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1章

11話 人見知り再び

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「今度は8機キュかぁ~」


空を見上げて、またまた大所帯だなぁっと、人見知りが再発した僕は、またまた語尾が変になります。
でも、今回は今までと大きく違う事もあって、木の上に平たい円状の着地地点を作ったんだ。


「まぁ、知らせないと分からないキュから、ミエカルに頼んで知らせて貰うキュね」


枝の橋を渡り、新たに作ったミエカルたちの養成所に向かい、畑仕事をしてたミエカルを見つけて手を振ります。
船が来た事を知らせたら、ミエカルは部下の4人と共に家に急いで入り準備の始めてくれたよ。


「みんな、2日しかいないのに手慣れたねぇ~」


素直になったミエカルたちには、農場の作業もしてもらっていて、働かざる者食うべからずと教えてる。
ほんとは、こき使って捨てる予定だったけど、彼らはとっても心を入れ替えてくれたんだ。
いつもニコニコと楽しそうに作業をしてくれて、どうしてそんなに変わったのかよりも、僕はそれが嬉しかった。


「「「「「お待たせしましたリキト様」」」」」
「変わったねみんな」
「それはそうですよ、美味い物が食べれると分かれば、それだけ頑張ります」


僕の作戦通りだけど、ちょっと違う気もしてて、まぁ良いかと荷物を纏めて出て来たミエカルたちに声を掛けたんだ。
そんなに飢えていたのかと、空の島の生活が気になってしまった訳で、これは支援の範囲を広げた方が良いかと考えを巡らせたね。


「ここの食べ物はまさに神の神物ですから、きっと国の者たちは喜びます」
「そこまでなの?」
「はい、リキト様は我らの救いの神です」


ミエカルは、何時の間には口調も丁寧になっていて、どうしてこんなに変わったのかと思ってしまいます。
部下たちもそんな感じで、良い事だと放って置いてるけど、これでお別れだと思うと少し寂しい気持ちになります。


「リキト様、荷物も多いですがどうやって降りるのですか?」
「枝を操作して動く大型の昇降機を使うよ」


鳥かごみたいな乗り物で、僕の枝操作で簡単に動かせるから、みんなを乗せて下まで降ります。
そして、僕の初地面着地の時でもあり、牛と羊の皮で作った靴を履いて一歩踏み出したんだ。


「腐敗しないね」
「それだけ厚く作っていればしばらく平気ですけど、やはりリキト様の身長ですと下過ぎるので、どうぞわたくしめの肩にお乗りくださいませ」



顔しかない僕の場合、土埃を吸いやすくなってしまい、みんなの着けてるマスクは身体に合わないんだ。
だからミエカルの肩に乗る選択をしたけど、ミエカルはニコニコしてて、ほんとにどうしてそんなに変わったのか不思議です。


「みんな元気かな」
「元気に決まっています、何せリキト様との約束ですからね」
「約束とは関係ないと思うけど、気休めでも嬉しいよ、ありがとミエカル」


ニコリとして歩き出すミエカルは、迷いのない歩みで進み、僕はそんな彼の肩に乗って初めて森を出ました。
風が吹くと土埃が凄くて、マスクは絶対必要と思いつつ、フィナたちが降りた場所に着いた僕は、凄く沢山のケモミミさんたちが降りてて、ソワソワしていました。


「うぅ~怖くなってきたキュ」
「平気ですよリキト様、わたくしめがついています」


ミエカルの頭の後ろに隠れて、僕は震えてきました。
それでもね、フィナたちの無事な姿は見れて、それだけでも安心出来たんだ。


「言った通りでしょリキト様」
「そうだね、僕も勇気を出すキュ」
「その意気です」


語尾は戻らないけど、頑張ってミエカルの頭の後ろから肩に戻り、フィナたちに挨拶をしました。
僕の挨拶と姿を見て、知らないケモミミさんたちがヒソヒソと何かを話していたけど、隊長のバックスが前に出て話を進めてくれた。


「人族全員の安否は確認した、リキト殿引き渡して貰っても問題ないな」
「うん、よろしくバックス」
「では、リキト様はフィナ殿にお任せする」


ミエカルは、僕を両手で優しく抱えると、隊長の横にいたフィナに僕を手渡してくれた。
フィナに拒否されたらショックだったけど、バックスとも決めていたしそんな事は無く、フィナは両手で優しく受け取ってくれたよ。


「よろしく頼むぞフィナ殿」
「え、ええそれは良いのだけど、あんた口調が」
「はっはっは、リキト様に浄化して頂いたのだよ・・・ではリキト様、船を予定の位置に運んでまいります」


よろしく~っと、ちょっと気のない返事を僕がしたのは、フィナに抱きしめられてドキドキしてたからで、決してやましい事があったからじゃありません。
生まれ変わりも入れて、こんな風に女性に抱きしめてもらった事の無かった僕がドキドキしないわけがない。
落ち着くように自分に言い聞かせ、8機であることを思い出して、バックスに3名の運転者を要望したんだ。


「何処に停めるんだリキト」
「木の上に作った着地地点だよ、物資を運ぶなら下より上の方が楽でしょ、木々には攻撃されないから安心してね」
「そ、そうなのか・・・分かった」


了承してくれたバックスだけど、ミエカルたちとは違って木々に近づく事を心配してた。
今まで攻撃されるから出来なかった事だし、ミエカルたちの船に乗って確かめてもらう方向に変えたんだ。


「空飛ぶ船にも興味があったし、みんなで行こう」
「まぁその方が早いな、フィナはリキトを離すなよ」
「了解です隊長」


フィナに抱きしめられ、僕は初めての空飛ぶ船に乗船し、ふわっと浮かぶ浮遊感と空の景色を見る事が出来た。
僕の森以外にも遠くに森が見え、そこにも農場が作れるのかとワクワクが押し寄せて来たね。


「すごいねフィナ、この船飛んでるよ」
「それは当然よリキト、これは昇降船と言って、島と陸を繋ぐための船だもん」
「じゃあさ、島同士を行き来する船もあるの?」
「あるわよ、輸送船って言って、今度それを使って他の国に物資を運ぶの」


へぇ~っと、窓の外を見ながら返事をして、島が少しだけ近くに見えたから楽しくなってきたんだ。
お城の下にある街がはっきりと見えて、行ってみたいという衝動が増したんだよ。


「リキトがその気なら、島の入場許可を取っておくけど」
「それはまだいいよフィナ、僕は森を離れるわけにはいかないからね」
「そうなのね、じゃあ行きたくなったら言ってね」


フィナは、少し暗い感じの返事をして来たけど、農場をそのままにして行くわけにはいかないから仕方ない。
畑の世話だけならミエカルたちでも良いけど、ニワトリや牛などはさすがに任せられないんだ。


「フィナたちも覚えてくれると助かるんだけど、島の生活があるよね」
「そうだけど、リキトには貰ってばかりだから、言ってくれれば手伝うわよ」
「簡単に言うけど大変だよ~覚悟は良いの~」
「そ、そう言われると、ちょっと心配ね」


アハハっと笑い合っていたら、木々に囲まれた目的の地点が見えて来て、バッカスに指示をして着陸した。
木の頂上付近だから、とっても不安そうで驚きながらも船を降りたけど、落ちない様に注意をしたよ。


「これは、手すりとかも作った方が良いかな?」
「ごめんねリキト、アタシもちょっと怖い」
「ミエカルたちも最初はそうだったし、僕の不手際だったね」


枝を操作して、手すりを作って行きながらみんなを案内したんだ。
フィナもみんなも、足元がフラフラしてて危なっかしかったけど、居住区に着くと足場も安定しているからか、みんなの不安が無くなったね。


「す、すごい!?木の上に家がある」
「ミエカルたちの住んでた場所を増やしておいたんだ、長期の滞在がある時は言ってね」
「あ、ありがとリキト」


フィナは申し訳なさそうだけど、僕が勝手にしてる事だし、僕としては作ったモノで喜んでもらえるのは嬉しかった。
僕に欲しい物はないから、フィナは貰ってばかりと心配してて、僕は情報を貰ってるから成立してる事を教えたよ。


「隊長に情報を貰ってるの?」
「うん、僕はここに1人でしょ、ミエカルたちにも聞いたけど、この世界の事をもっと知りたいんだ」
「そうなのね、アタシたちで分かる範囲ならいくらでもお話するわ」


これで少しは対価を貰えたと、少しだけ安心させる事が出来た気になったよ。
ミエカルたちから聞いた事と統合させて、この世界の事がもっと良く分かって来たんだ。
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