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1章 誕生

5話 初めてのダンジョン

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「うぅ~ひどい目に合った」


夜の7時から始まった結婚活動。僕は当然参加しないんだけど、それのせいでメイドさん同士の行為をただ見てるだけと言う、悶々とさせられる訓練を受けたんだ。


「身体に刺激を与える為だろうけど、凄く辛いよ」


身体の準備をさせるための作戦なのは分かります。でも、今までで一番つらかったかもと思ってしまう訓練を終え、いよいよ僕待望の時間がやってきました。


「悶々としてるから水風呂に入りたいけど、もう一度入るわけにもいかないんだよね」


ため息を付いてダンジョンステータスを開いた僕は、これも国の計画なんだと感じてます。
お風呂は夕食前と早い段階なのは、結婚活動の相手である女性に不快にさせない為で、食事をする前から清潔にしていた。


「運動の後だから汗を流せて良かったけど、最後にあれが待ってるなら結局汗が出て仕方ないね」


やれやれっと気持ちを切り替え、僕は楽しみだとニヤニヤします。タブレットの様な画面の項目は、ダリアさんの授業のままなのに、いよいよ作る事が出来ると楽しみで画面が輝いて見えた。


「さてと、今持ってるポイントは800P。これに適合する僕に合っているモノと言えば、僕の歳だろうね」


500だったらMPで、100だったらHPか他の数値が影響していたと考えます。だから数値が合っている8歳と当てはめ、同時に貰える日は誕生日と思ったんだ。


「それに、ダンジョンは僕のステータスに影響しているモノが多い。それを考えれば、ダリアさんの言ってた事には矛盾してて、間違っているかもしれないと思わせる」


それならばもしかしたらっと、僕は準備していた木の剣に視線を向けます。ダンジョンを作ったら早速試そうとワクワクですよ。


「でも、まずは落ち着いて製作だね。階層を新たに作るには500P掛かるから、今ある1階層だけを使うのは確実として、他のモノはどれくらい掛かるのかな?」


通路に部屋と色々あるけど、ポイントを使わないで済むモノもあります。それはノーマルの岩壁通路や道を別ける分岐で、それ以外は少額だけどポイントを消費します。


「通路は赤壁が2P使うから無理だね、小部屋の倉庫は100P追加で作れる。小部屋が元から100Pも消費するから、無駄遣いの出来ない今の僕には、部屋なしの0Pのモノを使う以外ないかな」


ポイントはモンスター消費一択、これで僕が入れなくても学園で使える。ダリアさんには最低でもそれを言い分けに謝って許して貰う。


「問題は通路の広さだね、1mから20m幅を選べて1区画の長さは3m。戦った事のない僕じゃ標準が分からない」


どれにしようかなと、ダンジョンの中での戦いを想像してみます。戦う人達は1人から6人と相場が決まっていて、だからまずはそれを基準に6mに設定したんだ。
これで6人が並んで歩けるっと、まず考えられない隊列を想像して笑ってしまいます。戦う人達は前衛・中衛・後衛と別れて列を作って進むモノで、武器を振れる広さを考慮しての設定です。


「分岐を繋いで通路を設置。出来れば小でも良いから部屋を設置したいけど・・・僕の使えるポイントは800しかないんだよね」


ここでまずは考えます。問題なのはモンスターの設置が一番ポイントを使う事にあって、それの為にも部屋で消費するわけにはいかないと言う事です。


「でも、モンスターは設置した時よりも強く進化してダンジョンに現れる事がある。その為には部屋がどうしても必要なんだよね」


ダリアさんの授業で、討伐すると得られるポイントの数値も聞いていて、1体を設置するポイントと同じなのが分かっています。
例えとして、ゴブリンは設置に150Pで討伐するとそのポイントが直ぐに貰える。でも10体のセットで召喚すると750Pと半額で済むんだ。


「誰もが10体召喚を使いポイントを稼ぐわけだけど、そこにダンジョンの難易度が影響する進化も加わって、どうしてもダンジョンを複雑にしなくちゃいけない」


その為の部屋や通路で、壁の質を変えるのも部屋の内装を変えるのも必要なんだ。


「とはいっても、僕が入るのならば強さの分からない今の段階では怖い。なるべく弱いモンスターを設置したいね」


ダリアの推薦するゴブリンは、モンスターの中では下の中と、この世界では最下級の一つ星とランク付けされている。だけど木の剣しか持ってない僕では勝てるか分かりません。


「それに上位種が万が一生まれてしまえば、僕は絶対に勝てない。ポイントを使ってダンジョンを作ったと、ダリアさんに叱られる事を心配してる場合じゃなくなる」


もし、僕が死んでしまったらどうなるんだろう。もしかしたら他と違い僕は生き返らないかもしれない、そんな怖い想像をしてしまい、頭を左右に振って振り払ったんだ。
ここで選択するのは、もっと下のモンスター設置です。1つ星の中で下の下であるスライム(1体50P)をタブレットで選んでみます。


「これなら、上位種が生まれてもゴブリン程度の強さだから僕でも何とかなるよね?」


確証はないけど、それを信じて指でタップしようとしたけど、僕は途中で止まります。


「もし・・・もしも上位種の上、変異種が生まれたら終わるけど、平気だよね?」


通路だけのダンジョンだから平気っと、僕は笑いながらも万が一を考え躊躇ったんだ。
モンスターは星でランク付けされているけど、それはあくまでもノーマルクラスの話しで、ダンジョンの難易度に影響を受ける変異種は、上位種などの上の存在と区切られ星の数も違う。


「ノーマルの上がハードで、その上にはキング・ハイエンダ・レジェンドがいる。そんなのが出たら、僕は絶対死んじゃう」


レジェンドは、神と呼ばれる存在だからまず無いけど、それでもキングクラスは問題だと、画面に指を添えるのが怖くなった。
でもね、そのおかげで画面の文字の異変に気付くことが出来ました。


「1体召喚と10体召喚以外に、階層召喚ってのがある、これって何かな?」


説明はないけど、恐らくと言う考えはゲーマーの僕にはあります。これは階層でモンスターを固定する設定だと判断できるんだ。
そしてモンスターは設置ではなく召喚されることになり、最初にポイントを使って設定すれば、その後は使わずに済むかもしれないと期待したんだ。


「でも、階層で固定となるとお高いんだろうね」


指で丸を作って、お高いでしょ?っと誰かに聞きたいです。でもそれしかないと階層召喚でスライムを選んでみます。そこには10体召喚よりも高い500Pが表示されていて、僕はそれでも安いじゃん!?っと、怖かった事を忘れて即決しました。


「10体倒せばそこからずっと黒字だもんね、これは良い事が分かったよ」


それじゃ早速入って見ようと、興奮して木の剣を持った僕は門を出そうと玉を持ちます。だけど、ダンジョンの全体図が映っているタブレットに視線が向いた時「あれ?」っと止まります。
モンスターを設置すると赤点で表示されるはずが、それがまだ見られなかったんだ。どうしてなんだよっと、ポイントを確認したけど、既に使用していて残りは300Pです。


「詐欺なの?これはダンジョン詐欺にあったのかな」


プンプン怒っていると、だんだんとダリアさんの怒った顔が思い浮かび、どうしようと焦ります。だけどそれは手遅れなのは言うまでもなく、そもそも入ろうと計画を立てている時点で怒られます。


「このままモンスターが出なかったら・・・僕は相当まずい、どうしよう」


ワタワタと考える時間は、問題を解決する経過時間になってくれて、タブレットに赤点が表示されました。僕はホッと一安心して、どうしてなのかを考えます。


「もしかしなくても、設置とは違い召喚には時間が掛かるんだ。そして僕のステータスにあったダンジョンボーナスポイントが関係してて、変える事も出来るかもしれない」


それしか考えられないと、自分のステータスを表示して最後の欄を眺めます。そこには所持ダンジョン数とモンスター出現率とモンスター覚醒率が1である事が分かり、前の見たままが表示されました。
つまり、ポイントを割り振ればそれだけダンジョンに変化が起きるのだと、残りのポイントを使用したくてソワソワしてきます。だけど僕はハッとして留まったよ。


「ダメだダメだっ!!ダンジョン数は良いとしても、出現率や覚醒率は上げたら僕が死んじゃう」


僕が死んだら戻れるのか、そればかりは試さないと分からない。そもそも入れるかもまだだし、ここは慎重に行くべきとダンジョンに入る準備を始めます。
運動着に着替え木の剣を腰に下げ、さぁ行くぞっとダンジョン玉を床に置き【開門】と唱えたんだ。するととても大きな門が床から少しずつ出現してきました。


「すごっ!?これがダンジョンの入り口」


3mの門の中は虹色の渦が巻いていて、どこかのゲームの旅の扉みたいだと感想を一言です。だけど問題はここからで、僕は目を瞑って一歩前に踏み出し、2歩3歩と歩き出します。
しばらくして目を開けると、そこは岩壁の通路が伸びていて、僕はガッツポーズをとったんだよ。


「やっぱり、ダンジョンには入れるんだっ!!」


やったぞーっと叫ぶ僕だけど、そこがダンジョンだと言う事を忘れていた。両手を上げた状態で背中に衝撃を受けて吹っ飛ばされたんだよ。


「かはっ!?い、痛い」


凄い痛みを受け床を転げ回ってしまった。何が起きたのか、それは言うまでもなく僕は攻撃されたんだ。
痛みで起き上がれない僕は顔だけをそいつに向けた。そこには緑色のスライムがフヨフヨしていたよ。


「ぐ、グリーンスライム・・・最下級の攻撃でここまで痛いの?」


ヨロヨロと起き上がった僕は、木の剣を抜き構えます。だけど痛みを受けたせいなのか、スライムがとても怖く見えて来て、これが戦いなんだと実感しました。
ステータスを開くと数値は15も減っていて残りは85、それが余計死を実感させ体が震えてきます。


「これはゲームじゃない。本当の戦いで死んだらお終い」


心臓がバクバクうるさいくらい音を上げ早く動いていました。怖いと感じるよりも、生きてる実感が感じられて興奮しているのかもしれない。


「僕だって訓練してたんだ、スライムくらい」


ゲームでは、こん棒やヒノキの棒が初期の武器だったから、僕は木の剣でも良いと勘違いしていました。その油断は更に悪い方に運命を傾ける事になり、僕は背中にまた攻撃を受け飛ばされてしまったんだ。


「い、いたい~・・・ま、またかよ」


最初の攻撃で、僕は次の分岐まで飛ばされていて、最初のスライムとは距離を取れて立ち上がったけど、そこは運悪く次に召喚されるモンスターの召喚位置だった。
これは遊びではなく本当の死闘、もっと準備しておくべきだったと後悔が押し寄せきた。でもスライム2体は、吹き飛ばされて床に倒れる僕にジリジリと近づいてきます。


「体が痛いっ!こんなに痛いのは転生前も入れて初めてだよ」


とても痛くてしばらく立ち上がる事が出来なかった。走馬灯の様に今までの事が目に映り、もうダメなのかもと力が抜けたけど、それは一瞬の事で僕は立ち上がったんだ。
この痛みは、これから僕が進む道にずっとあるモノで、それに怯えていたら野望は達成できない。そう覚悟を決めた僕は無我夢中で剣を振って戦い、気づいたらスライムたちは消滅してて僕は床に倒れていました。
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