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破滅の道は回避したい2

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そして二ヶ月後──……。
「あぁ……ようやく見つけたわ!」
私は小袋に入った魔石を見つめて満足そうに微笑んだ。
(これで処刑エンドはなくなったわね……!)
第二王子と第一王子の二人の誤解を解こうとしてからおよそ二ヶ月が過ぎようとしていた。その間、ずっと街に出ては魔石を探し求めたのである。そしてようやく今日、見つけることが出来たのだった!
(この調子でどんどん魔石を見つけていけば処刑エンドを回避出来るわね!)
悪役令嬢に生まれ変わった私の目的。それはヒロインと攻略対象を無事にハッピーエンドへと導くことだった。けれどゲームでは悪役令嬢は途中で退場してしまうので、彼らがその後どうなったのかはわからないのである。
「でもきっと大丈夫よね!」
私はそう呟いて魔石の入った小袋をそっとポケットにしまったのだった──……。
* * *
(なーんて調子に乗っていた時期もありました……)
あれからさらに三ヶ月が経ったある日のこと──……。
「お前は完全に包囲されている! おとなしく投降しろ!」
私は大勢の兵士達に取り囲まれていた。そして兵士の先頭に立つ第一王子が私に剣先を向けている。
(どうしてこんなことになったのかしら……)
私が婚約破棄をされてから、すっかり一人で生きていく術を覚えた私だったけれど、最近になって街で魔石を売ることができなくなってきたのだ。それはなぜか──……。

(まさかあの魔石を売った商人達が、私の噂を広めているとは思わなかったわ……)
どうやらあの魔石は希少なものだったらしく、私の売った魔石の噂を聞きつけた商人達が、私に売るようしつこく迫ってきたのだ。もちろん断ったけれど、それでもしつこい商人達に私は根負けしてしまった。そして仕方なく一度だけ譲ることにしたのだが……。
(それがまさかこんなことになるなんて……!)
そのことを知った第二王子と第一王子が私の家にやってきて、魔石を売ってくれと言ってきたのだ。だけど二人に売ったところでまたすぐに噂が広まって同じことの繰り返しになるのは目に見えている。そこで私は彼らにこう言ってやったのだ。
『この魔石は珍しいからまたすぐに売れてしまうかもしれません』と──……。
それがいけなかったのかもしれない……。
(まさかこんなことになるなんて思わなかったわよ……!)
私は兵士達に取り囲まれながら深いため息をついたのだった──……。
* * *
(でもまぁ、よかったわ)
王子たちに見つかって、即処刑という落ちではなかったのだから。もしかしたら処刑エンドも回避できたのかもしれない。
(とりあえず今はこの状況をなんとかしないとね……)
私は兵士たちに気づかれないようにそっとポケットの中に手を入れて魔石を握る。そして第二王子と第一王子の二人に向かって笑いかけた。
「あらあら、一体なんの騒ぎかしら? 私を捕らえに来たなんて物騒なことを言うのね」
余裕そうな表情を作る私に二人の顔つきが変わった。しかしそれに気づかないふりをしてさらに続ける。
「あら? ひょっとして本当に私のことが気にくわなかったのかしら?」
私は悪役令嬢らしい笑みを浮かべながら彼らに言った。するとそれに気分を害したのか第一王子が鋭い視線を向けてきた。
「とぼけるな! 貴様が街で魔石を売りさばいていることは知っているんだ!」
「まぁ……! 私は何も知りませんわ」
(やばい! やっぱりバレてたのね……)
どうしよう、と思ったときだった。ふと視線を感じてそちらに目を向けると、そこには私の後ろに立つ二人の人物がいたのである──……。
(っ!?)
なんとそこにいたのは攻略対象である第二王子と第三王子だった。そしてなぜか二人は鋭い視線で私を見つめていたのだ。
(な、なんでここに第三王子いるのよ!?)
私が混乱していると、今度は第二王子が口を開いた。
「嘘をつくな! 貴様が街の商人達に魔石を売っていることはすでに調査済みだ!」
(うわぁ……これはもうダメかもしれない……)
私は一瞬にしてそう悟ったのである──……。
* * *
(どうしてこんなことになったのかしらね……?)
第三王子に無罪だと庇われ、私は今、王城に連行されていた。それもなぜか第二王子と第三王子と一緒にである。
(一体どうしてこんなことに……)
私の隣では第一王子と第二王子が険しい表情を浮かべている。そして彼らの視線は私ではなく隣にいる人物に向けられていた。
(本当になんでここに第三王子がいるのよ!?)
そう、なぜかこの場には攻略対象が勢揃いしていたのである──……。
「おい! まだ着かないのか?」

第2王子がイライラしながら兵士に向かって叫ぶ。どうやら第二王子は早く帰りたくて仕方がないらしい。だがそれも無理はないのかもしれない。なにしろ今、私達がいる場所は王城の中ではないのだから──……。
「はい! もう間もなく到着です!」
そう答える兵士の言葉を聞いた瞬間、私は嫌な予感に襲われたのだった──……。
(ま、まさかとは思うけどこの流れって……)
私が冷や汗を流しながらそんなことを考えていると、兵士が勢いよく部屋の扉を開いたのである。そしてそこから見えた光景を見て私は思わず目を大きく見開いたのだった。
(いやぁぁ! やっぱりそうなるのよねぇぇぇ!!)
心の中で絶叫する私をよそに、第二王子は「なんだこれは!?」と叫び声を上げていた。第三王子は目を丸くして固まってしまっている。そして第一王子だけは険しい表情のまま部屋の中に入ったのである──……。
(あぁ……もう完全にアウトだわ……)
私は絶望しながら部屋の中を見る。そこに広がる光景を見たとき、思わず頭を抱えたくなった。なぜならそこにいたのは──……。「よくぞお越しくださいました」
隣国の王子が深々と頭を下げたのである。
(やっぱりこうなったわ……!)
部屋の中に入った私は心の中で悲鳴をあげた。なぜなら部屋の中にはたくさんの貴族達がいたのである。
(どうしてこうなったのかしら……)
私が頭を抱えていると、不意に誰かに腕を掴まれたのだ。驚いてそちらに目を向けるとそこにいたのは第二王子だった。彼はなぜか私を睨んでいたのだ。
「どういうことか説明しろ!」
怒りの形相で言う彼に私は思わず後退ってしまったのである──……。
* * *
(どうしてこんなことになったのかしらね……)
私は今、王城にある会議室の一室に連れてこられていた。部屋の中には私以外に二人の男性がいる。一人は第二王子でもう一人は第三王子である。
(まさか私も巻き添えを食うなんて思ってなかったわ……)
私は深いため息をついた。すると隣に座っていた第一王子が口を開いたのである。
「それでお前は本当に何も知らないのだな?」
(だからさっきから何度も言ってるじゃない!)
私は心の中で憤慨しながら答えた。
「ですから何度も申し上げているように、私ではありません!」
「だが、お前以外に誰がいるんだ!?」
(そんなこと言われたって知らないわよ!)
私が心の中で叫んでいると、今度は第三王子が話しかけてきた。
「お嬢さん、僕には本当のことを言って欲しいんだ」
(言えるわけないでしょう!)
私は心の中で怒鳴りながらそっぽを向いた。すると今度は第二王子が口を開いたのである。
「貴様は魔石を一体どこに売りさばいていたんだ?」
(そんなの私の知ったこっちゃないわよ!)
私は心の中で悲鳴をあげた──……。

* * *
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