世界ってなんなんですか?

仲里トメ子

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想いってなんだろう

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彼女が落ち着きを取り戻すまで、じっと背中をさすって話を聞いているとふと彼女の存在を思い出した。


彼女、秋輔のストーカーキャラの十六夜 詩子(いざよい うたこ)だ…!


どうしよう。このあと秋輔が詩子に追い詰められて活動休止のピンチだったはず…なんで?なんで、ここしか思い出せないの!?なんで、なんで…!

この先が重要なのに…!


「朱音さん、私、どうしたらいいのかな…シュウ、どうして私に振り向いてくれないんだろ…」


秋輔のことを涙ながらに想い、方法は間違ってるけど、彼を本気で愛してる彼女にふと自分の中にざわめきが走った。


「なんでしょうね、この気持ちは…貴女の涙を見てると、なんだか胸がざわつきますわ。秋輔と貴女が並んでる姿も、秋輔とわたくしが並んでる姿も、どちらも複雑で…あまり想像できませんわね…」


自分の気持ちを吐露すると、詩子はため息をつきながら私にうなずいた。


「朱音さんも、複雑なんだ…私も、さっきまではなんでって思ってたけど、朱音さんも私の話ちゃんと聞いてくれて、上品で、綺麗で、いい人だってわかったから、複雑…でも、シュウのこと諦められない…!」


詩子は、落ち着きはあるものの、少し声が強張っていた。

どうしたらいいんだろう…彼女を納得させてあげられるにはどうしたらいいんだろう。


少しの間の沈黙も、秋輔からの着信によって打ち砕かれた。


「朱音さん、電話…いいの?もしかして、シュウから…?」


「えぇ、この後少し会う予定でしたわ。ちょっとメールで時間変更の旨だけ連絡させていただきますわね。」

着信を切りメールを作成する。

詩子と一緒にいることも添えた。

私たちからのSOS。


「ねぇ、詩子さん。秋輔に想いを伝えましょう。」

「え?毎日手紙に書いてるのに…?」

「わたくしは思うんですの。手紙は真心は暖かみや気持ちは伝わるけれど、返事があってこその手段。詩子さんが秋輔のただのファンで応援してるという旨のファンレターという訳ではないなら、手紙で愛を伝えるのはアプローチとしては適切ではないと思います。でも、詩子さんはファンレター以外の方法をお持ちでなくて、心の距離感が秋輔と噛み合わないアプローチになってしまったと…。」


詩子を抱きしめて、できるだけ間を開けて優しく、優しく状況を話していると遠くからエンジン音が近づいてくる。

助けに来てくれたんだ…。


「詩子、できるかな…?シュウ…うん…できなくても…できる…朱音さん…詩子できるかな…」

肩に震える声が伝わる。まだまだ年相応の女の子。人のこと言えないけどね。

背中をさすって秋輔を待つ。

「このまま秋輔にお話してみましょう?わたくしが目隠しになります。」

「うん…」


「朱音!」

きゅっと公園の端に車を寄せてこちらへ向かってくる秋輔の声が聞こえた瞬間、詩子がビクッと震え、心拍数が上がるのが伝わった。


「秋輔、ちょっとそこでこのまま話を聞いてほしいの。」

少し距離をおいてもらって、秋輔の安全を確保する。

「わかった。」

秋輔も声は強張っているけど、どっしりと構えこちらを見てる。

「詩子さん、頑張りましょう。」

「シュウ…!詩子、シュウのこと愛してる!シュウのお嫁さんにしてください…!」

本気の告白が、肩を通り抜けて胸が苦しくなって思わず詩子をぎゅっと抱きしめる。

「ごめん、それはできない。」

はっきりと聞こえた。

「シュウ…!なんで…!詩子のこと…!」

「俺はキミを恋愛対象として見れない。ファンを恋愛対象として見ることはできない。それに…」

きっぱりと断った秋輔が少し歯切れが悪そうに濁している…なんだろう?

「まだキミ高校生だよね…?俺は大人として、キミを恋愛対象には見ちゃいけないし、その…俺が捕まるから…。」

「なに、それ…。ムカつく。もういい。大人なんか大嫌い。詩子、子供じゃないのに。シュウなんかもう知らない。帰る。」

スッと私から離れ、そのまま公園を出て行ってしまった。

呆然としてしまう私。なんだか拍子抜けかも。もっと暴れると思ったのに。

「大丈夫?秋輔…」

「大丈夫、朱音こそ。三時間も戻って来ないから心配したんだ。」

「ごめん…。」

大切にされてる実感が湧いて胸のざわめきが落ち着いて行くのがわかる。

やっぱり私、秋輔のこと…好き、なんだ。



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