなで一列になって並び、正面に見えるかどうか分からない、遠くのポツンとだけ見えるモンスターに向かって撃つだけだったんだよ。


「なんなんですのよ!説明を求めますわよノヴァ様」
「口は良いから指を動かせ!!今の段階で近づかれたら、一瞬で終わるぞ」
「だから、それを説明してほしいのですわよ」


ローナが説明が無さすぎて怒ってるけど、引き金を引くのは止めなかった。
あたしたちが全員で魔弾ガンを撃ってるから、遠くに見えるモンスターはこちらまで近づいてこない、これでレベルが上がるとか簡単すぎるよね。


「なんだがプーリマ、楽しくなってきた」
「シャーリーもたのしぃ~」


この状態に不満を持ってるのは、まじめなローナとオーナで、騎士の戦いじゃないとか言ってるよ。
でも、あたしは訓練場で魔弾ガンの試射をした時の事を思い出し、この状態がとても怖くなったよ。


「もし、敵国にこれをされていたら、あたしたちは何も出来ないまま、王都を守れず命を落としていたかもしれない」


そう思うと、指に力が入らなくなってきて、そのせいでモンスターの勢いが勝ち、始めて姿が見え始めたよ。
それを見て、みんなが凄く怖がって魔弾ガンを撃つ手が止まってしまったんだ。


「こらこら、撃つのをやめちゃダメだろ」
「で、ですけどノヴァ様!」
「そうだぞノヴァ殿!!あれを見たら誰だってこうなるだろう」
「ははは、早く逃げようよ!!」


あたしも同感なんだけど、ノヴァ様とエメローネ様は落ち着いていて、何と説明を始めたんだ。
そんな事をしてる場合じゃないと、ローナとオーナが揃えて口にしたけど、止まる事は無かったね。


「今見えてるモンスターは、確かに凄く強くて脅威だよ、なにせドラゴンだからね」
「ななな、なにを悠長に」
「まぁ落ち着けローナ、ワタシが足止めをしてくる、白騎士いいな」
「お願いしますエメローネ殿」


単身でエメローネ様が走って行き、あたしたちは無謀だっ!と叫んだよ。
でも、ノヴァ様は冷静に見てて、その理由は直ぐに見る事が出来たんだ。


「す、すごい!?」
「さすがエメローネ様ですわね」
「それは違うよローナ、あれくらいなら今の君たちでも出来る。気づかない?」


何を言ってるの?っと、あたしたちはノヴァ様に視線を集めたけど、その直後に激しい頭痛が襲って来たんだ。
おまけに気持ちも悪くて、シャーリーとプーリマは、朝食を地面にぶちまけたね。


「な、なんですのよ、この痛みと気持ちの悪さは」
「それはねローナ、世間で言うレベルアップ酔いだよ。君たちは、知らず知らずのうちに、それなりのレベルアップを果たしていたんだ」
「そ、そんなバカな話があるか」


オーナがステータス欄を確認して、ギョッとした顔で固まったのを見て、みんなで自分のレベルの確認を始めた、そしてそれは脅威の数値だったんだよ。


「わ、わたくし130ですわ」
「シャーリーは111だよ」
「プーリマ125~」


気持ち悪いのが収まってないからか、みんなフラフラして確認したんだけど、それはほんとに信じられない数値だった。
どうしてこんなに上がっているのか、理由は今、エメローネ様が戦ってる相手が答えだよね。


「分かったと思うけど、君たちはドラゴンを沢山倒していた。だから上がっていて当然なんだ」
「で、ですけどさすがにこれは」
「そうだぞ。そもそも、オレはここがダンジョンなのかも疑っていた、ほんとにここはダンジョンなのか?」


オーナが言うのも分かるんだよ、普通のダンジョンと違って天井が見えないし、部屋の壁がないんだ。
こんなに広いダンジョンは初めてで、どこかに転移したのかと思っていたんだよ。


「まぁ、転移事態が童話の中の遺物だから、無いとは思ってたけど、ノヴァ様ならあり得そうなんだよね」


はははっと、あたしは乾いた笑いを浮かべたけど、気持ち悪さは直らないし、頭は痛いままだったよ。
エメローネ様が戻って来ると、門が出現してあたしたちは城に戻ったんだけど、そこには女帝様と王女様が待っていて、直ぐに跪く事になったんだ。


「ご苦労様、首尾はどうだったかしら?」
「万事問題ございませんでしたよマリア様」
「それは良かったわエメローネ。じゃあ、みんなから感想を聞こうかしら、わたくしの新たなダンジョン、どうだったかしら?」


えっ!?っと、みんなで顔を上げてしまいました。
今入っていたダンジョンは、女帝様のダンジョンだったと知ったからですけど、それ以上にドラゴンを設置出来るのが信じられなかったんです。


「みんなどうしたの?」
「マリア様、皆はあそこがダンジョンだと信じていなかった様なんです」
「あらあらそれは大変ね。みんな良く聞いてね、あそこはわたくしの強化したダンジョンなのよ」


極秘の意味が分かって、みんなは静かに頷く事しか出来ませんでした。
次の襲撃に備えているのがヒシヒシと伝わって来て、あたしたちの心構えがなっていなかったと実感したんです。
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