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破滅の道は回避したい3

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(あぁ……もう最悪だわ!)
私は王城の一室で一人項垂れていた。あれから何度も彼らの尋問を受けたけれど、結局私は無実だと言い張ることしか出来なかったのである。
(だって本当のことなんて言えるわけないじゃない!)
私が悪役令嬢に転生したと彼らに言ったところで信じてもらえるはずがない。それにそんなことを言えば頭がおかしい人物だと思われて処刑エンドになってしまうかもしれないのだ。

(それだけは絶対に避けないと……!)
そんなことを考えていると、部屋の扉が開いて誰かが入ってきたのだ──……。「失礼します」
「あら?」
私は顔を上げてその人物を見た。それはなんと第一王子の婚約者である公爵令嬢だったのである。彼女は私の目の前までやってくると、じっとこちらを見つめてきたのである。(一体なんの用かしら?)
そんなことを考えていると、彼女はにっこりと微笑んだのである。そして予想外の言葉を口にし出したのだ──……。
「ごめんなさいね」
(え……?)
突然の謝罪に私は驚いてしまった。そんな彼女は苦笑いを浮かべながら私にこう言ったのである──……。
「私、実はあなたが無実だって知ってたのよ」
(えええええっ!?)
衝撃の事実に私は驚きを隠せなかった。そんな私に向かって彼女はさらに続ける──……。
「実はね、あなたが無実だということは第三王子殿下が教えてくれたのよ」
(えぇっ!?)
まさかここで第三王子の名前が出てくるなんて思わなかった私は思わず固まってしまった。そんな私に対して彼女は微笑みを浮かべながら口を開いたのである──……。「だから安心してちょうだい、無罪を証明できるわ。あなたの味方はここにいるわ」
(ど、どういうこと……?)
突然そんなことを言われた私は困惑を隠せなかった。すると今度は第三王子が口を開いたのである──……。
「僕も君が無実だと信じていたよ」
(そ、それは嬉しいけど……!)
私は心の中で喜びながら、同時に疑問を感じていた──……。
(どうしてこの人は私を信じてくれているの……?)
それが私には分からなかったのだ──……。
* * *
(なるほどね……)
あれから公爵令嬢と第三王子の話を聞いた私は思わず納得してしまった。どうやら二人は私と同じ転生者でこの世界が乙女ゲームの世界で、私はヒロインをいじめる悪役令嬢に転生したということを理解しているらしい。
(つまり第三王子と公爵令嬢も転生者だったってわけね……)
そう、それは私が第二王子から尋問を受けていたときのことだった──……。
「おい! 本当に貴様は何もしていないんだろうな!?」
(してないわよ!)
私は心の中で怒りながら第二王子に向かって叫んだ。しかし第二王子は私の言葉を信じた様子はなかったのである──……。
そんなときだった──……。突然扉が開いて誰かが部屋の中に入ってきたのである──……。
(あれ? まさかの第三王子の登場?)
そう思ったのも束の間、部屋に入ってきたのは予想外の人物だった。その人物はなんと第一王子の婚約者である公爵令嬢だったのである──……。彼女はなぜか私を庇うかのように第二王子の前に立ったのだ。
そして第一王子が「これはどういうことだ?」と問いかけると、公爵令嬢は答えたのである──……。
「第二王子様、彼女が無実だというのは本当です」
(え……?)
私は驚いてしまった。まさか公爵令嬢が私を庇うとは思っていなかったからだ。すると今度は第三王子も口を開いたのである──……。
「僕も同意見です」
(ええっ!?)
私はさらに驚いてしまった。なぜなら彼もまた私とは敵対しているはずなのである──……。しかし彼の真意は違ったようだ。「実は僕はあなたの無実を知っていたんですよ」と私に声をかけてきたのだ。

(この展開にどうついていくか、詳細聞いてないのよね…)
私はますます困惑してしまった。どうして彼がそんなことを言い出したのか分からなかったからである──……。そんな私に向かって彼はさらに言葉を続けたのだ。
「実は僕はあなたが無実だということを知っていたんです。そしてあなたもまた僕達と同じ転生者だということも」
(なんですって!?)
彼の言葉を聞いた瞬間、私の心臓は大きく跳ね上がった──……。
私は彼に対して疑惑の視線を向けていたけれど、彼は相変わらず穏やかな笑みを浮かべていたのである──……。
* * *
(ど、どうしよう……)
私は今、王城にある一室に閉じ込められていたのだ。
無罪を証明し終わるまで待っていて欲しいということだ──……。
(どうしてこうなったのかしらね……)
私はため息をつきながら思った──……。
突然この部屋に閉じ込められてから一時間ほど経つけれど、未だに私を解放してくれる人は現れなかったのである──……。
(って! なんで誰も来ないのよ!?)
私は心の中で叫び声を上げていた。というのもこの部屋に入ってからずっと沈黙が続いているからである──……。
(もしかしてこれは放置案件なのかしらね……)
まぁ、あの2人を信じるしかないわ。
私はそんなことを考え始めていた。すると突然ドアが開いて誰かが入ってきたのである──……。
(やっと誰か来てくれたのね!)
私は喜びながら顔を上げたけれど、そこにいたのは予想外の人物だった──……。そこにいたのは第二王子だったのである──……。彼は無言でこちらに近づいてくると、そのまま私の向かい側の椅子に腰を下ろしたのだ。
(こ、これは一体どういう状況かしら……?)
私が困惑しながら彼を見ていると、彼は静かに口を開いたのである──……。
「君の無罪が証明された」
「え……?」
(それってどういう──……)
私が聞き返そうとしたその時だった──……。第二王子は急に立ち上がって私の手を摑んだのだ。そしてそのまま私を立ち上がらせたのである。
(えっ!?)
突然の出来事に驚いてしまったけれど、今はそんなことを気にしている場合ではないようだ──……。なぜなら次の瞬間、私は第二王子に謝罪されていたのだから──……。
(はぁぁ!?)
私は心の中で絶叫した。なぜこんな状況になってしまったのだろうかと困惑していると、今度は耳元に彼の声が聞こえてきたのである──……。
「すまなかった」
(へ……?)
私が戸惑っていると、彼はさらに続けたのである──……。
「本当にすまないことをしたと思っている」
(いや、謝るのは別にいいんだけどさぁ……)
私は心の中でそう呟いた。すると彼はさらに言葉を続ける──……。
「許してくれるだろうか?」
(だから許すも何ももう怒ってないんですけど……!)
私は心の中でそう叫ぶが、彼には聞こえていない。そのまま彼は続けてこう言ったのだ──……。
「私は君を傷つけてしまったようだ。どうか償いをさせてほしい」
(えっ……それって一体どういう──……)
私がそこまで考えたときだった。彼は突然私を抱き締めたのである──……。
(はぁぁ!?)
私は心の中で絶叫した──……。

* * *
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