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4章 活発

71話 遠くで

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ここは他種族で一番西にある国境である、ここでは今戦いが始まろうとしていた。


「やはり情報通りか、総員戦闘準備!」


人族が魔導巨神を砦の配備したと密偵からの連絡を受け準備はしていたが、それがついに姿を現し進軍してきたのだ。


「諸君相手はどういうわけか我々の最新兵器に乗っている、数も我々の3倍70機はいる、だが皆も見て分かる通り、相手は旧式のゼノを使っている、我々に負けは無い行くぞ!」


直ぐに号令がかかり戦闘が始まった、号令を掛けた隊長の言った通り他種族部隊が人族を圧倒していた。


「よしよし、やはり旧式のゼノだな我々とは動きが違う遅すぎる、全軍突撃だこのまま押しこめぇー!」


いままでは後方に魔法兵と歩兵が待機し、魔導巨神の戦いのじゃまにならないよう戦況を見ていた、しかし戦況が優勢だった為隊長が全部隊の突撃を命令したのだ、それが相手の作戦とも知らずに。


「たわいないな、魔導巨神を使っていても身体能力の低い人族ではこんなものか」


襲ってきた敵魔導巨神を一撃で倒しながら隊長が呟いていた、そして敵の攻撃が弱まってくると部下がやっと事態の変化に気づき報告した。


「隊長足場がぬかるんでいて動きが」


「何!?ひるむな魔導巨神ならばこれしきの事どうと言うことはない、一般兵たちを撤退させ我々はその援護をする、相手が来たら・・・何故向こうは撤退している!?」


人族側が魔導巨神も含めた全部隊を引かせ始めていた。


「相手が撤退するならこれは好機だ、作戦を続行する!前進だ」


敵が撤退の時間稼ぎに為に足場を悪くしたと判断した他種族の隊長が支持し再度前進した、しかしそれを人族は待っていた。





「そろそろいいか・・・よし、魔導巨神電撃部隊やれ!」


人族の隊長が叫ぶと少し形の違う魔導巨神が地面に電撃魔法を放った、そしてその魔法はぬかるんでいる地面に流れていき他種族部隊を襲った。


「くくく、よしもういいぞ止めろ!」


人族の隊長が合図をし魔法が止められた、そして他種族の部隊で動く物は無かった。


「隊長予定通りこちらの被害はありません」


「良いぞ通電措置は完璧だったな、早速死体を取り出し相手機体の回収だ」


「はっ歩兵や魔法兵はどうされますか?」


そう質問された人族の隊長は即答した。


「そんな物に構う必要はない!すておけ、今は機体の回収が最優先だ」


「はっ了解しました」


「しかし急がなくていいぞ、あの砦からの攻撃は来ないからな、機体をこれ以上破損させるわけにはいかん、慎重にかつ迅速な行動を取れ!」


そう部下に命令するのだった。

人族の隊長は他種族が総攻撃するように仕向け、一気に殲滅したのだ、最新機体という大きな戦果のついでに。



「た、隊長!戦闘部隊が、仲間たちが」


他種族の砦には連絡班が残っていた、不測の事態を報告する為だ、そして仲間が捨てられるのを見る事しか出来ずにいた。


「くそ!人族め!!あいつらに心はないのか」


ある者はその光景を見て涙し、またある者は怒りに震えていた。


「皆落ち着け!至急本国に戻るぞ、今は辛いかもしれんが我慢だ、この借りは絶対に返すぞ!」


「「「「「りょ、了解」」」」」


《この戦いの報告は直ぐ他種族に流れることとなった》


「なんと言う事だ」


ここは砦に一番近い城アースノス、そこには急ぎ知らせに走った連絡班の兵士がいた。


「砦が取られてしまったと言う事か!」


「おそらくは、私たちは至急国王様に知らせに向かいます、警戒をしてください」


そう言って兵士は出て行った、城の王族であるセルミドスが頭を抱えていた。


「どう思うタリト」


「セルミドス様、至急守りを固めるほかありません、遅れれば間に合わなくなります」


この城と城下町は最西端に位置していることもあり外壁は厚く高く作られていた、しかし相手が魔導巨神となると話は違う、あの兵器はそれほどに強力なのだ、大砲や投石機はかなりの数を揃えているが話にならないのだ。


「そうだな、冒険者ギルドにも伝え志願兵を募り途中の街に向かわせろ、こちらの守りは他の街からかき集めるのだ」


「はっ直ちに」


大臣のタリトにそう告げ戦いの準備を始めた、この城の常備兵は5000、先の砦に向かわせていた兵士が3000だった、残った兵士2000で対処しなくてはいけない、最西端ではあるが王族が管理していると言う事もあって冒険者もかなりの数いた、しかしこの戦いが不利なのは誰もが分かる事で希望が持てなかった。


「魔導巨神相手にどれだけ持ち堪えられるだろうか」


不安になりながらも準備を急いだ、しかし事態は急変しなかった、どういうわけか人族は攻めてこなかったのだ、3週間経っても相手側が進軍してこなかったのだ、普通の戦いは両軍が仮設陣地を作る事から始まる、どちらかに砦がある場合は設置を待ち開戦日程を大体予想するのだ、そして兵士が並び開戦の合図がされ戦闘が始まる。

しかし相手側は一向に姿を見せなかったのだ。


「どういうことだタリト!」


「偵察部隊の報告では砦には誰一人としていなかったそうです、これは恐らく」


そう言ってタリトが口を閉ざした、先の事を話すのを躊躇っての事だ。


「どうした何故黙る」


「恐らく人族の狙いは他にあったのでしょう」


それを聞きセルミドスが少し考え答えを出した、顔色を真っ青にして。


「もしや敵の狙いは進軍ではなく、魔導巨神のゼウだったというのか!?」


セルミドスがそう言うとタリトは頷いていた、まさにそれが今回の人族の狙いだった、3週間前の報告でも敵兵士がこちらの魔導巨神を運んでいると報告がされていたからだ。


しかし戦争では相手側の武器を奪うのはそんなに不思議ではない、なのでそれほど重要とは思っていなかった、魔導巨神が奪われてもあの機体はかなり高度な技術を使っているため修理には時間が掛かる、なので直ぐには使えないはずだった、しかし奪う事が狙いならば話は違う、なるべく損傷がないようにしていたはずなのだ、最新機体がほとんど無傷で奪われたことになったとここで初めて気づいたのだ。


「なんてことだ、あそこにしか第2量産機を配備してなかったというのに・・・これは急ぎ父上に連絡して判断を委ねるしかない、俺は砦に行くぞタリト!兵を準備しろ」


「はっ」


こうして最西端の城から中央王都に緊急の手紙が輸送転移され情報が流れた、そして兵士1000人と数台の馬車が城を出たのだった。
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