勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー

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1章 生き甲斐

1話 勇者PT追放

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「よし、今日の収益も帳簿に書いたし、明日の準備をするかな」


俺はアレシュ、異世界に飛ばされた32歳の独身男性で、27歳の時この世界に飛ばされてから5年の間、召喚された国の国王に勇者PTの支援をするように命令された。
生産職だから戦えない異世界人として今もその命令に従い、スキルで出した品で支援しているが、正直達成感は無かった。


「今日のデイリーカードは何が出るかな」


ユニークスキル【カードダス】を使用し、5枚パックの袋を引き出した。
袋を開けると、料理カードが5枚入っていて、はずれだったからちょっとガックリしたよ。


「まぁカレーは美味いから良いが、5枚ともカレーは無いだろう・・・最近はずれが続いてるな」


週一のウィークリーも最近はずれが続いてて、モンスターカード(2つ星程度)しか出ていなかった。
明日から月が変わり、マンスリーで良いのが出る事を祈ったが、そんな俺の部屋に突然な訪問者が来た。


「おいアレシュっ!」
「イースズ、ノックもしないでどうしたんだ?」


昼のこの時間は、勇者PTは酒場にいる事が多く、どうしてここにいるんだと思ったが、そんな事よりいきなり俺を追放するとか言ってきたんだ。
何をいきなりと思った俺は、理解する事で頭がいっぱいになり、イースズが言っている内容が理解できなかった。


「おいおい、イースズ正気か?俺はアファロス王国の国王様の命で一緒にいるんだぞ」
「そんな事は関係ない、お前はクビだ」
「どうしてなんだ、理由を聞こう」
「聞いてなかったのか、お前は俺たちに隠れて素材を盗んでいただろう」


はい?っと、更に疑問が増えてしまい、俺は逆に冷静になった。
これは誰かの陰謀で、俺が勇者PTにいるのが面白くない連中のたくらみだと思ったよ。


「イースズ、素材を盗んだというが、そもそも俺は取り分を貰っていない、それを取り分と考えれば良いんじゃないか?」
「何言ってやがる、戦ってないお前が取り分を貰えるわけがないだろう」
「ほう、じゃあ食事はどうなんだ?掃除や装備の整備は?俺がいないと戦いにも出れないんだぞ」
「そ、それは」


テントや日用品もすべて俺が用意し、費用はすべて俺が出していた。
それなのに5年間1度も文句を言わず、取り分も貰ってないと言ってやった。


「俺が個人で商売をしていたからそれでも良かったんだが、そんなアリもしない罪を言うのなら、今までの分取り分を貰うぞ」
「そ、そんな権利は無いっ!出ていけ」
「そう言うがなイースズ、ここは俺の金で借りた宿だろう、なんならお前たちを追い出してやろうか?」
「うっ!そ、そんな事出来る訳がない」


宿代も俺が出していて、イースズたちが自腹で払うのは、酒場で飲み食いする時だけだった。
装備も俺のカードダスで出した品だし、そこまでの好待遇だったのにふざけるなと怒りが込み上げてきたよ。


「もういい、なかった事にしてやるから、部屋から出て行けよイースズ」
「そうはいくか、お前の代わりは既にいるんだよ」
「代わりってお前」
「おい、入って来て良いぞ」


部屋に新たに入ってきたのは、商人の服を着た女性で、その後ろには勇者PTの女性4人もいたんだ。
全員女性とか、ハーレムにしたいだけだろうとツッコミたかったが、商人の女性が務めている商会が今後の資金を出すとイースズが言ってきたから、商人の女性をジッと見てしまった。


「君、本気か?」
「私はそう言われて来ました、あなたはもう不要なんですよ」
「そうですわよ、あなたなんていりませんわ」
「とっとと出て行きやがれ」
「ミケーナにギャルト・・・そうかよ、それならもういい」


国王に言われ、ただ使命として一緒にいただけで、5年間そこまで親密にはならなかった俺は、別に執着はなかった。
4人がイースズと恋仲だったからでもあったが、追い打ちとばかりに魔法士のレナミとシーフのシュバネにも言われ、もうどうでも良くなってしまったんだ。


「分かったよ、もう何も言わない」


面倒くさくなった俺は、装備を返せとか今までの経費を寄越せとも言わずに部屋を出た。
元から荷物はインベントリにしまっていて、手ぶらでも俺に支障はなかったから、気楽に廊下を歩いたよ。


「支障があるのはあっちなんだよなぁ」


ユニークスキルで出していた俺の品々は、店に売ってない物が多くあり、当然だがチートアイテムも存在した。
イースズたちの装備がそれにあたるが、使用制限があるからその内使えなくなるんだ。


「カードダスで手に入るエネルギーカードがないとダメなのにな」


もう俺の知った事ではないので、そのまま冒険者ギルドでPTを抜けた事を報告に向かったんだ。
ギルドに入り受付で報告をしたら、信じられないと受付嬢のミーナが怒りだしたよ。


「そう怒るなよミーナ」
「だって、アレシュさんはずっと頑張って来たじゃないですか、それなのに冤罪まで着せるなんて信じられません」
「別にいいさ、それよりも報告頼むな」
「仕方ないですね、報告しておきます」


渋々ミーナは処理してくれたが、それだけで終わる事は無く、この後どうするのか聞かれた。
何も決めてなかった俺は、どうしたものかと考え込んだが、ミーナはギルドで働かないかと誘ってくれたんだ。


「後輩としてアタシが手取り足取り教えますよ」
「それも楽しそうだな」
「はい・・・そして、将来はアタシと」


何やらミーナがゴニョニョ言っていたが、ギルドの入り口付近が騒がしくて聞こえなかった。
何事かと振り向いた俺は、珍しい種族を見て納得したよ。


「獣人か、この国【アランドロン】にしては珍しいな」
「あの子たちはですね、最近ここに来た冒険者で・・・確かPT名は【フェニックスフェザー】ですね」
「へぇ~」


種族が珍しいというだけで、俺としてはそれほど関心は無かったんだが、彼女たち5人が男性冒険者10人に囲まれていたから、ちょっとイライラしていた。
冒険者は血の気が多い連中は多いが、仲間思いの優しい奴らもいて、あれではイースズを見てるようで嫌だったんだ。


「ちょっと行って来る、処理は頼むなミーナ」
「はいはい、アタシは見てませんよ~」
「助かるよ」


後で奢る事を約束して、俺は問題の男たちの後ろに回った。
男の一人の肩に手を置き、やめる様に伝えたんだが、邪魔するなと忠告されたんだ。


「そう言うなよ、酒代奢ってやるからさ」
「へぇ~おっさん分かってるじゃないか」
「そうだろう、だからギルドで騒ぐのは無しな」


ウインクして抑えるのに成功したんだが、男は酒代に中金貨10枚を要求して来て、さすがに高いと俺は思ったよ。
しかし、騒ぎを納めるのが目的なので、金を渡してギルドを出て貰ったよ。


「まったく、ミーナに見て見ぬふりをしてもらって正解だったな」


これが知られたら、あの男たちは余計な罪が増えてしまう所で、やれやれと思ったよ。
しかし、後でギルド側から厳重注意を受ける事は確定していて、そこで頭を冷やし改める事を祈った。


「ねぇあんた、どういうつもりにゃ」
「ああ、気にしなくていい、ただのおせっかいだ」
「そのおせっかいに中金貨10枚とか、頭どうかしてるにゃ」


それもそうだと思ったが、目的が騒ぎを納める事なので、成功しているから問題ないと返した。
しかし、怒っているネコ獣人の少女はそれで収まらず、お金は出さないとか勘違いをしてきた。


「別に君たちに請求はしない、お節介だと言っただろう?」
「ふざけるにゃ、中金貨10枚なんて大金出しておいて、このままで済むわけないのにゃ」
「ほう、前に何かあったのかなお嬢ちゃん」


中金貨10枚とは、1番下の貨幣小金貨1000枚と同等の価値があり、通貨単位で言えば1万メリとなる。
一般人の1月の給金が3000メリなので、大金と言うのは間違っていなかった。


「何がお嬢ちゃんよ、アタシにはミニャルって立派な名前があるのにゃ」
「そうだったか、それは済まなかったなお嬢ちゃん」


ワザと名前を呼ばずにその場を離れようとしたんだが、他の女性獣人たちが回り込んで来て、フシャ~っと威嚇して来た。
全員がネコ科の種族で、とても可愛いから男たちが絡むのも分かったが、タダで良いと言ってるのに絡み過ぎと注意したよ。


「それで済むわけみゃ~とミニャルが言ったみゃ」
「そうよそうよ、何か企んでいるみ~よ」
「男なんて嫌いに~」
「うん、ボクもいや」
「じゃあ、俺にどうしろって言うんだ?」


ネコ獣人は執念深いと聞いた事があったが、ここまでとは思わず、俺もどうしたものかと思ってしまった。
そして、ミニャルの出した答えを聞き、俺はとても困ったよ。
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